
海外MBAの卒業生と合格者の声・前編
海外MBA留学のリアル - 円安時代のMBA投資を考える
円安やキャリアへの不安を感じる現代、海外で通用する人材になるために海外MBAを検討する人は多い。しかし、実際どのくらいのコストや準備が必要なのか、そして本当に価値があるのかは具体的な情報が少ない。今回は実際にトップスクールのMBAを取得した人と、これから留学する人にリアルな声を聞いた。
Q. MBAを目指そうと思ったきっかけは何ですか?
コロンビア大学MBAを卒業した山崎紘彰さんは、日本のスタートアップエコシステムをより良くするために自分自身が殻を破る必要性を感じたことがきっかけだったと語る。特に東京と同じニューヨークという年型都市におけるスタートアップエコシステムを知りたいと考え、コロンビア大学を志望した。
ハーバード大学MBAに進学予定の吉田りかさんは、6年ほどファイナンスの世界で働いた後、幅広いビジネスの側面を身につけたいと考えたという。「プライベートエクイティで投資先のバリューアップに携わる中で、マーケティングやプロダクトマネジメントの知識が不足していると感じた」と振り返る。また、グローバルスタンダードを学び、世界中のリーダーの下で教育を受けたいという思いと、幅広いネットワークを築きたいという3つの理由からMBAを志望した。
Q. MBA受験で最も大変だったことは何ですか?
「英語力の向上に尽きる」と山崎さんは語る。仕事と並行して受験勉強をするため、朝4時半や5時に起きて1時間半から2時間の勉強時間を確保し、仕事後も残った時間をほぼ勉強に費やした。
吉田さんはIELTSの試験を23回ほど受験したという驚きの事実を明かした。「特に最後の方は毎週とりあえず受けるという感じで、奇跡を待っていた」と振り返る。順止め(日本育ちで海外経験がない人)の場合、スピーキングスコアで6.5で止まることが多く、ハーバードの基準である7以上を取るのが非常に難しかったという。
Q. 英語のテストはどちらを選ぶべきですか?
アメリカのMBAは伝統的にTOEFLが主流だったが、現在はIELTSも広く受け入れられているという。吉田さんはTOEFLで勉強を始めたが、途中でIELTSに乗り換えた理由として「IELTSの方が点数が出やすいと感じた」と説明。特にスピーキングが対面形式であることが自分に合っていたという。
一方、山崎さんはTOEFLで105点を取得し、60点台から約1年半かけて伸ばしたと語った。
Q. 小論文や面接の対策はどうしましたか?
小論文(エッセイ)はプロフェッショナルのアドバイスを受けることが重要だと両者が強調。山崎さんはコロンビア大学のエッセイ課題が「あなたの中長期のキャリアは何か?そのためになぜコロンビアビジネススクールが必要なのか?」という基本的な内容だったと振り返る。
吉田さんはハーバードの場合、面接官に伝えたいことを900ワードで自由に書く形式だったと説明。「プロフェッショナルと壁打ちしながら3ヶ月近くかかり、最終的には仕事のことは全く書かず、過去の演劇活動での辛い経験など非常にパーソナルな内容を書いた」と語った。
面接については、コロンビアの場合は卒業生がインタビュアーを務め、40分程度の予定が1時間に及んだという。ハーバードでは30分で約30問もの質問が矢継ぎ早に投げかけられる「100本ノック」のような厳しい面接だったと吉田さんは振り返る。
Q. MBAにかかる費用はどれくらいですか?
山崎さんの場合、2年間でトータル3000万円以上かかったという。内訳として授業料は1年あたり8万5000ドル(2年間で約2000万円)、生活費は月に約3100〜3350ドル(約45〜50万円)。家賃が月2150ドル(約32万円)と最も大きな出費だった。
「ネットワーキングがMBAの大きな価値」と考える山崎さんは、交際費に月500〜700ドル(約7〜10万円)を確保するため、生活費と食費を月250〜300ドル(約4万円)に抑えていたという。
費用の工面については、「自分の貯蓄、奥さんの貯蓄、自分の親、奥さんの両親にも頭を下げて何とか工面した」と語る。吉田さんも自己資金で進学予定で、ハーバードから組めるローンも活用する予定だという。
Q. MBAの授業はどのような特徴がありますか?
山崎さんはコロンビアの「シンク・ビガー」という授業を例に挙げ、3つの構成で進むと説明した。1つ目は思考方法を教わること、2つ目はその方法を使って実際の課題に対するソリューションをグループで考えること、3つ目は「クリエイティブチャレンジ」と呼ばれる即興でアイデアを出し隣の人にピッチするセッション。「最初は苦手でしたが、終わってみればいいプラクティスだったと思います」と振り返る。
一方、ハーバードのMBAはケーススタディが特徴的で、全ての授業がこの方式で行われると吉田さんは説明。「1年目は自分で授業を選べず、ファイナンス、マーケティングなど様々な分野の20ページほどのケースを読み、クラスでディスカッションする形式で、成績の約50%が発言点」だという。
Q. MBAの価値は本当にありますか?
両者とも、MBAの価値は大きいと感じている。山崎さんは「自分が知らない苦手な分野を埋められること」と「現場で働くプロフェッショナルのリアルな体験談を聞けること」の2点を挙げた。また、様々なバックグラウンドを持つ人々との交流を通じて「自分は何をやりたいのか」を考えるきっかけにもなったという。
吉田さんは、ある大企業のCEOとの会話で「CEOになってから、ハーバードのケースメソッドそのものが経営だと知った」という言葉を聞き、MBA教育の長期的な価値を実感したと語った。
海外MBAは確かに高額な投資だが、明確な目的意識を持ち、適切な準備を経れば、その価値は十分にあると言えそうだ。
