
炭水化物抜きのリスク
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2024年8月17日
今回のPIVOT HEALTHは、健康医療ライターの西沢邦浩氏がゲスト。「炭水化物抜きのリスクと白米の食べ方」をテーマに話を聞いた。全粒穀物を食事に取り入れ方、白米の健康的な食べ方とは。 <ゲスト> 西沢邦浩|健康医療ライター 早稲田大学卒。小学館を経て、91年日経BP入社。2014年日経BP総研...
炭水化物を抜くリスクとお米との上手な付き合い方
食事から炭水化物を抜くことは、健康にどのような影響を与えるのだろうか。日本人にとって主食であるお米との理想的な関係性とは何か。健康医療ライター・エディターの西沢邦浩氏に、最新の研究知見を踏まえた炭水化物との向き合い方について聞いた。
Q. 炭水化物抜きダイエットについてどう考えるべき?
炭水化物には糖質と食物繊維の2種類があります。特に糖類のような吸収されやすい糖については、血糖値が上がりやすいため、世界的に摂取量を減らす傾向にあります。
白米のような精製された炭水化物をたくさん食べると、血糖値が急上昇し、2型糖尿病や肥満のリスク要因になることは確かです。そのため、食べ方を工夫することが重要です。
炭水化物を制限することで血糖値の上昇を抑え、インスリンの分泌量を減らせば、体重管理や血糖値の調整に効果があります。しかし、完全に炭水化物を抜くことには問題があります。
世界の食事データを分析した研究によると、総エネルギー摂取量の50〜55%程度を炭水化物から摂取している人々の死亡リスクが最も低いことがわかっています。日本人のデータでは、男性は炭水化物比率が40%を下回ると、女性は65%を超えると死亡率が上昇します。つまり、極端な炭水化物の過不足は健康リスクを高める可能性があるのです。
Q. 日本人と炭水化物の関係はどう変化してきた?
約100年前の1910年代、日本人は平均して1日に約70gの雑穀を摂取していました。当時は完全に精製された白米を食べる人は少なく、多くの人が玄米や雑穀を食べていたため、全粒穀物の摂取量は多かったのです。
しかし、1960年代になると状況が一変します。1955年には200万トン以上生産されていた食用大麦が、1970年頃には4〜5万トンまで激減しました。この大麦食の喪失が、日本人の食物繊維摂取量が大幅に減少した主な原因です。
戦後、パンなどの小麦食が普及し、白米に対する補助金が設けられたことで、農家の作付けも変化しました。また、白米は豊かさの象徴としての意味合いもあり、湯気の立つ白いご飯が食卓に並ぶことは多くの人の憧れでした。こうした背景から、日本人は雑穀食をほぼ完全に失ってしまったのです。
Q. 全粒穀物を食べることの重要性とは?
世界保健機関(WHO)が公開している「グローバルバーデンオブディジーズ」というビッグデータによると、健康寿命を短縮させる最大の食事要因は全粒穀物摂取量の不足だということがわかっています。
特に2型糖尿病のリスク低減に関しては、全粒穀物が最もエビデンスレベルの高い食品であり、穀物由来の食物繊維が最も確実にリスクを下げることが示されています。
同じ食物繊維でも、穀物に含まれる繊維は他の食品から摂取する繊維と異なる働きをする可能性があります。例えば、野菜と白米を別々に食べる場合と、全粒穀物として一体化した状態で食べる場合では、後者の方が効率的に血糖値の上昇を抑え、腸内細菌の餌となるデンプンを大腸に届けることができます。
興味深いことに、穀物由来の食物繊維は、野菜や果物の繊維と比べて2型糖尿病や大腸がんのリスク低減効果が高いことも研究で示されています。
Q. 腸内環境と炭水化物の関係は?
日本人と他国の人々の腸内細菌叢を比較した研究によると、日本人の腸内には炭水化物を分解する菌の種類が最も多く、他の12カ国と比較して約4.5倍の差があることがわかっています。
これは、冷えたご飯などに含まれる難消化性でんぷんや、食物繊維の多い食品と一緒に食べることで腸に届くデンプンが、長い歴史の中で日本人の腸内細菌の栄養源となってきたからと考えられます。
腸内で短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸など)がバランスよく作られると、腸が健康になり、全身の健康にも良い影響を与えます。これらの短鎖脂肪酸を作る腸内細菌の主な餌は食物繊維です。
炭水化物、特に食物繊維の摂取が少ないと、腸内環境が悪化する可能性があります。また、穀物に含まれる食物繊維は、野菜に含まれるセルロースなどの不溶性繊維と比べて、腸内細菌の餌になりやすいという特徴があります。
Q. 炭水化物との理想的な付き合い方は?
炭水化物を摂取する際の工夫として、「ベジタブルファースト」という食べ方があります。これは最初に野菜を食べることで、食物繊維を先に摂取し、血糖値の急上昇を抑える方法です。
また、全粒穀物を少しでも取り入れることも重要です。玄米、もち麦、トウモロコシなどの全粒穀物は、食物繊維が豊富で、腸内環境を整える効果があります。特にもち麦は、白米と混ぜて炊いても食感が大きく変わらず、冷めても硬くならないという特徴があり、取り入れやすい食材です。
さらに、おかゆをもっと積極的に食べることも提案されています。おかゆは消化がよく、日中の仕事にも影響が少ないうえ、全粒穀物をふやかして食べることで、より多くの食物繊維を摂取できます。また、さまざまな具材を入れることができ、栄養バランスも整えやすいという利点があります。
冷たいご飯、特におむすびを食べることも良い選択です。冷えたご飯には難消化性でんぷんが増加し、腸内環境を整える効果があります。おむすびは日本の伝統的な食べ方であり、持ち運びも便利で、健康的な食事の一つと言えるでしょう。