
タイミーがリクルート・メルカリに勝てる理由【タイミー代表 小川嶺】
「時代の流れに合ったサービス」タイミー代表が語るスポットワークの可能性
日本の労働人口の15%、770万人が利用する大人気スポットワークサービス「タイミー」。学生の3人に1人が利用するほどの普及率を誇るこのサービスはなぜここまで拡大したのか。7月26日に株式上場を果たしたタイミー代表の小川嶺氏にその秘密を聞いた。
Q. タイミーがここまで大ヒットした理由は何ですか?
時代の流れによって企業ファーストからユーザーファーストに変わってきたところにアジャストしたのがタイミングだと思います。現在770万人の方に活躍していただいていて、日本の労働人口が6000万人ちょっとなので、約15%が使うサービスになっています。学生の3人に1人が使っている状況です。
元々は学生の友達に使ってもらおうというところから始まったのですが、主婦の方や、コロナで残業できなくなった時間に働きたいという社会人の利用が増え、最近ではシニアの利用も増えています。現在は40代以上のユーザーが半分を占めています。
Q. タイミーのユーザー層はどのように広がっていったのですか?
当初想定していなかった層がアーリーアダプターとして使い始めてくれました。例えば主婦の方や会社員の方にインタビューをとる中で、「残業できなくなった時間でタイミーを使っている」といったインサイトが得られました。それをもとに広告やPRを展開したことで広がっていきました。
シニア層については、引退して暇な時間に、お金もそうですが社会に貢献したい、誰かと話したいという思いから、週3〜4回使っていただく方もいます。770万人のユーザーの中で、働いている回数が5番目に多い方は60歳以上で、年間300回ほど働いています。評価される喜びを感じるという声もあります。
Q. 評価システムについてはどのような工夫をしていますか?
人間は頑張っていれば評価されたいという思いがある一方で、評価されることへの恐怖もあります。タイミーでは、業務の切り分けやマニュアル作りをサポートしています。現在1000人の従業員のうち600人が営業部隊となり、全国14カ所でサポートしています。
これにより、初めて行った人でも必ず活躍できる環境づくりができています。求人に記載されていることを頑張れば、基本的に企業の期待を超えることができるので、良い評価をもらいやすくなります。
Q. リクルートとの違いはどこにありますか?
求人媒体とスポットワークは全然違います。求人媒体は人手が余っていた時代に生まれたもので、企業が応募者の中から良い人を選ぶという企業目線の考え方です。一方、スポットワークは先着順で働けるため、働き手が働きたい時に選べるもので、企業側には選ぶ権利がありません。
現在、求人バイト検索のボリュームを超えており、時代の変化に合わせたサービスという点が成長の大きな理由だと思います。
Q. すぐに働けてすぐお金がもらえるというシステムはどのように思いついたのですか?
私自身が日雇いの仕事をしていた経験があります。その中で、その日にお金がもらえる現場もあれば、もらえない現場もある。また来てねと言われる現場もあれば、無視される現場もある。そういった経験から、すぐにお金がもらえることと、ちゃんと感謝されることの両方が満たされる仕組みが必要だと感じました。
また、1日だけの仕事に面接や履歴書は不要で、実際の働きぶりを見てもらえばいいという考えもありました。こうした自分の体験をすべて織り込んだ結果、すぐ働けてすぐお金がもらえるプラットフォームが生まれました。
Q. 競合が増えている中でどう戦っていくのですか?
すでに約6年間戦ってきており、タイミーが圧倒的なシェアを取って上場できました。このビジネスモデルには3つの消費があると思っています。
まず、タイミーはBtoCのサービスなので、エリアマーケティングが非常に重要です。例えば渋谷で案件を出した時にしっかり人が集まるか、ワーカーが渋谷でアプリを開いた時に案件があるかという、ネットワーク効果が働きます。これを47都道府県全部で構築してきました。
その結果、100人呼んだら何人集まるかという稼働率が88%となり、他社と比較しても圧倒的に高い状況です。スポットワークを使うクライアントは人手に困っているので、人が来るか来ないかが一番重要です。人が集まり、いい人が来て、サポートが素晴らしいという3段方式を極めてきたことが差別化につながっています。
Q. タイミーの仕組みに独特な点はありますか?
タイミーでは1企業で月8万8000円以上働けないようになっています。年間30万円以上稼ぐと社会保険の加入要件に入ってしまうため、企業側は従業員と同じような扱いで申請しなければなりません。
タイミーだけを使っていればそこでブロックがかかりますが、複数のサービスを使うとその管理が難しくなります。人事側にとって管理コストが膨大に膨らんでしまうため、1店舗1サービスという形が基本になっています。
Q. 日本のHR市場の課題はどこにありますか?
この30年で働き方は大きく変わりました。フレックス勤務やリモートワークが普及し、働き方の多様性は非常に膨らんでいます。ただし、多様化することによって選択肢がありふれてしまうことが欠点だと思います。どれを選んでいいかわからなくなります。
昔は終身雇用型で、その企業でどのように昇進していくかを考えていましたが、今は転職が当たり前になり、どこに転職すればいいのか決められない状況があります。そうなると、キャリアを築いていくよりも、働き方に寄り添いすぎてしまう傾向が出てきます。
20代・30代が未来を作っていくためには、働くとはどういうことか、自分の好きなことをどこまで高めるのかという発射加減を決める必要があります。働きやすさだけを考えると日本経済の成長率が上がっていかないので、今は非常に重要な分岐点にあると思います。
Q. タイミーはどのような未来を目指していますか?
タイミーのミッションは「働くを通じて人生の可能性を広げるインフラを作る」ことです。例えば、正社員として1社でしか働いたことがなく転職に不安がある人が、土日の空いた時間にタイミーで働いてみることで、自分が別の仕事に向いているかもしれないと気づくきっかけになることがあります。
副業がどんどん解禁される中で、1日だけ働いてみることによって「そういえば子供の時にパティシエになりたかった」と思い出し、挑戦してみようという気持ちになるのは素敵なことです。狭い視野ではなく、なるべく広い視野を持てるようなサービスがタイミーだと思います。
人生において転職できる回数は限られていますが、タイミーを使えば気軽に様々な仕事を体験できます。生まれた時から死ぬまで使えるアカウントとして、より濃いデータを集めやすく、将来的にはリクルートを超えるような会社になる可能性もあります。
スポットワークが広がって「世の中腐ったよね」と言われたくないので、リーディングカンパニーとしてルール作りや思想作りをしていく責任があります。作ったからには最後までやっていきたいと思っています。
