
売上10兆円を狙う Nidec世界戦略
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2024年4月30日
売上高2兆円、社員10万人を超えるグローバル企業 Nidec。新社長へのインタビュー、国内外の生産・開発現場のリポートなどを通して、世界最大のモーターメーカーに迫る。【SPONSORED】 <ゲスト> 岸田光哉 Nidec 社長執行役員 / 最高経営責任者 竹本心路 Nidec上席主幹技師 入...
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ニデックの海外戦略:AI時代をリードする「三種の神器」とM&Aを駆使した10兆円への道
世界最大のモーターメーカーとして知られるニデックは、グローバル市場で確固たる地位を築いている。
特に成長著しい中国市場を主要な戦略拠点と位置づけ、積極的に事業を展開。創業者の永守重信氏が築き上げたM&A戦略と企業哲学を継承し、2030年に売上高10兆円という壮大な目標達成を目指す。
本稿では、岸田光哉社長が語る海外戦略の全貌、AI時代におけるモーターの役割、そして同社の未来像をQ&A形式で深掘りする。
Q. ニデックの海外戦略において、中国市場はどのような位置づけですか?
ニデックの海外戦略において、中国市場は極めて重要な拠点であり、「世界最大の市場で勝てば、どこでも勝てる」という戦略的意義を持つ。全従業員11万人のうち3万人以上が中国に在籍し、現地工場は50を超え、1万5,000人もの社員が働く一大生産拠点「ニデック村」を形成する。中国市場は、技術の発信源であり、重要な消費市場でもあることから、競合ではなくパートナーと捉えられている。
特に、「地産地消」を徹底しており、中国で開発・生産した製品を中国国内で販売することで、市場が求める圧倒的なスピードとコスト競争力を磨き上げる。EV(電気自動車)市場で培われるこのコスト削減ノウハウは、素材レベルまで踏み込んだ検討によって実現し、ニデック全体のナレッジとして世界中に応用されている。この地産地消戦略は、グローバルな競争力を強化するための「訓練場」とも位置づけられている。
上海の工場では、掃除機用モーターから、ゲーム機やVRゴーグル向け冷却ファン、そして特定はされないが米国の超一流テック企業(GAFAM)向けの超精密小型モーター(FDB)など、多種多様なモーターを生産している。FDBは埃を極度に嫌うため、クリーンルームという特殊な環境下で生産され、ニデックの高い技術力が反映されている。
Q. 創業者の永守氏が推進してきたM&Aの秘訣と、その経営哲学はどのように受け継がれていますか?
2030年に売上高10兆円という目標達成のため、ニデックはM&Aを成長戦略の主軸に据えている。創業者の永守重信氏は、これまでに70社以上を買収し、その全てを成功させてきた異例の実績を持つ。その秘訣は、永守氏の頭の中にある長期的な「事業構想力」にあると言われている。これは、どの領域(島)を買収すれば、全体として事業が面展開し、成長するのかという戦略的な「事業の地図」を明確に描いていることを意味する。
永守氏のM&A戦略は、「再建型」が多いことも特徴である。つまり、自身の描く事業構想に合致する企業が一時的な業績不振に陥るまで辛抱強く待ち、最適なタイミングで買収提案を行う。これは短期的な視点ではなく、長期的な視点に基づく戦略的忍耐力であり、時に10年以上待つことも辞さない。
現在の課題は、この永守氏個人の卓越した事業構想力をいかに組織として継承していくかだ。岸田新社長は、永守氏を「稀代の教育者」と捉え、その思考や哲学を学ぶため、意識的に対話の頻度を増やしている。怖がらずに、時に永守氏から「視線が低い」と指摘されながらも、直接コミュニケーションを取り、その「脳内地図」を解読し、継承することを使命と考えている。
Q. 10兆円達成の夢を追う岸田新社長の信念とは何ですか?
岸田新社長は「仕事での夢は実現するためだけに存在する。実現しない夢は夢ではない」という強い信念を表明している。これは、2030年売上高10兆円という目標を単なる理想ではなく、必ず達成すべき現実として捉える覚悟を示す。彼自身も「自分の持っている地図はまだちっぽけ」と自覚しており、永守氏との対話を通じてその地図を拡張し、視座を高めていくことを目指している。
「夢が小さければ構想も小さくなり、得られる地図も小さくなる」との考えから、ニデック全体の夢を大きく描くことが重要だと訴える。ソニーで赤字部門を再建し、ニデックでも手腕を発揮してきた事業再生の達人としての経験も踏まえ、今後は永守氏の持つ「未来の構想力」を身につけることが自身の最大のミッションと認識している。そして、その大きな夢にチーム全体で向かっていくことを最重要視している。
Q. ニデックの企業哲学は、国境を越えてどのように社員に浸透していますか?
「1番以外はビリ」「情熱・熱意・執念」といったニデックの熱い企業哲学は、特に成長意欲の強い中国市場や中国のスタートアップと高い相性を示す。この創業からの「ハードシングス」を乗り越えてきたベンチャースピリットは、国境を越え、現地の従業員を奮い立たせる原動力となっている。中国の現地法人では、清掃や整理整頓を徹底する「3Q6S」というニデック独自の憲法も強く受け入れられており、この基本姿勢が成長の基盤を築く。
中国で29歳にして30人の現地部下を率いる日本人マネージャーの例からも、ニデックの人材登用とマネジメントスタイルが見て取れる。現地スタッフが「できない」と言う課題に対し、自らが率先して「やって見せる」ことで信頼を勝ち得ている。これは、「クイー(できる)」「メイウェンティー(問題ない)」といった前向きな言葉をチームに浸透させることに繋がり、高い目標へ果敢に挑戦する企業文化を醸成する。
ニデックは「挑戦を止めるものが何もない」企業であり、自分の意見を明確に発信し、周囲とコミュニケーションを取り続ければ、どんな社員でも夢を実現できる環境を提供している。これは「45歳で役員になりたい」と語る野心的な若手社員を惹きつける大きな魅力となっている。全員がベクトルを合わせ、より高い「違う景色」を見るために進むことが、ニデックのチームで夢を実現する力である。
Q. AI時代におけるモーターの可能性と、ニデックのグローバル戦略を教えてください?
AI(知性)、半導体(脳)、モーター(体)は、これからの世界を動かす「三種の神器」だとニデックは捉えている。知性がどれだけ進化し、脳が高性能になっても、それを物理世界で動かす「体」、すなわちモーターがなければ機能しない。AIの進化に伴い、データセンターに搭載される半導体は、処理能力の向上とともに膨大な熱を発する。この熱を効率的に冷却するためのシステム(水冷・空冷ファンなど)に、ニデックのモーター技術が不可欠となり、その需要は今後爆発的に拡大すると見込んでいる。
地政学的なリスク、特に中国国内における「国産化」の動きに対し、ニデックは多様な市場に対応できる体制を構築する。中国内では現地生産・調達を進めつつ、グローバル市場では各国・地域の強みを尊重しながら、品質・コスト・納期(QCD)を徹底する独自の「統一化戦略」を展開する。この戦略により、良い製品を世界中に展開することで顧客に価値を認められ、同時に地政学リスクを回避する柔軟性を確保している。
M&Aによるシナジー最大化のため、「One Nidec」構想を推進している。上海オフィスでは、M&Aでグループ入りした15社の社員が同じフロアで働き、部門や会社の壁を越えた連携を通じて、顧客に対しニデックグループ全体の多様な製品を組み合わせたソリューションを提供している。これは、特に中国市場のスピード感と価格要求に応えるための戦略であり、グローバルな事業運営における多角的な視点を統合する。
モーターは心臓のように血液を送り出し、弁のように制御し、あるいはあらゆるものを動かす「人間が生きる証」である。AIが知恵熱を起こさないよう、モーター技術による冷却システムは今後ますます重要となる。創業からの「夢をベースにした成長と挑戦」という哲学を掲げ、インドや東南アジアなど次なる成長市場も視野に入れながら、次世代のニデックを世界中の仲間とともに建設していく姿勢だ。
