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経営者時代のパーソナルトレーナー
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2023年7月24日

Video Podcast番組「PIVOT SESSION」。 アイディール・リーダーズ代表取締役CEO 永井恒男氏、と「経営者にこそ必要な人材投資 エグゼクティブ・コーチング」について話しました。 【Sponsored】 <ゲスト> 永井 恒男/アイディール・リーダーズ 代表取締役CEO 19...
エグゼクティブコーチングの真価:激動の時代に経営者の羅針盤となる「親友型コーチ」とは
激動の現代において、企業の舵取りを担う経営者の役割はかつてなく重要になっている。その一方で、正解のない意思決定の連続は経営者を孤独な立場に追いやるだろう。
本稿では、アイディールリーダーズ代表取締役CEOである長井亮氏へのインタビューを通じ、世界で「経営者の常識」と化しているエグゼクティブコーチングの真の価値と、日本におけるその必要性について掘り下げる。
欧米の経営者が当たり前のように活用するコーチングが、日本のリーダーシップにどのような変革をもたらすのか。経営者が直面する本質的な課題を紐解きながら、その効果と可能性を探る記事である。
Q. エグゼクティブコーチングとは具体的にどのようなサービスなのか?
エグゼクティブコーチングは、経営者の「伴走者」としてそのゴール達成を支援する。業績不振の経営者を立て直す「家庭教師」とは異なり、優秀な経営者が更なる高みを目指すための「同志」というべき存在である。
具体的なプロセスは、まず経営者自身がテーマを設定するところから始まる。テーマは「業績2倍達成」のような定量目標から、「新たなイノベーションの創出」「組織全体のビジョン共有」といった定性的な目標まで様々だ。コーチはそのテーマに対し、質問を投げかけ、時にはブレインストーミングやアドバイスも提供し、目標到達まで多角的にサポートする。セッションは定期的に実施され、対話と実践、そして軌道修正を繰り返しながら、設定したゴールへと導いていく。
特徴的なのは、そのテーマが夢や組織の本質的な課題であることが多い点だ。多くの場合、短期的利益ではなく「中計の先の10年後のビジョン」や「自身のリーダーシップスタイル変革」「後継者育成」など、社内の人間には相談しにくい深い悩みに寄り添う。これにより、経営者の内面と深く向き合い、より本質的な成長を促すことができる。
Q. コーチングはどのような経営スキルを磨くのに貢献するのか?
経営スキルは「科学系スキル」と「アート系スキル」の二つに大別される。科学系スキルとは、MBAで学ぶような経営学の知識やロジカルシンキングなどだ。これらは書籍や座学で習得できる一方、アート系スキルは「リーダーシップ」や「人間力」、すなわち強烈な意志、勇気、洞察力、やり抜く力、そしてソフトな統率力などを指し、座学だけでは身につかない。
エグゼクティブコーチングは特に、このアート系スキルを磨く上で非常に効果的だ。例えば、コーチとの対話を通じて自身の夢やビジョン、経営の原点を再確認することで、「やり抜く力」や「熱意」を維持できる。また、最悪の状況を想定させることでリスクの範囲を明確にし、「勇気」を持って意思決定できる。さらに、様々な視点から物事を見ることをサポートすることで、知識と知識を結びつけ新たな「洞察力」が生まれる。
これらは単なる精神論ではなく、コーチとの対話の中で具体的な行動変容へと繋がる。経営者が不振に陥った時も、弱みではなく「好きで得意なこと」に焦点を当てることで、本来の内発的な意志を再燃させることが可能となる。コーチはまるで「鏡」のように、経営者自身の固定観念や死角を映し出し、他者の視点を提供することで、気づきと成長を促す役割を果たす。この客観的な視点の導入が、周囲からの忖度によって本音の情報が得にくい経営者にとって、極めて重要になる。
Q. 海外ではエグゼクティブコーチングはどれほど普及しているのか?
エグゼクティブコーチングは海外では極めて一般的なものだ。スタンフォード大学の調査では、CEOの34%が、シニアエグゼクティブの50%以上がコーチを利用していると示している。伝説的な経営者として知られるGEのジャック・ウェルチでさえ、マーシャル・ゴールドスミスというコーチをつけていた。これはトップ経営者ほど自己成長と成果最大化のために外部の支援を積極的に求める文化の証左と言えよう。
このようなコーチ活用はアメリカやヨーロッパのみならず、シンガポール、韓国、中国といったアジアの主要国にも広く浸透している。先進国の中でエグゼクティブコーチングが定着していないのは日本くらいだと指摘されている。これはサッカーの国際試合において「スパイクを履いているか否か」ほどの大きな差となり、国際競争において日本企業が不利な状況に置かれていると危惧されている。
Q. 日本でエグゼクティブコーチングが普及しない主な理由は何と考えるか?
日本では、「コーチをつけること」に対する特有の文化的スティグマが存在する。「人に相談することは弱いこと」「男らしくない」というような誤解があり、たとえ利用していてもそれを公言しない経営者が多い。しかし海外では、パーソナルトレーナーをつけることと同様に、コーチを雇うこと自体が自己投資を怠らないプロ意識の高さ、ひいては成功していることの証と見なされる。この認識の差が、普及の大きな障壁となっているだろう。
また、日本の企業文化において「人材投資」が世界的に見ても低い水準にあることも一因だ。特に役職が上がるほど研修機会が減り「自己責任」という考えが根付いている。しかし、責任と権限の大きい経営者こそ、その能力開発への投資は会社全体への波及効果が最大となる。本来コーチング費用は会社の費用として計上されるべき「研修費用」の一環であると長井氏は指摘する。ハーバードビジネススクールのOB会で「誰のコーチを使っているか」が話題になるように、経営者が自己研鑽を積むことは株主や従業員にとっても重要な評価指標となるはずだ。
Q. 優れたエグゼクティブコーチを選ぶ際のポイントは何か?
優れたコーチを選ぶ上で最も重要なのは、そのコーチ自身が「経営経験」を有していることである。単に質問するだけでなく、経営者の多忙さを理解し、具体的な情報提供やアドバイスができるか否かは、経営者との信頼関係構築に直結する。特に、クライアントが起業家であれば起業経験、大企業の経営者であれば大企業での経営経験があることが望ましい。
また、コーチには「先生型」と「親友型」が存在するが、長井氏は「親友型」が理想だと説く。単なるビジネス上の付き合いに留まらず、生涯にわたるパートナーとして、ビジネス以外のプライベートな相談(家族関係、教育など)にも応じることで、経営者への全人格的なサポートが可能となるからだ。経営者にとってコーチは、普段誰にも打ち明けられない悩みを安心して相談できる唯一無二の存在となるだろう。
Q. 現代の経営者にとってエグゼクティブコーチはどのような存在となるのか?
現代の経営は、正解が用意されていない「不利益の分担」といった難しい意思決定を迫られる場面が増えている。利益成長期のように明確な方程式がないため、経営者自身の「価値観」や「経営哲学」が羅針盤となる。
このような時代において、コーチは経営者が自身のパーパス(存在意義)や経営哲学を明確化するための「全能の坊主」のような役割を果たす。つまり、ソクラテス的な対話を通じて、自分は何を大事にして経営をしているのか、この状況でいかに自己の哲学を表現するのか、といった深層的な問いに向き合うプロセスをサポートする。座学では学べないこうした哲学的な思考の深化は、不確実性の高い時代に求められるリーダーシップの基盤となるだろう。
長井氏は「経営者は決して孤独である必要はない」と強調する。客観的な第三者であるコーチとの対話を通じて、経営者は視点を広げ、自分自身の思考を深く掘り下げ、本質的な意思決定を行うことができる。それはまさに「チーム経営」の最上位に位置する強力なサポート体制と言えよう。現代の複雑な課題に立ち向かう経営者にとって、エグゼクティブコーチは不可欠な「知的なパートナー」である。