
肝臓の三毒/糖・酒の次は薬を減らす/サプリは食品/効果ないサプリの過剰摂取で肝障害/良いサプリ・悪いサプリの見分け方【健康新常識】
肝臓外科医が警鐘「サプリの嘘」:盲信する健康習慣があなたの肝臓を蝕む
大反響を呼んだ「肝臓の回」の待望のパート2が公開された。再生数700万回を記録した前回は、肝臓への理解を深めることで多くの人々の健康意識を大きく変革させたという。講演依頼が国会議員からも舞い込むなど、社会に大きな影響を与えた。今回、肝臓外科医の緒方聡氏は、多くの人々が健康のために当たり前のように摂取している「サプリメント」に潜む"新常識"について解説する。健康を追求するその行動が、知らず知らずのうちに肝臓を疲弊させる
"ブラック企業"化している可能性を示唆し、改めて"引き算"の健
康法が重要であることを訴える。


Q. サプリメントと医薬品は何が違うのか?
まず理解すべきは、サプリメントと医薬品は根本的に異なるものである点だ。両者は見た目こそ似たカプセルや錠剤であっても、法律上の分類は全く異なる。医薬品は「病気の治療」を目的とし、効果効能が科学的に証明され、製造工程から品質まで国により厳格に管理される。その管理の厳格さは、さながら
プロ野球選手と草野球選手ほどの違い
があるという。一方、サプリメントを含む健康食品は「健康な人の健康維持をサポート」する「食品」に分類される。
医師の外来患者の多くは、痩せるためや疲労回復のため、あるいは体の不調を和らげる目的で複数のサプリメントを摂取していることが多い。しかし、その多くは本来の目的とは異なる。サプリメントはあくまで食品であり、病気の治療効果を期待するものではない。ここに多くの人が抱く誤解がある。

Q. 漠然と摂っているそのサプリ、本当に体に良いのか?
健康食品として人気の鉄分サプリメントが良い例だ。鉄は貧血治療に使われる医薬品としても存在するが、サプリメントではその
有効成分の含有量が約10倍も低い。
治療レベルの効果は期待できない。
さらに危険なのは、
鉄分が不足していない人が安易に鉄分を摂取し続けることだ。鉄は肝臓に蓄積されやすく、過剰摂取は肝臓に負担をかけ、炎症を引き起こす"毒"となる。
「なんとなく体に良さそう」という漠然としたイメージだけで摂る習慣が、知らず知らずのうちに肝臓を傷つけている可能性があるという。
自身に鉄分が不足しているかを知るには、血液検査でフェリチン値を測定することが可能だ。肝臓に異常がない場合は鉄が足りないことはほとんどないという。同様にマルチビタミンなども、水溶性ビタミン(B、C)は過剰分が体外に排出されやすい一方、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)は体内に蓄積されやすく、副作用リスクを伴うため注意が必要だ。私たちはとかく
「良いものは多く摂れば摂るほど健康になる」という幻想
を抱きがちだが、肝臓外科医はそうではないと警告する。肝臓にこれ以上負担をかけないための「引き算」が重要なのだ。
Q. 機能性表示食品やトクホの広告を鵜呑みにしてはいけないのか?
健康食品には「特定保健用食品(トクホ)」や「栄養機能食品」「機能性表示食品」などの分類がある。「トクホ」は国が有効性や安全性を審査・許可するが、あくまで食品の範囲内であり、治療効果を保証するものではない。特に「機能性表示食品」は、
事業者の責任で科学的根拠を届け出るだけで、国による審査はない。そのため、表示されている効果を鵜呑みにしてはいけない。
医薬品医療機器等法(薬機法)では、健康食品が「治る」「効く」「血糖値が下がる」「痩せる」といった医薬品的な効能効果を広告で表現することを厳しく禁止している。多くの広告で使われる「〜をサポート」「〜対策」「〜を整える」といった表現は、法の規制をかいくぐるための言葉遊びに過ぎない。
ビフォーアフター写真や「検査値が改善した」といった表現も薬機法違反であり、消費者庁は継続的に指導を行っているものの、
"イタチごっこ"の状態だ。
消費者はこれらを過信せず、サプリメントに対する正しいリテラシーを持つことが求められる。
Q. コラーゲン、グルコサミン、ウコンに科学的効果はあるのか?
摂取すべきサプリメントを見分けるためには「生理学的妥当性(メカニズム)」と「医学的有効性(人での効果)」の2軸で考えることが推奨されている。両方が科学的に確立されているのは主に医薬品であり、多くのサプリメントはどちらか一方、あるいは両方が不確かなものが多い。
「コラーゲン」や「酵素ドリンク」はその
効果効能が最も疑問視される「第3群」に属する。
摂取したコラーゲンは肌のコラーゲンとして再構成されるのではなく、体内でアミノ酸に分解され、全身に分配される。肌のハリを期待する効果には科学的根拠(エビデンス)が極めて弱い。信頼できるエビデンスとは、製品を作る企業ではない第三者機関による、偽薬(プラセボ)と比較した大規模臨床研究(RCT)などを指す。多くのサプリの"効果"は「個人の感想」レベルか、
「効くような気がする」というプラセボ効果
の範疇に過ぎないことが多い。
膝関節の痛み改善で人気を集める「グルコサミン」「コンドロイチン」も、実は科学的有効性が確認されていない代表格である。世界最高峰の医学誌に掲載された大規模研究や複数の研究を統合したメタ解析において、グルコサミンの疼痛改善効果は
偽薬(プラセボ)との有意な差が認められなかった。

この結果を受け、欧州では効能表示が禁止され、米国の整形外科学会も推奨しないと明言している。
「肝臓エキス」も同様で、軟骨成分が軟骨に直接作用しないのと同様に、摂取した肝臓の成分がそのまま肝臓に働きかけることはない。消化分解されれば、他の食品と同様にアミノ酸に過ぎず、期待される効果は得られない。
飲み会の前によく飲まれる「ウコン」は、特に危険性が指摘されるサプリメントだ。実は健康食品の中で
最も肝機能障害の報告が多い製品
であることが研究により示されている。本来、カレーなどに使われる香辛料であるクルクミンには抗酸化作用などがあるものの、錠剤などで濃縮して摂取すると、肝臓にとって有害な負荷となりうる。
肝臓専門医は、肝炎患者に対して
真っ先にウコンの摂取中止を指示する
という。肝臓に不調を抱えている人が効果の不確かな健康食品を摂り続けることは、
肝臓への負担を増大させる悪循環
に陥らせるだけだ。まずは「足し算」の思考から脱却し、不要なものを「引き算」することが、肝臓の健康を守る第一歩である。
人気の「コエンザイムQ10」は、細胞のエネルギー産生に関わるメカニズムは解明されているものの、「疲労回復」への明確な医学的有効性、すなわち人におけるエビデンスは弱いとされている(第2群に属する)。疲労という曖昧な指標ゆえ、科学的な効果測定が難しいことが背景にある。
しかし、本人が摂取によって効果を感じるのであれば、
「気分的な効用」
を期待して継続することは、自己責任において認められる。

Q. 安易なダイエットサプリが危険なのはなぜか?正しい肥満治療とは?
「これを飲んだら痩せる」「太りにくくなる」と謳われるダイエットサプリメントは、
未承認の医薬品成分
が含まれていたり、
急性肝障害を引き起こすリスクが高い
など、極めて危険である。効果が劇的なものほど、そのリスクも高いと認識すべきだ。医薬品とは異なり、サプリメントによる健康被害は公的な補償制度がなく、全て自己責任となる点を理解しておくべきだろう。
本当に肥満を医学的に治療したい場合、食欲を抑制する「GLP-1受容体作動薬」が保険適用薬として登場した。これは医学的根拠に基づく確かな効果が期待できる治療薬だが、
BMI28以上かつ脂質異常症・高血圧・糖尿病のいずれかの疾患があること
など、非常に厳しい適用条件が設けられている。美容目的での安易な使用は、副作用リスクに加え、本来薬を必要とする糖尿病患者への供給不足を引き起こす問題もある。
この薬には便秘や吐き気といった副作用も存在し、薬の服用のみで栄養指導を怠ると、不健康な痩せ方やリバウンドを招く可能性がある。正しい肥満治療には、必ず医師による厳格な管理と専門的な栄養指導が不可欠である。
