日本再興ラストチャンス
前編:大倒産・大再編で日本型革命を起こせ
(1)
1,550回視聴
2023年2月8日

【collaborated with 経済同友会】 日本再興ラストチャンス。日本が失われた30年を経て、これからどのように経済を再興するべきなのか。経営者と有識者と対談を通じて、日本再興に向けた具体的なアクションプランを発信していく。 【Sponsored】 <ゲスト> 冨山 和彦(経営共創基盤 ...
日本はスタートアップ大国になれるのか?停滞を打ち破る「革命」の必要性
長期にわたる経済停滞から抜け出すため、日本社会はスタートアップへの期待を急速に高めている。政府は「スタートアップ五ヶ年計画」を打ち出し、ユニコーン企業を増やす野心的な目標を掲げているが、本当にそれだけで「スタートアップ大国」は実現するのか。
この問いに対し、起業家や識者からは「このままでは実現しない」という厳しい声が上がる。彼らの提言から、日本が直面する本質的な課題と、現状を打破するために不可欠な「革命」の道筋を読み解く。
Q. なぜ日本のスタートアップは「おとなしい」と評されるのか?
2000年頃のインターネットバブル期には「山師」のような、既存の枠にとらわれないアグレッシブな起業家が多数存在した。しかしここ10年ほどで、日本のスタートアップは「真面目でホワイト」、システム化されコンプライアンスを重視する、ある意味で「おとなしい」存在へと変化した。
企業価値が50~60億円程度で早期に上場し、創業者が利益を得て満足する「西麻布イエイ」のようなドメスティックなモデルが主流となっているという指摘もある。これは、既得権益を破壊し、社会に変革をもたらす「挑戦者」としての過激性を失い、国内のガラパゴス空間で完結してしまう傾向が強まったことを示唆している。GAFAのように既存の覇権をひっくり返すような「革命」が日本では起きにくい状況にある。
Q. 日本社会のどのような文化が起業を阻害しているのか?
起業家や挑戦者を「よくやっている」「頑張っている」と積極的に称賛し、応援する文化が日本には皆無だという。例えばミドリムシで飛行機を飛ばしたり、栄養失調の子供を助けたりしても、素直に応援された経験はほとんどないという実体験が語られている。アメリカにはこのような「褒めたたえる」カルチャーがあり、起業を後押しする土壌になっているのとは対照的である。
産業全体に危機感が蔓延しないと、なかなか変革が起きない状況も浮き彫りになっている。例えば農業では、生産者の収益が上がらず後継者不足が深刻化し、産業そのものが終わってしまうという切迫した状況に至って初めて、既存の仕組みを守るよりも新しい挑戦を歓迎するムードへと変わり始めたという。社会全体の存続が危ぶまれるレベルに追い詰められて初めて、重い腰が上がる日本の特性が起業を阻害する一因ともいえるだろう。
Q. 政府の「スタートアップ五ヶ年計画」は現状を変えうるか?
日本はユニコーン数(6社に対し米国633社)や開業率(他国の半分以下)、ベンチャー投資額(米国の約50分の1)など、多くの指標で世界に大きく劣後している。また、スタートアップの出口戦略はIPOが76%と異常な偏りを見せており、M&Aが主流の世界とは異なる特異なエコシステムが形成されている。このような現状を打破すべく、政府の「スタートアップ五ヶ年計画」は、投資額を10兆円規模(約10倍)、ユニコーン社数を100社、スタートアップ社数を10万社に増やすという野心的な目標を掲げる。
しかし、この計画には実現への大きな課題が残る。ユニコーン創出の核心に踏み込めない理由として、ストックオプション税制など「金持ち優遇」と批判されかねない政治的にデリケートな問題への忌避がある。これを改革するには「スタートアップ特区」のような巧みな政治運営が必要だ。また、既存の小規模IPOで満足するベンチャー業界を壊す「内戦」状態を引き起こすことにも政府は及び腰である。
この計画を日本の「ラストチャンス」と捉えるならば、項目を網羅的に掲げるだけでなく「全てをやる」という断固たる覚悟が必要である。もしこれで実現しなければ「日本にはスタートアップは不要」という認識を持つほどに、国を挙げて命がけで取り組むべき挑戦といえるだろう。
Q. 日本経済の再生に不可欠な「革命的提言」とは何か?
日本経済が新陳代謝を欠いている最大の理由は、古い大企業が残り続けていることにあるという。新しいスタートアップが生まれるためには、まるで森林の新陳代謝のように、古い巨大な木が倒れて空間が空く必要がある。人手不足の現代日本では、大企業が潰れても失業の問題は生じないため、国は「どんどん会社を潰す」「助けない」という断固たる姿勢が必要だという提言がある。焼け野原になった明治維新後や戦後に新しい企業が生まれたように、既存の破壊が新たな創造を促す。
また、数の増大策としては、「20代の大企業への就職禁止」「国立大学の卒業生は全員起業」という過激な案も飛び出す。これにより、若者はビジネスの現場で会計知識などを嫌でも身につけ、大企業のトップが無知なまま経営を続けるという問題の解消にも繋がると予測される。さらに、一人ひとりに1億円の起業資金を出すなどの徹底した投資も必要になるだろう。
Q. なぜ日本のスタートアップは「ガラパゴス化」したのか?その問題点をどう解決すべきか?
日本のベンチャーエコシステムは世界標準から大きくかけ離れ、「ガラパゴス化」しているという。例えば、日本のVCとの出資契約は日本語で書かれ、「疑義がある場合は双方誠意をもって協議」といった曖昧な文言が含まれるだけでなく、「早期に上場できなければ株を買い取れ」という条項が存在する。これは実質的に借金であり、エクイティ(株式)としての性質を損なっている。海外では噴飯もので、場合によっては契約自体が無効となる可能性がある。
このガラパゴス化の原因は、日本のVCが銀行の間接金融規制を迂回する「限界金融」の延長で始まった歴史的経緯にある。銀行が直接リスクマネーを出せないため、転換社債などを利用し、早期のIPOで株に転換して資金を回収するというモデルが定着してしまった。しかし、世界のVCは最初からデラウェア法人を設立し、グローバル標準の契約で世界中から資金を集めている。欧州の小さな国々が短期間で多くのユニコーンを生み出せるのは、この「統一ルール」に則って投資を集めているからである。
日本もサッカー日本代表が欧州のトップリーグで経験を積んだように、世界のプレイングフィールドに立って戦えるルールにエコシステムを合わせる必要がある。日本はディープテック分野で世界的な優位性を持つものの、このガラパゴス化した制度が続けば、世界から見過ごされ、優位性も失われる可能性が高い。この転換は、既存のベンチャー業界との「内戦」を引き起こすデリケートな問題だが、真の改革には不可欠である。
Q. この変革期において、私たちはどのような覚悟を持つべきか?
日本の終身雇用、年功序列、新卒一括採用といった既存の労働市場の仕組みは、グローバルなメガスタートアップを生み出すという目標とは根本的に相容れない。今回のスタートアップ推進の動きは、単なる経済政策の枠を超え、こうした旧来のシステムを破壊し、日本社会そのものを「アップデート」する「突破口」として位置づけられる。
これは、旧態依然とした幕藩体制を終わらせることを目指した徳川慶喜のように、体制側が自らの終わりを覚悟して改革を主導する「現代の大政奉還」であるとも言える。歴史的に見ても、日本の大きな変革は、自らの体制を内側から壊す「日本型革命」によって達成されてきた。
革命は、終身雇用などで守られてきた人々の既得権益を奪うため、激しい抵抗、つまり「内戦」を伴う。しかし、この痛みを伴う改革を避け続ければ、日本は停滞し、やがては本当に「滅びる」だろう。日本は今、明治維新のように体制内から自己変革を遂げるか、あるいは焼け野原になって一からやり直すかという大きな岐路に立っている。この激動の時代において、若者が挑戦から逃げることなく、変革の担い手となる覚悟を持つことが強く求められる。