9 questions
クリエイティブ
(39)
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2022年2月26日

時代を切り拓くビジョナリーをゲストに招き、「9つの質問」でその実像と未来に向けたビジョンを解き明かす。インタビュアーは、PIVOT CEO 佐々木紀彦とPIVOT チーフ・グローバルエディター 竹下隆一郎。 <ゲスト> 佐藤可士和 SAMURAI代表/Creative Director 1965年...
佐藤可士和が語る「クリエイティブの未来」:領域拡張と本質探求の21年
クリエイティブディレクターとして長年にわたり日本のデザインシーンを牽引してきた佐藤可士和氏の活動は、グラフィックデザインから企業ブランディング、社会課題解決まで多岐にわたる。彼は常に時代の先端を行き、クリエイティブの可能性を拡張し続けてきた。彼のキャリア20余年の歩みと、これからのクリエイティブの展望に迫る。
今回は、9つの質問形式で、佐藤可士和氏の独自のクリエイティブ論、そして変化を続ける現代における彼の洞察を深掘りする。彼の視点から、クリエイティブの「現在」と「未来」を読み解いていこう。
Q. クリエイティブの仕事は、この21年間でどのように変化したのか?
2000年の独立後、クリエイティブの仕事は広告キャンペーンから企業ブランディングへと本格的にシフトした。マスコミュニケーションの限界を感じ、ブランドやデザインの力が重要になると予見したためだ。ユニクロのグローバルブランディングをはじめ、対象領域を拡大していった。
近年では、「団地の未来プロジェクト」のように社会課題をクリエイティブで解決する依頼が増加。これは佐藤氏の変化ではなく、時代と社会の変遷に適応してきた結果であり、いかに自身のクリエイティブを役立てるかを考え続けてきた21年である。
Q. 年齢を重ねても、アイデアが枯渇する心配はないのか?
若い頃はアイデア枯渇への不安を感じたこともあったが、今は全くない。ホンダ「ステップワゴン」のプロジェクトが転機となった。自身の役割は、クライアントや商品に内在する「答え」を正確に引き出し、効果的に提示する「編集」作業だと気づいたからだ。
この発見により、アイデアは外部から付加するものではなく、常に目の前にあると理解。自分の感覚に頼る必要がないため、経験を重ねるほど本質を捉えるスキルが向上し、年齢はクリエイティブにとってむしろ武器となると述べる。
Q. Z世代のような新しい層へのアプローチにおいて、最も重視する点は何か?
Z世代へのアプローチでは、奇をてらわず彼らの行動の本質を捉える。くら寿司のプロジェクトでは、彼らが食事と情報発信を自然に結びつける点に着目。写真映えする内装や寿司クレープなど、共有したくなる体験を意識的に設計した。
ブランドが提供する本質的価値(安さ・おいしさ+「楽しい」体験)をZ世代のライフスタイルに合わせて最適化することで、自然な共感と反応を得る。単なるマーケティング的なターゲティングではなく、本質的な「楽しさ」を提供することで、幅広い層が楽しめる空間となっている。
Q. クリエイティブにおける普遍性と時代性のバランスをどう考えているか?
クリエイティブで重視するのは、時代性よりも「普遍性」だ。スマートフォン普及やコロナ禍といった時代性は、自然な行動の結果として作品に現れるものと考える。長期的視点で価値を保ち続ける「耐久性」のあるものを創り出すことに力を入れている。
ロゴや店舗、コンセプト設計においては「長く持つこと」を強く意識し、人類普遍的な感情や認識をベースにする。「当たり前」であるべき姿を愚直に追求することが、最も長く支持されるクリエイティブを生む。この「当たり前」を継続することこそ、最大の価値を生むと語る。
Q. 日本の強みをどう活かし、世界でブランディングするべきだと考えるか?
日本の国際競争における強みは「量」ではなく、国民全体の「感性の解像度の高さ」という「質」にある。食文化、ものづくり、空間の細部に見られる日本の繊細な美意識と職人的こだわりは、世界でも類を見ない特長である。
欧米のiPhoneやテスラのようなダイナミックさではなく、この日本独自のクオリティの高さを徹底的に磨き上げ、突出することが肝要だ。海外での仕事を通じて、日本ならではの価値を客観的に認識したという。地方の優れた文化(今治タオル、有田焼など)も同様で、その潜在的な魅力を引き出し発信することが、日本全体のブランディングに繋がると述べている。
Q. テクノロジーをクリエイティブの領域でどのように捉えているのか?
テクノロジーは常に進化し、世の中を変え続けているが、テクノロジーそのものがクリエイティブであるとは捉えていない。むしろ、クリエイティブを拡張するための強力な「ツール」と位置づけている。自身は新しいもの好きで、Mac初期からの使用者でもあり、新しい技術を積極的に試すことに抵抗がない。
メタバースのような新領域にも関心を示し、価値観が変わる過程に立ち会うことを楽しみにしている。クリエイティブの概念はテクノロジーよりも遥かに広く、思考やアイデアこそが本質だ。新鮮な刺激を得て表現の幅を広げる手段として、テクノロジーを活用していく方針である。
Q. 10年後の未来において、クリエイティブの可能性をどのように展望しているか?
これからの10年で、クリエイティブは「リアル空間」、「仮想空間(メタバース)」、そして人々の頭の中にある「概念空間」という3つの空間が融合する形で発展すると考えている。現在はまだ言語化できないイメージではあるが、これらの空間が連動し、今までにない面白い体験や表現が生み出されるだろうと語る。
未来志向を貫くため、過去の仕事のラフスケッチや模型などはすべてプロジェクト終了後に処分している。過去の成功に縛られず、常に新たな可能性を探求。佐藤氏の人生のテーマは「何歳まで生きるか」ではなく「何歳まで創造し続けられるか」であり、思考し、物理的・概念的に何かを創造し続けることこそが生きる喜びである。