【独占インタビュー】バイナンス創業者CZが語る未来

暗号資産の税率引下げや規制緩和が進む日本市場。世界最大の暗号資産取引所バイナンス創業者チャンポン・ジャオ(CZ)氏に日本のポテンシャルと次なるグローバル構想の全貌を聞いた。 <ゲスト> チャンポン・ジャオ|バイナンス創設者 <参考書籍> 『フリーダム・オブ・マネー 世界最大を創った男、CZの半生...
CZが語るバイナンスの原点と教育への転身、そしてAI×クリプトが拓く自律経済の未来
世界最大の暗号資産取引所バイナンスを立ち上げ、わずか数カ月で業界の頂点へ押し上げたCZ(チャンポン・ジャオ)。
創業初期の危機を乗り越えた背景には、かつて東京証券取引所のシステム構築で培った技術力と、日本という拠点での決断が存在していた。
激動のCEO退任と4カ月の服役を経て、現在の彼は富の創出から「機会の創出」へと軸足を完全にシフトさせている。
完全無料の教育プラットフォーム「Giggle Academy」の挑戦、AIエージェントが台頭する近未来の経済圏、そして日本のスタートアップが持つ勝機について、彼の透徹した視点を解き明かす。

Q. なぜ東京でのエンジニア経験がバイナンスの世界的成功の礎となったのか?
CZにとって日本は、エンジニアとしてのキャリアをスタートさせた決定的な場所である。
大学卒業後、東京で最初に就職した企業において、東京証券取引所(TSE)向けの注文執行システム開発を担当した。
当時の開発環境はC++であり、ポインタの破棄や厳密なメモリ割り当てを自ら管理する過酷な現場であった。
金融機関が求める超高速マッチングと低遅延処理のアーキテクチャを肌で学んだ経験こそが、後のバイナンスを支えるシステムの直接的な原型となったのである。
さらに2017年7月に上海でバイナンスを創業した直後、中国政府による暗号資産の全面禁止令が下された。
創業からわずか6週間という最大の危機において、CZは即座にチーム約30人を引き連れて東京・目黒へ拠点を移転した。
当時、世界に先駆けてビットコインを合法化し、交換業のライセンス制度を整備していた日本の柔軟な規制環境があったからこそ、プロダクトの検証とグローバル拡大を止めることなく遂行できた。
バイナンスの世界的躍進の種は、技術と事業戦略の双方において日本に蒔かれていたのである。
Q. 創業わずか5カ月で世界首位に登り詰めた勝因と顧客保護の決断とは何か?
バイナンスは創業からわずか5カ月後の2017年12月、取引高ベースで世界最大の暗号資産取引所となった。
電光石火の成功の背景には、CZがそれまでに培ってきた17年間の取引システム開発の蓄積があった。
2017年はICO(新規暗号資産公開)のブームが巻き起こった年であったが、既存の取引所は取り扱い銘柄を10から20程度に制限していた。
バイナンスは堅牢なマッチングエンジンを武器に、膨大な新規トークンの上場需要を迅速に取り込み、圧倒的な競争優位性を築いた。
同時に、競合と決定的な差をつけた要因はユーザーからの強固な信頼獲得であった。
当時の暗号資産取引所では、出金の停滞やサポートの数カ月放置が常態化していたが、バイナンスは顧客対応の品質を劇的に引き上げた。
さらに中国の規制強化に伴いユーザーに損失が発生した際、取引所側に法的過失がないにもかかわらず、全準備金の約40%に当たる600万ドルの自社資金を投じて全額を自主補償した。
この徹底した顧客第一の行動が、長期にわたり首位を維持し続けるための岩盤のような土台となったのである。
Q. 暗号資産の税制改革とトークン化は日本にどんな好機をもたらすのか?

日本における暗号資産の税率が最大55%の雑所得課税から、株式と同様の20%申告分離課税へ見直されつつある動きは、極めて大きな転換点である。
合理的な税率への引き下げは、かつて過度な税負担を嫌って海外へ流出した巨額の取引量と資本を再び国内へ呼び戻す契機となる。
日本の起業家は真面目で誠実であり、悪質な不正プロジェクトを起こす割合が際立って低い。
トークンを用いた資金調達環境が整えば、資金難に苦しんできた国内スタートアップにとって強力な追い風となるはずである。
さらに今後、世界中の政府が注力する最大の分野が実物資産のトークン化である。
株式や国債といった伝統的金融商品のみならず、不動産や希少資源、インフラまでもトークン化することで、世界中から流動性を呼び込むことが可能になる。
現在、世界のステーブルコインの99%以上が米ドル連動であるが、世界主要通貨の一角である日本円のステーブルコインも普及を加速させるべきである。
日本は意思決定こそ慎重であるが、一度方向が定まった後の実行力と拡大スピードには目を見張るものがある。
法整備の転換期を迎えた今こそ、トークンエコノミーの社会実装を一気に進める好機である。
Q. 米国での司法取引とCEO退任を経て得た教訓と新たな生き方とは何か?
2023年、CZは米国の銀行秘密法違反を認め、バイナンスのCEO職を退任した。
犯罪人引渡条約のないUAEに滞在していたため留まる選択肢もあったが、逃亡者として生きることを拒否し、自ら渡米して司法当局と正面から向き合った。
本件は米国の金融ライセンス登録不備に関する手続き上の問題であり、詐欺や顧客資金の流用といった被害は一切存在しない。
それでも自らの非を認め、4カ月間の服役を含む責任を全うした。
大手銀行が巨額の反資金洗浄法違反を起こしても個人が収監されない実態と比較し、不条理さを指摘する声も少なくない。
しかしCZ自身は「世界が完全に公平であることなどない」と淡々と受け止めている。
過去の出来事に固執して後悔するのではなく、経験から学びを得て未来へ進む姿勢を崩さない。
経営の第一線を退いたことで、豊富な資金と時間を手にし、より大きな社会的インパクトをもたらす領域へ全力を注ぐ自由を手に入れたのである。
Q. 完全無料の次世代教育プラットフォーム「Giggle Academy」が目指す世界とは何か?

バイナンスを離れたCZが全情熱を注いでいるのが、無料教育プラットフォーム「Giggle Academy」である。
世界には学校に通えない子どもが約5億人、非識字の大人が約7億人存在し、その3分の2を女性が占めている。
同時に既存の学校教育は、突出した個性を伸ばすのではなく、全員を平均的な人材へ押し込める構造的欠陥を抱えている。
この課題を打破するため、AIとゲーミフィケーション技術を融合させ、2歳児から学べる中毒性の高い学習アプリを開発した。
開始から2年で学習者数は200万人に達し、その成長曲線は急勾配を描いている。
特筆すべきは、アプリ内課金やプレミアム機能を一切排除した完全無料の持続可能なモデルである点だ。
デジタル教育の特性上、生徒数が100万人であっても20億人であっても、システムの維持費用は年間数千万ドル程度とほぼ変わらない。
初期の運用費はCZ自身が拠出し、将来的にはこのプラットフォームで育ち社会で成功を収めた卒業生が、収入の数パーセントを任意で寄付する自律循環型のエコシステムを想定している。
金融アクセスの解放を成し遂げた彼が次に挑むのは、すべての人類へ向けた教育機会の完全な解放である。
Q. AIエージェント経済の到来と日本の若者が起業家を目指すべき理由とは何か?
CZは今後5年以内に、無数の自律型AIエージェントが人間の代わりに経済活動を行う社会が到来すると予測する。
動画編集、マーケティング、料金回収などを担うAIエージェント同士の取引では、クレジットカードや銀行送金は適合しない。
動画1回再生につき1円未満を瞬時に支払うような超高速・大量のマイクロトランザクションを可能にするのは、デジタルネイティブな暗号資産とブロックチェーンのみである。
AIとブロックチェーンの融合により社会の効率性は飛躍し、爆発的な経済循環が生み出されることになる。
こうした激動の時代を迎える日本の若者に対し、CZは終身雇用に安住するサラリーマンの道を脱却し、起業家を目指すべきだと強く説く。
日本企業は保守的と見られがちであるが、実際には新技術やデジタルガジェットへの受容性が極めて高い。
AIやWeb3の登場により、個人の手で人々の課題を解決するプロダクトを作り上げるコストは歴史上最も低くなっている。
起業の道には不確実性と苦痛が伴うが、それを遥かに上回る社会的インパクトと金銭的リターンが存在する。
新しいテクノロジーを迅速に学び、他者に価値を提供するプロダクトを自ら作り上げることこそが、これからの時代を生き抜く最善の選択肢である。