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イオン系スーパー100店閉店へ
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2026年10月13日

食品スーパーを展開するイオン系のUSMHが80億円の赤字見通しと100店舗の閉店を発表。背景にはインフレだけでなく商品部の重複など組織統合の遅れという構造問題があると専門家は分析。「まいばすけっと」との明暗、地方スーパーの首都圏進出、外食やコンビニを交えた「胃袋の奪い合い」など業界の構造変化を解説。...
首都圏スーパー100店閉鎖の深層:U.S.M.H赤字転落と激化する「胃袋争奪戦」の未来
首都圏を中心に食品スーパーを展開するイオン傘下のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)が、巨額の最終赤字見通しと約100店舗の大規模閉鎖を発表した。
マルエツ、カスミ、いなげやといった有力ブランドを抱える巨大スーパー連合の失速は、流通業界に大きな衝撃を与えている。
だが、この異変は単なる一企業の業績低迷にとどまらない。
背景には、人口減少社会に伴う内需縮小、高齢化による商圏の変化、そしてコンビニや外食テイクアウトを巻き込んだ激しい構造転換が存在する。
激変する流通市場で今何が起きているのか、その真相と生き残りの条件を紐解いていく。

Q. 首都圏スーパー連合であるU.S.M.Hが赤字に転落し100店舗もの大量閉鎖に踏み切る真因は何なのか?
U.S.M.Hは2027年2月期の連結最終損益が80億円の赤字になる見通しを示し、2030年度までに約100店舗を閉鎖する方針を明らかにした。
営業収益自体は統合によって拡大する一方で、営業利益は80%減の10億円にまで落ち込む深刻な収益悪化に直面している。
会社側はインフレによる原材料費や物流費、人件費の高騰を理由に挙げるが、根本的な原因はそこではない。
インフレという外部環境は日本全国の食品スーパーに等しく降りかかっている条件であり、その中でも最高益を更新する好調なスーパーは複数存在する。
真のボトルネックは、統合後も傘下各社の商品調達や組織構造の一本化が進んでいない非効率性にある。
持ち株会社に商品戦略部が存在する一方で、傘下のマルエツやカスミ、いなげやの各社にも独自の商品部が依然として残存している。
組織が統一されていないため重複コストが膨らみ、スケールメリットを最大限に発揮できていないのだ。
ただし、同社は大量閉店の一方で今後3年間に約50店舗の新設を計画している。
不採算店舗の整理を進めつつ、高効率な新フォーマットへと店舗網を再構築するスクラップ&ビルドの意図が込められている。
Q. 同じイオングループ傘下の「まいばすけっと」が好調を維持している一方でなぜ総合スーパーは苦戦しているのか?

同じ首都圏を地盤とするイオングループ内でも、小型食品スーパーのまいばすけっとは快進撃を続けている。
明暗を分けた決定的な要因は、店舗フォーマットの明確な割り切りと立地戦略の適合にある。
まいばすけっとはコンビニと同等規模の店舗面積に商品を絞り込み、EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)を徹底してきた。
売り場に過剰な楽しさや変化を求めず、日常の食料品を安く手軽に買えるインフラとしての価値に特化している。
直営方式による効率的な店舗オペレーションを約20年かけて磨き上げた仕組みの完成度が強さの源泉である。
対照的に、U.S.M.Hが展開する従来型の中型総合スーパーは高齢化という社会構造の変化から取り残されつつある。
高齢者は日常の買い物において自宅から700メートル以上歩かない傾向が強い。
徒歩10分以上歩いたり車を利用したりしなければならない立地の中型店舗は、高齢者の生活動線から外れてしまう。
特に山手線周辺など都心部では、近距離で買い物を済ませられる小型店やコンビニへのシフトが不可逆的に進行している。
Q. ドン・キホーテやコストコといったディスカウント勢との激しい競争で劣勢に立たされている要因は何か?
ディスカウント市場で快走するドン・キホーテやコストコは、巨大な取扱量を背景とした圧倒的な仕入れ力(バイイングパワー)を誇る。
メーカーに対して強い価格交渉力を発揮できるため、他社を圧倒する低価格での商品提供が実現できている。
U.S.M.Hも複数社の統合によって店舗数を拡大し、仕入れ力を底上げして競合に対抗することを狙っていた。
しかし、組織統合が中途半端なまま各ブランドが別々に仕入れを維持した結果、期待されたバイイングパワーが発揮できていない。
地域密着という大義名分のもとで仕入れ窓口を分散させたままにした戦略が、皮肉にもコスト競争力の弱体化を招いた。
規模の経済を武器にするディスカウンターに対抗できないばかりか、低価格に特化し切れない中途半端なポジショニングに陥っている。
スケールメリットを真に具現化できなければ、価格志向を強める消費者をディスカウント店から引き戻すことは困難である。
Q. U.S.M.Hが掲げる2031年期の純利益50億円というV字回復目標を達成するための具体策はあるのか?
目標達成に向けた最大の改善余地は、商品仕入れ窓口の完全な一本化によるマススケールメリットの獲得である。
各社に分散している商品部を統合し、メーカーとの交渉力を一元化することで原価低減を推し進めなければならない。
もう一つの勝機は、競合小型店に対する優位性である「中食(惣菜・弁当)」の徹底強化にある。
快進撃を続けるまいばすけっとであっても、惣菜や弁当といった中食カテゴリーには弱みを抱えている。
マルエツやいなげやが培ってきた惣菜開発力やインストア調理のノウハウを前面に押し出せば、小型店「マルエツ プチ」などの差別化戦略として大きな武器になる。
ただし、戦略を実行に移すには経営体制の抜本的な意識改革が前提となる。
歴史ある名門企業同士の寄り合い所帯であるため、過去の成功体験に縛られた硬直的な発想が意思決定を遅らせていると指摘されている。
売上高や利益といった数字の帳尻合わせではなく、個々の売り場を現代の顧客ニーズに適合させる現場主義への転換が急務である。
Q. バローやツルヤなど地方の有力スーパーが首都圏で熱烈な支持を集めている背景にはどのような競争戦略があるのか?

即席麺や調味料、菓子などの加工食品は、大手量販店による一括大量仕入れ(セントラルバイイング)が圧倒的に有利である。
地方スーパーが加工食品の安売りで大手に対抗することは構造的に極めて難しい。
そこで地方勢が徹底的に磨き上げたのが、肉・魚・野菜からなる「生鮮3品」の圧倒的な鮮度と専門的な売り場作りである。
水族館のように鮮魚が並ぶ岐阜発祥のバローや、高品質な長野のツルヤは、その卓越した商品力で首都圏消費者の心を捉えている。
背景には、地方での急激な人口減少に伴い、成長を求めて首都圏へ進出せざるを得ない地方企業の危機感がある。
先行した埼玉のヤオコーや神奈川のロピアに続き、外郭エリアからの攻勢が一段と強まっている。
現代の消費者は、普段の飲料はまいばすけっと、肉のまとめ買いはロピア、魚はバロー、日用品はコストコといった具合に巧みに使い分けている。
際立った専門性や圧倒的な強みを持たない無難な総合店舗は、消費者の選択肢から真っ先に脱落していく。
Q. スーパーやコンビニの枠組みが崩壊する中で起きている「胃袋の争奪戦」とはどのような事象なのか?
流通業界における従来の業態区分は急速に意味を失いつつある。
コロナ禍を契機に外食産業のテイクアウトやデリバリーが定着し、中食領域へと深く踏み込んできた。
同時にコンビニエンスストアも店内調理による出来立て弁当や惣菜の提供を強化している。
スーパーが独占してきた惣菜市場に外食とコンビニがなだれ込み、ひとつの「胃袋」を巡る異業種間バトルが過熱しているのだ。
食料品を巡る税制や物価高の動向次第では、外食各社が一段と中食・テイクアウトに注力し、競争環境はさらに激化する。
この胃袋争奪戦の根底にあるのは、未曾有の人口減少によって国内の内需総量が縮小し続けている過酷な現実である。
パイそのものが削られていく市場では、同業他社との競争意識に固執している企業から淘汰されていく。
スーパー、コンビニ、外食の垣根を取り払い、生活者の食事シーンのどの瞬間を捉えられるかが問われている。
U.S.M.Hの100店舗閉鎖は、縮小する日本経済の縮図であり、全流通業態に突きつけられた構造改革の序章に過ぎない。