
【エスピノーサCEOに聞く】日産は自動運転で稼げるのか?(字幕)
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2026年10月6日
日本のモビリティ産業は、外資の自動運転サービス上陸により存亡の危機にある。10万ドルの自動運転車はどのように収益化されるのか?地方交通の崩壊をどう救うのか?ホンダ・三菱との協業の真の狙いとは何か。大企業病から脱却し、改革を断行する日産自動車 CEOのイヴァン・エスピノーサ氏に、次世代の生存戦略と組織...
日産再生の突破口となる「大衆化する自動運転」と即断即決のリーダーシップ
優れた技術を持ちながらも、それを確実に収益へ結びつけることが長年の課題とされてきた日産自動車。
自動車業界がCASE革命の波に洗われる今、同社はWaymoやUberといった先端プレイヤーとの協業を矢継ぎ早に進め、自動運転の実装へ急速に舵を切っている。
さらに、重厚な資料作成に頼っていた従来の意思決定プロセスを根本から刷新し、手元のデータで即断即決を下す組織風土への脱皮を図る。
ホンダや三菱とのアライアンス深化、そして過去の歴史が投げかける「経営者の独裁化」という重い問いに、新体制はどう立ち向かうのか。
先端技術の社会実装とガバナンスの革新によって再び反転攻勢を狙う日産の生存戦略を深掘りする。
Q. 技術力はお金にならないという過去のジンクスを破り、自動運転をいかにして莫大な利益へと転換するのか?

日産がこれまで直面してきた最大のジレンマは、高度な先行技術を開発しながらも、それを一部の高級車にのみ閉じ込めてしまい、巨額の投資を回収しきれなかった点にある。
自動運転を巡る新たな競争において日産が掲げる勝算は、徹底した「早期の大衆化」と「外部アライアンスの積極活用」だ。
英Waymoなどの最先端AI開発企業や配車大手Uberと手を組み、自前主義に固執することなく迅速にソフトウェア実装を加速させている。
ごく一部の富裕層だけが享受できる高価格帯のフラッグシップモデルではなく、誰もが日常的に購入できる普及価格帯の車両にこそ、最先端の運転支援システムを投じる方針を明確にしている。
高コストな技術を大衆車へと広く浸透させることができれば、市場でのシェアを一気に拡大し、規模の経済を効かせたコスト低減ループを創出できる。
また、車両自体の販売利益にとどまらず、将来的なロボタクシー事業や走行データの利活用といったモビリティサービス全体の収益化への道筋も拓ける。
技術を象牙の塔から解き放ち、誰の手にも届く実用的な価値として素早く市場へ投下することこそが、日産が描く最大の収益化シナリオである。
Q. 深刻化する地方の交通難民問題に対し、軽EVと自動運転の融合はどのようなブレイクスルーをもたらすのか?
日本の地方部では急速な高齢化に伴い、運転免許を返納した高齢者が通院や日常の買い物に困窮する「交通難民」問題が深刻な影を落としている。
公共交通機関が衰退し、過疎化に伴ってガソリンスタンドの撤退が相次ぐ地域において、日産が誇る軽EV「サクラ」のような存在は極めて高い実用性を持つ。
自宅で手軽に普通充電できる軽EVに高度な自動運転技術が実装されれば、給油の手間をなくしつつ、免許返納に怯える高齢者へ安全な移動手段を再び提供できる。
地方の生活基盤に直結するこの組み合わせは、単なる移動手段の刷新を超えた切実な社会的課題の処方箋となるはずだ。
オンデマンドで呼べるロボタクシーが地域社会を網の目のようにカバーすれば、地方自治体の重い交通維持コストを削減するソリューションとしても機能する。
大都市圏向けの自動運転サービスばかりが注目される中、あえて地方の痛みに寄り添い、生活に密着した軽自動車規格で自動運転を大衆化することは、他社に対する圧倒的な参入障壁となる。
「社会課題を先回りして解決する日産」という新たなブランド価値は、地方市場での揺るぎないロイヤルティを築き上げる原動力となるに違いない。
Q. かつて停滞を招いた「資料偏重の役員会議」から脱却し、意思決定のスピードを劇的に加速させた組織改革とは何か?

日産のかつての意思決定プロセスは、完璧な分厚い資料を何週間もかけて準備しなければ役員が集まって議論すら始められないという、重厚長大な大企業病に侵されていた。
激変するグローバル市場でスピード負けしないため、現体制は資料の事前準備を極限まで削ぎ落とし、手元にあるデータと事実だけで即断即決を下す運営へと舵を切った。
毎週月曜日に開催される短時間の経営会議では、各メンバーがその場で直面している課題を率直に提示し、迅速なガイダンスと判断をその日のうちに下している。
迷いや反論があればその場で潰し込み、必要が生じれば翌週には柔軟に方針を修正するアジャイルな姿勢が組織に根づき始めている。
さらに、企画、デザイン、開発、販売といった異なる部門の精鋭が同一の空間に集まって業務を進める「ワンチーム体制」を導入した。
従来の縦割り組織が生み出していたセクショナリズムや、部門間の果てしない調整作業を根絶し、全機能が1台の車づくりという共通のゴールに向けて同時に走る体制を確立した。
現場の壁を取り払う物理的・構造的な変革こそが、新体制における驚異的な開発スピードを支える土台となっている。
Q. ホンダとの提携によるECU共通化の先には、資本提携や経営統合といった劇的な再編シナリオも視野に入っているのか?
日産とホンダが発表した次世代ソフトウェアやECU(電子制御ユニット)の共通化は、国内自動車大手が長年のライバル関係を越えて手を握り合った象徴的な一手だ。
ソフトウェア定義車両(SDV)への移行には巨額の開発資金と膨大なエンジニアリソースが求められるため、コア領域の規格を標準化して投資負担を分担することは合理的である。
提携の主眼はあくまで「顧客へ最良のソリューションを最も早く届けること」にあり、形式的な提携の枠組みそのものが目的化しているわけではない。
自前のプライドを捨ててオープンに他社や異業種IT企業と協業できるかどうかが、CASE時代を生き残る生命線となる。
将来的な資本提携や本格的な経営統合について、日産経営陣は最初からその可能性を排除する狭量な姿勢を取っていない。
まずは日々の共同プロジェクトを着実に前進させ、ビジネス上の具体的な果実と相乗効果を互いに実証することが先決だ。
互いの強みを活かし合える信頼関係が構築され、両社の企業価値向上に不可欠であると判断されれば、資本統合を含むあらゆるシナリオに対して極めて柔軟に対処する構えを見せている。
Q. 過去の痛烈な教訓である「経営トップの独裁化」という罠を避け、組織の再生を完遂するためのリーダーシップの哲学とは何か?

日産の歴史を振り返れば、強力なリーダーシップで危機を脱したカリスマ経営者が、やがて過度な権力集中によって「独裁者」へと変貌し、組織を歪めてきた負の軌跡が存在する。
現経営陣はこの歴史的リスクを誰よりも痛切に自覚しており、権力への執着を徹底して排除する姿勢を崩さない。
リーダー個人のエゴや保身を会社の利益より優先させることは断じて許されず、社内の耳の痛い意見や現場のネガティブな実態にも絶えず耳を傾ける文化を意識的に醸成している。
社外取締役の交代を含めた取締役会の刷新も、経営陣に対する客観的かつ厳格な監督機能を維持するための重要な布石だ。
真の名経営者たる条件とは、自らが築いた権力基盤に居座り続けることではなく、自らの引き際をあらかじめ明確に定めておくことにある。
自身の任期中に果たすべき構造改革と将来ビジョンの提示を全身全霊でやり抜いた後は、適切な時期に清新な活力と新しい視点を持つ次世代のリーダーへ速やかにバトンを渡す。
自己犠牲を厭わず組織の永続性を最優先にする引き際の哲学こそが、日産を真の健全な成長軌道へと導く防波堤となる。


