健康新常識
摂取油の8割占める「隠れ油」に注意/MCTオイルは痩せない/「糖と脂質の吸収を抑える」の罠
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2026年10月18日

無意識に摂っている「隠れ油」は摂取油の8割を占めるので要注意。「痩せる油」として人気のMCTオイルには誤解がある。「糖と脂質の吸収を抑える」と謳う健康食品には罠があった……。油研究の第一人者・守口徹氏が徹底解説する。 <出演> 守口 徹 麻布大学 名誉教授/食機能探索研究所「BABILON」代表 ...
ダイエット中こそ良質な油が不可欠な理由とは?見えない「隠れ油」の罠と正しい脂質マネジメント
ダイエットを志す際、多くの人が真っ先に制限するのが脂質である。
油はカロリーが高く、体脂肪の直接的な原因になると見なされがちだからである。
しかし、脂質を闇雲に遠ざける極端な制限は、健康や代謝の維持において逆効果を招きかねない。
人間の体を構成する約37兆個の細胞は、例外なく脂質でできた細胞膜に包まれており、油の摂取を絶つことは細胞の働きそのものを低下させる危険を孕んでいる。
さらに現代の食環境では、自覚なく口にしている見えない「隠れ油」が脂質摂取全体の約8割を占めている現実がある。
正しい油の選択と脂質マネジメントの知識を身につけ、代謝を活性化させる健康的な食習慣を確立するべきである。

Q. ダイエット中であっても油の摂取を極端に減らしてはならない理由とは何か?
成人が1日に必要とする総エネルギーのうち、およそ20パーセントから30パーセントは脂質から摂取することが推奨されている。
男性であれば約70グラム、女性であれば約60グラムが1日の脂質摂取目安量となる。
この基準が存在する最大の理由は、人体の約37兆個におよぶ全細胞の細胞膜が油によって構成されている点にある。
細胞膜の原材料となる脂質には、常温で固まりやすい飽和脂肪酸やオメガ9脂肪酸と、低温でも固まらないオメガ6やオメガ3などの不飽和脂肪酸が存在する。
食事から摂取する油の質によって、細胞膜の柔軟性は大きく左右される。
固まりやすい油ばかりを摂取していると、細胞膜が硬化し、栄養素の取り込みや老廃物の排出が円滑に行われなくなる。
その結果、代謝機能そのものが低下し、痩せにくい体質を自ら作り出す事態に陥る。
一方で、オメガ3をはじめとする柔軟な油を適切に取り入れていれば、細胞膜の柔軟性が維持され、代謝活動が活発に保たれる。
不飽和脂肪酸は体脂肪として蓄積されにくく燃焼されやすい性質を持つため、ダイエット時こそ良質な油の確保が必須となるのである。
Q. 体内の各組織における細胞周期と良質な脂質の補給にはどのような関係があるのか?
人間の生体組織は絶えず新陳代謝を繰り返しており、古い細胞が壊され新しい細胞へと入れ替わっている。
例えば皮膚の表皮は約1ヶ月、加齢に伴い40日から50日程度のサイクルで更新される。
さらに胃腸などの消化管粘膜の細胞に至っては、わずか3日から1週間という驚異的なスピードで入れ替わる。
新しい細胞が作られる際、その材料となるのは血中に循環している脂質である。
体内にある材料で細胞膜を構成せざるを得ないため、オメガ3などの良質な脂質が不足していると、質の悪い脂質で細胞膜が作られてしまう。
消化管の細胞であれば、数日間良質な油を摂取し続けるだけでも、状態の良い新しい細胞へとリセットすることが可能である。
また、エゴマ油などのオメガ3を1ヶ月ほど継続摂取した際に肌質が目に見えて改善するのは、皮膚の再生周期と深く合致している。
一方、生涯にわたって細胞分裂を行わない脳細胞であっても、血流を介して細胞膜の脂肪酸組成は徐々に置き換わっていく。
長期的に健全な思考力や組織機能を保つためには、日々の食事から継続的に良質な油を供給し続ける習慣が欠かせない。
Q. MCTオイルや脂質吸収抑制食品に潜む誤解と注意すべき落とし穴とは何か?

健康やダイエットに有効とされる食品には、誇大広告や誤解に基づいた解釈が少なくない。
代表例が中鎖脂肪酸であるMCTオイルであり、世間ではしばしば「飲むだけで痩せる油」のように持て囃されている。
MCTオイルは飽和脂肪酸の一種であり、一般的な油に比べて肝臓で素早く分解され、体脂肪として蓄積しにくい性質を持つに過ぎない。
蓄積されにくい油であってもカロリー自体は存在するため、摂取したからといって体重が直接落ちるわけではない。
また、糖や脂肪の吸収を抑えると謳うサプリメントや特定保健用食品の常用にも大きな盲点が存在する。
これらの製品は、過剰摂取しがちな悪玉の脂質だけを都合よく選別して排出してくれるわけではない。
本来不足しがちで意識的に摂取しなければならないオメガ3などの有益な必須脂肪酸まで、同時に吸着して排出してしまう。
魚料理やオメガ3を摂取する食事の場ではこうした食品の使用を避け、揚げ物や過度な外食の際に限定してピンポイントで活用するなどの賢い使い分けが求められる。
Q. 日常の食事で摂取している脂質の約8割を占める「隠れ油」の実態とは何か?
家庭内でオリーブオイルやエゴマ油を意識して使い、サラダ油を控えるといった工夫は賞賛に値する。
しかし、自らの目で確認してコントロールできる油は、1日に摂取する脂質全体の約2割に過ぎない。
残る約8割の脂質は、外食やコンビニ弁当、スーパーの惣菜、加工食品などに潜む見えない「隠れ油」である。
この隠れ油の実態を軽視したままでは、いくら家庭の調理油に気を配っても脂質マネジメントの抜本的な改善には繋がらない。
スーパーの惣菜コーナーや高級デパ地下の食品であっても、油を使用していない製品はほとんど存在しない。
デパ地下の一流惣菜店であっても、調理には白絞油をはじめとするオメガ6系の安価な植物油が大量に使われているのが常態である。
価格が高い製品だからといって、健康的な良質の油が使われているわけではない点には注意が必要である。
調味料や調理油として目に見えない形で大量の脂質を摂取しているという事実を、まず強く認識しなければならない。
Q. 加工食品やお菓子に含まれる脂質リスクを原材料表示から見抜く方法とは何か?

加工食品やパッケージ商品の裏面に記載された原材料名や栄養成分表示を確認する習慣をつけることが防衛の第一歩となる。
原材料表示は使用重量の多い順に記載される規則があり、上位に「植物油」や「植物性油脂」と記載されている場合、ほぼオメガ6系の油である。
例えば、一見ヘルシーに思える揚げせんべいは、原材料の上位に植物油が記載され、わずか1枚で約3.6グラムの脂質を含む。
これは健康維持に推奨されるエゴマ油1日分の小さじ1杯分(約4グラム)に匹敵する脂質量である。
さらに、カップ焼きそば1食には約27グラムものオメガ6系脂質が含まれており、軽食感覚で1日の脂質上限の半分近くを消費してしまう。
アーモンド入りチョコレートも1箱で30グラムを超える脂質を含有しており、健康イメージの強いナッツであっても過剰摂取になりやすい。
また、冷凍庫から出してすぐにスプーンが通る柔らかいラクトアイスには、固まらないように植物油脂が意図的に添加されている。
純粋な乳脂肪分主体の硬いアイスクリームとは異なり、知らず知らずのうちにオメガ6を過剰摂取する原因となるため、成分表示の精査が不可欠である。
Q. 脂質バランスを整えるために実践すべきオメガ3の摂取法と継続のポイントとは何か?

現代の食生活においてオメガ6を完全に排除することは事実上不可能である。
刺身に添付されている市販のわさびのペーストにすら、舌触りを滑らかにする目的で植物油が添加されているほどである。
仮に昼食などで油を摂りすぎて1日の脂質摂取目安を超過しそうな日であっても、夜のオメガ3摂取を控えるべきではない。
脂質の総カロリーを抑えることよりも、体内の脂質比率を整えるためにオメガ3を補給することを最優先する判断が正解である。
オメガ3を摂取する最も確実な方法は、脂の乗った魚を日常的に食べることである。
植物プランクトンが生成した良質な脂肪酸が、オキアミを経て魚の体内に凝縮されているためである。
加熱調理によって油が外へ溶け出すフライよりも、刺身や煮汁ごと摂取できる煮魚で食べるのが理想的である。
また、過去数ヶ月の脂質摂取状態を評価するには、血液中の血漿ではなく、寿命が120日ある赤血球膜の脂肪酸バランスを調べる検査が極めて有効である。
目先の数値に一喜一憂せず、日々の食事でオメガ3を積み重ねていく姿勢こそが、美肌と代謝の高い健康な体格を作る基盤となる。