TOP TALK
NECの株価。再上昇の戦略
(128)
1,297回視聴
2026年9月29日

日本企業はグローバル競争でいかに戦うべきか。海外利益率50%を目指すM&A戦略のリアルや、半導体撤退の真相とは何か。AIと防衛事業の最前線から、日本企業が再び世界で勝つための条件をNEC代表取締役執行役員社長兼CEOの森田隆之氏に聞いた。 <ゲスト> 森田隆之|NEC社長 1983年に東京大学法学...
NEC森田社長が語るグローバル戦略と変革の哲学――米中に伍する「第3の選択肢」への挑戦
激動する国際情勢と急速な技術革新の波が押し寄せる中、老舗IT大手である日本電気(NEC)が力強い変革を遂げつつある。
AIとセキュリティを中核に据え、防衛や宇宙、海底ケーブルといった経済安全保障を支える重要基盤にフォーカスする同社は、海外市場での利益比率50%を掲げてグローバル市場への進出を加速させている。
過去の痛切な事業撤退から得た教訓、自律性を重んじるジョブ型人事への転換、そして経営トップ自らが現場に立ち原稿を持たずに発信し続ける意義はどこにあるのだろうか。
現状維持を明確な悪と断じ、米中に並び立つ「第3の選択肢」を目指すNEC代表取締役社長兼CEOの森田隆之氏が、同社の勝ち筋と未来への覚悟を語り尽くす。

Q. なぜ国内市場に閉じこもらず、海外営業利益比率50%という高い目標を掲げ続けるのか?
海外利益比率50%という数値は、単なる形式的な経営目標ではなく、事業戦略を泥臭く徹底した結果として達成すべき水準である。
人間も組織も放置すれば安きに流れる性質があり、言葉の壁がなく居心地の良い日本国内に閉じこもる方が精神的にも遥かに安心である。
しかし世界のGDPにおける日本のシェアはすでに一桁台に過ぎず、技術革新には国境の壁など最初から存在しない。
どれほど国内で業績が好調に見えようとも、世界水準の競争力が欠落していれば、いずれ国境を越えて押し寄せる優れた海外競合に淘汰される。
グローバルビジネスの勘所は、関連書籍を読み漁ったり一週間の海外出張をこなしたりする程度では絶対に体得できない。
現地市場の最前線で激しい摩擦に苦しみ、実際に収益を上げる過酷なプロセスをやり切って初めて、組織の血肉となる真の競争力が培われる。
日本電気という出自を背負いながらも利益の半分以上を外で稼ぎ出す覚悟を持ち、「まだ足らない」と自戒し続ける視線こそが組織の停滞を防ぐのである。
Q. トップ自らが原稿を読まず、あえて過酷な外部対話の場に立ち続ける真意は何か?

ダボス会議をはじめとする国際舞台への登壇やメディア出演において、事前に用意された原稿を読み上げるような姿勢は一切取らない。
定型文を朗読するトップの姿は聞き手にとって退屈極まりないだけでなく、話している当人にとっても思考の進展が一切得られない無益な時間となる。
予期せぬ質問や厳しい指摘を投げかけられ、その場で自らの頭をフル回転させて思考を深める中でこそ、新たな本質的発見が生まれる。
さらに、外部に向けた積極的な発信活動の7割は、実は社外への宣伝ではなく社内へ向けた強烈なメッセージとして機能している。
トップが逃げずに厳しい問いと向き合う姿を第三者のメディアや舞台を通じて目撃することで、社員は自社の立ち位置を再認識し、誇りと活力を取り戻す。
社内タウンホールミーティングと社外での真剣勝負の発信を連動させることこそが、巨大な組織の意識を根底から覚醒させる最良の手法である。
Q. 海外市場を開拓するM&Aにおいて、どのような投資基準と規律を設けているのか?
ハードウェアの単体売りではなくシステムやソフトウェア、運用サービスを提供する海外展開において、現地の顧客基盤と商習慣の理解は欠かせない。
そのため、明確に定義された特定セグメントにおいて圧倒的な強みとエンドユーザーとの直接接点を保持している企業をM&Aの対象として厳選する。
買収した強固な現地基盤の上に自社の先進IT基盤を移植し、取り込むことで、相乗効果を最大化するアプローチを貫いている。
投資判断においては、R&D代替の技術獲得を除き、買収対象が強固な経営陣を擁して現実に利益を稼ぎ出している黒字企業であることを絶対条件とする。
買収直後から大掛かりなリストラを要するような案件に手を出すことは、安物買いの銭失いに直結するため厳に排除しなければならない。
仲介持ち込み案件に受動的に乗るのではなく、自社戦略に基づき経営陣同士が膝を突き合わせて企業文化の適合性を自ら確かめることが不可欠である。
Q. AIとセキュリティ、防衛領域のシナジーをグローバル投資家へどのように提示しているのか?

AIとセキュリティは別個のビジネスではなく、表裏一体をなす「コインの両面」であると位置づけている。
従来のDX推進期におけるサイバー攻撃防御にとどまらず、AI自体が誤謬を生み規範を逸脱するリスクを防ぐ「セキュリティ for AI」の重要性が高まっている。
英BAEシステムズとの提携やアンソロピックへの出資、中堅企業向けSOCの提供など、信頼性と安全性を担保するソリューションを包括的に提示することで、投資家の納得を獲得している。
加えて、長年培った防衛用センサーや作戦指揮システム、海底光ケーブルや宇宙インフラを一連の経済安全保障プラットフォームとして統合している。
分業制が進む欧米市場と異なり、日本のAIトランスフォーメーションでは上流コンサルからSI、運用までを一気通貫で完遂できる総合力が圧倒的な強みとなる。
有言実行で目標業績をデリバーし続ける実績とクリアな事業構造が合致したことで、海外資本からの正当な企業評価が急速に定着し始めている。
Q. 過去の半導体撤退という苦渋の決断をどのように捉え、重要技術の自給をどう見据えているのか?
かつての半導体事業からの撤退について、勝てる可能性のある事業シナリオ自体は確かに存在していた。
しかし、その勝ち筋を完遂するためには他事業をすべて切り捨て、全社リソースを半導体の一点に集中投下する全賭けの覚悟が不可欠であった。
会社全体の存続と多角的な強みを維持する観点から振り返れば、苦渋に満ちた決断ではあったものの、当時の判断は経営として正しかったと確信している。
ただし、産業全体の死活を握る半導体や国産LLMなどの基盤領域が他国依存に陥れば、致命的なチョークポイントになりかねない。
特定分野の自給能力を国全体として保持することは、経済安全保障上きわめて重大な意義を持つ。
不確定要素の多い量子技術においても、ハードの覇権争いを見極めつつ、あらゆる基盤上で機能するソリューション能力を保持し、商用化の好機にリソースを集中させる構えである。
Q. 激動の時代においてリーダーは何を指針とし、NECは世界でいかなる役割を果たすべきなのか?

不確実性に満ちた環境下において、現状維持を選び取る姿勢は最大の衰退であり、明白な悪である。
中興の祖である小林宏治氏が遺した「安定する企業は不安定であり、不安定な企業は安定である」という言葉の通り、自ら変化を起こし続けることこそが唯一の安定をもたらす。
現代のリーダーには胡座をかくことなく、旺盛な好奇心を胸に抱き、自らリスクを取って現場を駆け回るタフな行動力が求められる。
自律的なキャリア形成を促すジョブ型人事への刷新や中途人材の登用を加速させ、組織の硬直化を打破する試みはまだ道半ばに過ぎない。
迷いを捨てて目の前の着手可能な課題から行動を起こすカルチャーを社内に定着させ、日本経済を元気に牽引する旗頭となる決意である。
米中の地政学的な覇権争いが深まる世界において、卓越した技術信頼性を武器に、国際社会が真に頼ることのできる強固な「第3の選択肢」として存在感を確立していく。