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AIと防衛に全集中。NECの成長戦略【森田隆之NEC社長】
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2026年9月28日

2010年前半の経営危機から復活し、収益で富士通を抜いたNEC。なぜ今、AIと防衛に特化するのか?次なる成長は実現できるのか?NECの森田隆之CEOに聞いた。 <ゲスト> 森田隆之|NEC社長 1983年に東京大学法学部を卒業後、NECに入社。海外M&Aを軸に事業開発やグローバル事業を長く牽引し、...
NEC再生の10年と新時代の生存戦略:AIネイティブへの全面刷新と防衛デュアルユースの勝機
2012年の深刻な経営危機から10年以上の歳月を経て、劇的な復活を遂げた日本電気(NEC)。
携帯電話や半導体といった不採算事業の整理と負債の清算を完了させ、業績と株価を急回復させた同社は、いまや「AI」と「防衛」という国家レベルの重要領域を牽引するフロントランナーへと脱皮しつつある。
かつての老舗ITハードウェア企業は、いかにして体質を変革し、次なる成長軌道を描き出したのか。
本稿では、同社の森田隆之社長が語る大企業再生のリアルと、AIネイティブ時代におけるSIerの生存戦略、そして経済安全保障を軸とした防衛ビジネスの勝機を掘り下げる。

Q. 経営危機のどん底から「普通の会社」へ再生するまでに、なぜ10年もの歳月が必要だったのか?
2012年の経営危機以降、NECは携帯電話や半導体といったかつての主力事業から相次いで撤退し、抜本的な事業の取捨選択を進めてきた。
過去の負の遺産や構造的な負債を清算するクリーンアップは、足元でようやく9割方の目処が立ち、将来の投資と現在の課題をバランスよく見通せる状態へと到達した。
巨大な組織と複雑な利害関係を抱える日本の大企業において、過去の清算から将来に向けた成長基盤の再構築までを成し遂げるには、最低でも10年の継続的な実行期間が不可欠である。
さらに重要なのは、構造改革は一度完了すれば終わるイベントではなく、企業が活動を続ける限り恒常的に生じる課題に対処し続ける経営機能である点だ。
事業売却や人員配置転換といった痛みを伴う改革は社内外からの批判や反発に晒されやすく、他者から手放しで賞賛される仕事ではない。
そうした過酷な環境下でリーダーシップを維持するためには、終わった問題を一切引きずらない割り切りと、目の前の課題解決をゲームのように捉えて前進を楽しむ強靭な自己肯定感が求められる。
Q. 生成AIの急速な普及に対して、従来のシステムインテグレーター(SIer)はどう変化すべきなのか?

生成AIの登場によってコード生成やシステム構築が自動化されつつある現在、従来の要件定義に従って画面や基幹機能を作るだけの受託開発モデルは急速にコモディティ化している。
単なる受託開発にとどまるSIerは価値を失って淘汰される運命にあり、生き残るためには企業のあり方や事業モデルをAI前提へと根本から作り直す「AIネイティブ」への転換が必須となる。
そこでNECが提示するのが、上流のコンサルティングから開発、そして日々の運用保守までを一気通貫で結合する「コの字型」の提供価値モデルである。
これまでのIT業界では、華やかな構想を掲げるコンサルティング企業、言われた仕様通りに開発するSIer、日々の監視を担う運用保守企業がそれぞれ分断されていた。
しかし顧客企業が真に求めているのは、見栄えの良いプレゼンテーション資料ではなく、経営課題を解決して定量的な利益や成果をもたらす確実な仕組みである。
アビームコンサルティングの買収をはじめとする体制強化を通じて、上流の経営構想から下流の現場運用までをシームレスに結びつけることこそが、AI時代におけるSIerの最大の差別化要因となる。
Q. オープンAIなどのフロンティアモデル企業や外資コンサルと、どのように差別化して共存するのか?

オープンAIやアンスロピックといったフロンティアモデルを開発する巨大テック企業は、最先端モデルの研究開発に経営資源を集中投下している。
しかし実際の企業現場においては、最上位の巨大モデルを必ずしも必要とせず、コスト制約やデータ管理の厳格さ、既存レガシーシステムとの連携といった実務上の障壁が数多く存在する。
最先端AIの恩恵を現場へ浸透させるためには、個別企業の複雑な業務フローを理解し、泥臭いシステム統合やセキュリティ要件を解決する実践的な実装部隊が不可欠となる。
また、アメリカのパランティアが実践したように、顧客企業の生データに意味付けと紐付けを行い、日々の意思決定を支援する現場密着型エンジニアリングの価値は一段と高まっている。
NECは自社開発のAIモデルや強固なサイバーセキュリティ基盤を保持しながら、フロンティアモデル企業を競合ではなく重要なパートナーとして位置づけている。
顧客の知的財産を守りながら既存資産をAIネイティブな環境へと移行させる役割を担うことで、テックジャイアントやコンサルティング会社とは一線を画す独自のポジションを確立できる。
Q. かつて「儲からない」と見なされていた防衛事業が、なぜ急成長の中核ビジネスへと変わったのか?
日本の防衛産業は長年にわたり、原価に一定の利益を乗せるだけのコストプラス契約が主流であり、企業がコスト削減の努力を行うほど利益が減少する構造的矛盾を抱えていた。
さらに単年契約が中心で投資回収の予見性が低く、株主からも撤退を求められるなど、民間企業にとっては採算の合いにくい事業領域であった。
しかし近年、政府による防衛制度改革が進展し、優れた技術や実績を持つ企業に対しては最高15パーセントの営業利益率が認められるなど、収益環境は抜本的に改善された。
国家的な危機感を背景とした政策転換により、防衛分野は民間企業が自己リスクで大規模な研究開発投資を実行できる魅力的な成長市場へと変貌を遂げた。
海底ケーブルや通信衛星、サイバーセキュリティなど、NECが培ってきた通信・社会インフラ技術は、そのまま国家の安全保障を支える防衛技術と直結している。
防衛領域への投資が呼び水となり、最先端のインフラ技術を磨き上げることで、企業全体の収益性と競争力を力強く押し上げる好循環が生まれている。
Q. 防衛技術と民生技術を両立させる「デュアルユース」と海外展開を成功させる鍵はどこにあるのか?

日本の国内防衛市場は規模に限界があるため、開発の初期段階から民生用途への展開を視野に入れた「デュアルユース」の設計思想を持つことが決定的に重要である。
過去には防衛専用として特注開発した赤外線センサーを後から民生向けに作り直そうとして、高コストや開発の遅れに見舞われた苦い教訓があった。
そのため現在では、共通基盤部分と個別仕様部分のインターフェースを開発初期から明確に分離し、民生市場と防衛市場の双方で効率的に展開できるアーキテクチャ設計を徹底している。
また、オーストラリアをはじめとする同盟国・同志国への防衛装備品の輸出においては、ハードウェア単体だけでなく運用マニュアルやノウハウの提供が求められる。
しかし高度な運用知見は自衛隊や防衛省に蓄積されているため、企業の努力のみでは完結せず、国家間の外交方針に沿った密接な官民連携が欠かせない。
政府が示す安全保障のロードマップを地図として活用し、自らのリスクで投資判断を下していくことが、グローバル市場での持続的な成長を実現する鍵となる。