
元最強トレーダーが暴く金融界
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2026年9月14日
世界的な危機が起こるたび、なぜ富裕層だけがさらに肥え太るのか。真面目に働く中間層が家すら買えなくなる資本主義のバグとは何か。貧困街からシティバンクのトップトレーダーへと上り詰めたギャリー・スティーヴンソン氏。金融業界の狂気と、格差社会を是正するための富裕層課税の必要性について、元最強トレーダーに聞い...
経済格差の本質を暴く:数字の向こうにある真実とは何か
現代社会を覆う経済格差の波は、個人の生活だけでなく、社会全体の構造を大きく揺るがしている。
多くの人々が漠然とした不安を抱える中で、元シティバンクのトレーダーであり、ベストセラー作家でもあるギャリー・スティーヴンソン氏が、自身の稀有な経験と鋭い洞察に基づき、この複雑な問題の根本原因と解決策を提示する。
ギャリー氏は、単なる数字の変動にとどまらない、人間の生活、社会の仕組み、そして富の移転メカニズムの全体像を捉え直す必要性を訴える。
その視点から、私たちはこの不公平な世界の真相に迫ることができるだろう。

Q. なぜ数学や数字に強いエリートほど経済の本質を見失うのか?
経済学や金融業界では、しばしば数学や数字に優れた人物が評価される。しかし、ギャリー氏はこれこそが現代経済が抱える根本的な問題点であると指摘する。現代の経済学者たちは、複雑な数式やデータモデルに没頭するあまり、「人間心理」や「社会の全体像」といった最も重要な要素を見落とす傾向にある。経済は単なる数字の羅列ではなく、人々の生活に密接に関わるものであり、その実態を無視した理論は機能しない。ギャリー氏は、多くの経済学者が「木を見て森を見ず」の状態に陥り、細部の分析に囚われすぎて、本質的な大局観を失っている現状に警鐘を鳴らす。
Q. どのような生い立ちが、あなたの現在の経済観を形成したのか?

ギャリー氏の現在の視点は、幼少期の経験とエリート層との接触によって培われた。ギャリー氏はロンドン東部の貧しい地域で育ち、一時は学校を退学する経験もしたが、数学の天賦の才によって名門LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)に入学した。しかし、LSEの同級生の多くは世界中の富裕層の出身であり、そこには自分とは全く異なる特権階級の世界が広がっていた。彼らが親の経済力に裏打ちされた最高の教育やコネクション、豪華な課外活動を享受する姿を目の当たりにし、教育や社会における「公平性」の欠如を痛感する。このような生い立ちが、単なる数字ではない経済の「人間的側面」を深く見つめるギャリー氏の原点にある。
Q. 金融業界で出世するために必要な「実力」の正体とは何だったのか?
大学で好成績を収めれば最高の職に就けるという幼い頃からの教えは、金融業界では通用しなかった。金融業界の就職活動、特に夏に行われるインターンシップは、実際の採用に直結する。成績が確定する前に採用が決まるため、評価されるのは学業成績よりも親の人脈や人目を引く課外活動であった。一般の家庭出身であるギャリー氏は、超富裕層の同級生たちが披露する「サハラ砂漠でバイクを走らせてチャリティーを設立した」といった突飛な課外活動とは競い合えないことを悟る。
そんな中で、シティバンクが唯一人脈に関係なく優秀な人材を探す「トレーディングゲーム」という数学コンテストの存在を知る。ギャリー氏はこのゲームのルールを事前に入手するという“チート”を行い、得意な数学とゲームの理解力を活かして勝利し、見事トレーダーの職を手に入れた。「公平な世界ではない」という現実を肌で感じた瞬間であった。
Q. リーマンショック後の「経済回復」の虚構はどのように生まれたか?

リーマンショック後、世界各国は金利をゼロに引き下げ、経済学の定説ではこれによって消費と投資が促進され、経済は回復すると予測された。しかし、現実は異なるものであった。2009年、2010年、そして2011年と、経済回復の予測は何度も裏切られ続けた。
なぜ、世界最高峰の経済学者たちの予測が外れたのか?ギャリー氏は疑問を抱き、身近な人々に「なぜもっとお金を使わないのか」と問いかける。返ってきたのは、「もうお金がない、得た収入はすべて使い切っている」という当然の答えだった。ギャリー氏は、政府や一般家庭が収入以上に支出することで、資産を減らし、債務を増やしている実態に着目する。本来、私的部門(家庭)と公共部門(政府)の両方が同時に債務超過に陥ることは経済学的にはあり得ないはずであった。なぜなら、誰かが資産を失うということは、その資産を誰かが手に入れていることを意味するからである。
この不自然な状況から、ギャリー氏は「世界が富裕層に資産を移転している」という真実に辿り着く。一般家庭も政府も、バランスシートが悪化する一方で、銀行や超富裕層は潤沢な富を築いていた。ギャリー氏は2011年に経済の長期的な停滞と富の集中が加速することを確信し、その見立てに基づいた投機的なポジションを取り、結果として巨額の富を得ることに成功する。しかし、この富は震災のような悲劇によって得たものであり、その倫理的ジレンマに直面することになる。
Q. パンデミックは富裕層と一般市民の格差をいかに拡大させたか?
ギャリー氏はコロナ禍におけるロックダウンが、富裕層と一般市民の格差を史上稀に見る規模で拡大させた最大の要因だと主張する。ロックダウンは、レストラン、バー、旅行、観劇など、主に富裕層の消費活動を制限した。これにより、関連ビジネスの収入は激減したが、政府は借り入れによってこれらの企業を支援した。この時、政府が借り入れるのは富裕層からであり、借り入れた資金は企業を介して家賃やローン、債務の支払いといった形で、結局のところ資産を持つ富裕層へと還流されたのだ。
このメカニズムは、実質的に納税者(一般市民)から世界中の最も裕福な人々への歴史上最大の富の移転であった。経済を一時停止し、政府が富裕層から資金を借りてバラまくような状況を続ければ、生活水準は必然的に低下し、資産価格は高騰するというシンプルな結果が待っている。この構造を理解すれば、パンデミックがなぜこれほどまでに格差を拡大させたかが明らかになるだろう。
Q. 富の格差という巨大な問題に対し、私たちはどのように対処すべきか?

トレーダーとして巨額の富を築いたギャリー氏が、なぜ社会変革の道を志したのか。彼は、周囲の人々の生活が壊れていく一方で、自身がその「崩壊」によって富を増やす現実に倫理的葛藤を抱え、バーンアウトに陥る。金融業界を離れ、社会学の探求のためオックスフォード大学に戻ったが、そこでも「格差」について研究するコースはなく、裕福な寄付者に支えられたアカデミアが抜本的な議論を避けている現実に絶望する。
学術界や政治の世界では期待する変化を起こせないと感じたギャリー氏は、一般市民に直接情報を届ける必要性を痛感し、YouTubeでの情報発信を開始した。ギャリー氏は格差是正の唯一の方法として「労働ではなく富に課税する(Tax Wealth Not Work/Wages)」という公平な税制への変革を提唱する。給与所得者から税を取りすぎず、莫大な資産や不労所得を持つ富裕層から適切に徴税することで、社会の再建が可能であると説く。
Q. 「中流社会」を誇る日本が、今、注意すべき点とは何か?
ギャリー氏は、日本が長らく「低不平等」を享受してきた「中流社会」であったと評価する。多くの人々が職を得て、家を持ち、家庭を築くことができた社会だったと。しかし、近年、欧米で起きている格差拡大の兆候が日本にも忍び寄っていると警告する。若者たちがどれだけ勤勉に働いても自宅を持つことが難しくなり、教育格差が広がる現象は、まさに他国で起きた「不平等化」の兆候に他ならない。
日本の政府が多額の負債を抱える一方で、富裕層は税負担を逃れている現実がある。スカンジナビア諸国やスイスのような手厚い公共サービスを実現するには、健全な税収が必要である。そのためには、国民一人ひとりが政治に関心を持ち、「非常に裕福な人々により多くの負担をさせる」という税制改革を求めて行動を起こす必要があるのだ。もし行動を起こさなければ、日本もイギリスやアメリカのように、中流層が解体され、少数の富裕層と多数の貧困層からなる不公平な社会へと変貌するだろう。この変化を防ぐためには、国民全体の連帯と、公平な社会を勝ち取るための戦いが不可欠である。