
日本株が今後も強い「4つの理由」
日本株「構造的強気」へ、短期の波乱も年末一段高は堅いとみる4つの理由
現在の日本株市場の動向は、単なる一時的な要因で語るべきではない。海外投資家の注目は高まり、日本株が持続的な成長フェーズに入っているとの見方が強まっている。
一時はAIラリーが市場を牽引したものの、足元では調整局面を迎えた。しかし、日本企業が獲得したグローバルでの稼ぐ力、そしてそれを支える構造的な変化が日本株市場の基盤をより強固なものにしている。
本記事では、この変化の真実を探り、日本株の「構造的強気」が年末に向けてどのような展開を見せるのか、具体的なデータと戦略と共に解説する。

Q. 現在の日本株市場はどのように評価されているか?
海外投資家は今の日本株を、円安や一部のAI関連株の上昇にのみ支えられた市場とは捉えていない。むしろ、日本経済がデフレから名目成長へと移行している点、コーポレートガバナンス改革が着実に根付き始めている点、さらに家計が預金から投資信託や株式へと金融商品の保有を広げている点を複合的に評価しているのだ。
日本株はこれまで世界景気や円安のタイミングで買われる傾向が強かったが、今はより構造的な視点で物色が進んでいる。その象徴的な事例として、モルガン・スタンレー主催のジャパンサミットには過去最多の1000名以上の投資家が来場し、前年比25%増を記録した。
また、韓国の一部ファンドが東京にサテライトオフィスを開設する動きも見られる。これは、日本株を短期的なトレーディングの対象としてではなく、アジアのAIサプライチェーンにおける重要なポジションとして腰を据えてリサーチする意図を示している。このような状況は、海外投資家が日本株に対して「構造的に強気」な見方を強めていることを裏付けている。

Q. 4-6月期の企業決算は具体的にどのような状況か?
2023年4-6月期の日本企業の決算は、全産業ベースで売上高が前年比14.1%増収、経常利益は51%増益と過去最高の水準を記録した。これは過去20年間と比較しても、リーマンショックやコロナ禍の反動を除けば最も高い増益率である。
特筆すべきは、この好業績が一部のメモリメーカーに牽引されたものではない点である。たとえ主要なメモリメーカーを除外しても、全産業ベースの経常利益増益率は47%と非常に高い。製造業は91%増と突出する一方で、非製造業も12%増、金融業も54%増と、広範なセクターで好調が確認された。
この四半期は「会社予想を上方修正した企業が増えた」以上に、「下方修正した企業が全体のわずか1%しかいなかった」という点が重要だ。日本企業が日本だけでなく、グローバルに稼ぐ力をつけていることの表れであり、業績の裾野の広さを示唆する極めて力強い結果であった。
Q. 日本のAI関連産業の現状と、今後の投資戦略はどうあるべきか?
日本のAI関連銘柄は、そのサプライチェーンの厚みに大きな強みがある。最初に市場を牽引した光通信接続部品に始まり、メモリ、そして積層セラミックコンデンサーなどの電源・熱対策、さらには検査・計測まで、幅広い要素技術を担う銘柄が存在する。
これは特定の企業に依存する他国とは異なり、AI需要が継続する限り日本株全体を支える広範な基盤となる。しかし、7月から8月にかけてAI関連銘柄のバリュエーション調整が起きた際、「安くなったから買い戻して良いか」という問いに対しては慎重な姿勢が必要だ。
投資家が重視すべきは「アーニングス・デュレーション」、つまり高い利益成長がどれだけ持続するかである。米国における長期金利上昇とハイパースケーラーの資金調達懸念が高まる中、業績の上方修正は続いても、その情報が既に株価に織り込まれている可能性がある。
そのため、無理に下落したAI関連株を追いかけるよりも、高い業績成長や株主還元が期待できる、別のセクター・銘柄に目を向けるべきである。

Q. 短期的なトレンドから、どのような銘柄やセクターに投資すべきか?
市場全体で見ると、3月以降に大きく上昇したAI関連株を多く含む「シクリカルグロース」は7月にかけてアンダーパフォームしている。このような局面では、急騰した銘柄を追いかけるのではなく、異なる特性を持つ銘柄に目を向けるのが賢明だ。
特に、第1四半期(4-6月期)決算の「進捗率」に注目した投資戦略が有効となる。過去のデータによると、1Q時点で会社通期予想に対する進捗率が高い銘柄は、その後の中間決算や通期決算で上方修正される確率が、そうでない銘柄の5倍、全体平均の2倍も高くなる。
現在、進捗率上位に位置するセクターとして、非製造業ではその他金融(消費者金融、証券、保険)、建設、小売、サービスが挙げられる。製造業では、マテリアル関連、化学、その他製品(ゲームなど)、機械セクターが中間決算にかけて安心感を持って保有できる可能性がある。これらの「進捗率プレー」は、テーマが不在の相場において特に有効な戦略であると言えよう。

Q. 日本株の長期的な成長を支える要因は何か?
日本株が長期的な強気相場に入ると考える背景には、相互に関連し合う4つの柱が存在する。
名目成長と安定したインフレの復活
政府の経済安全保障政策による成長戦略
コーポレートガバナンス改革の推進
NISAを通じた家計の日本株投資の増大
まず、「名目成長と安定したインフレ」についてだ。日本の名目GDPとTOPIXには非常に強い相関関係があり、過去30年近く年率平均0.4%程度で停滞していた名目GDP成長率が、今後2026年-2030年には2.0%-2.5%で推移すると予測されている。これは失われたデフレ時代が終わり、企業の売上や利益、設備投資、税収までが連鎖的に成長する「名目の世界」が日本にも到来することを意味し、株価に与える影響は計り知れない。
次に、「政府の経済安全保障政策と成長戦略」である。高市経済安全保障担当大臣が掲げる17分野の成長戦略は、経済安全保障とサプライチェーンの強靭化、AI実装と計算革命、社会基盤の刷新と強靭化をコンセプトにしている。特に戦略資源(先端素材、重要鉱物)、次世代電源・電力基盤、AI基盤・先端半導体など、サプライチェーンの上流にあたる分野に優先的に予算が投じられており、これらのセクターには「政策プレミアム」という株価支援要素が存在する。

3つ目の柱は、「コーポレートガバナンス改革」だ。東京証券取引所による市場再編以降、政策保有株式の売却額や株主還元、株式報酬制度の導入企業数がいずれも過去最高を記録している。GDP比60%にも達する突出した企業現預金比率は、グローバルな水準と比べても異例であり、企業が成長投資、M&A、自社株買い、増配などの形で資金を有効活用し、ROE(自己資本利益率)を高める大きな余地を残している。デフレ期にため込まれた内部留保の活用は、日本企業価値向上と株主還元をさらに促進するだろう。
Q. 円安と日本株のリターンにはどのような関係があるか?
かつては日本株の動向が米株やドル円に強く左右されると言われていたが、日本企業による現地生産の増加や事業の多様化戦略により、ドル円の変動が業績に与えるインパクトは縮小している。ドル円の日本株に対する感応度を示す数値は、トレンドとして低下傾向にあるのだ。
海外投資家との議論では「緩やかな円高」が最も好ましいという共通認識がある。ドル建てで日本株に投資する彼らにとっては、円高が進むことで為替によるリターンも期待できるため、投資意欲をさらに高めることになる。極端な円安は海外投資家のドル建てリターンを相対的に目減りさせるため、構造的に日本株が上昇する上で、為替市場は安定し、緩やかな円高に向かうことが理想的と言えるだろう。
