PIVOT TALK BUSINESS
部下が伸びる“できる上司”の伝え方
(97)
1,151回視聴
2026年9月6日

金銭的な報酬だけでは、部下の真のモチベーションは引き出せない。仕事の意味を言語化し、他者の前で価値を認める「精神的報酬」の威力とは何か。家族に誇れる仕事の意義を伝える丁寧な気遣いから、自販機前での気軽な雑談による本音の抽出まで。現場の士気を劇的に高めるコミュニケーションの技術を専門家に徹底解説しても...
「やりがい」を生み出すリーダーの言葉力:コストゼロで部下を成長させる対話術
前向きな職場環境の構築、部下のモチベーション向上は現代のリーダーにとって極めて重要な課題である。多くのリーダーは、部下の「やりがい」を生み出すために何をすべきか、日々模索しているのではないだろうか。

本記事では、給与や条件といった外的要因に頼らず、言葉の力を活用し、コストゼロで部下のモチベーションとエンゲージメントを引き出す具体的なコミュニケーション術を紹介する。動画で語られた珠玉のリーダーシップ論を紐解き、部下を成長させ、会社に長く惹きつけるための対話のヒントを得よう。
Q. 部下の「やりがい」はどのように生まれるのか?
部下が仕事にやりがいを感じるには、その仕事が誰かの役に立っているのか、なぜ必要なのかといった「意味」が明確に伝わるかが鍵を握る。単なる業務の指示で終わらせず、その仕事の目的や背景を具体的に伝える意識がリーダーには必要だ。

特に、仕事を任せる際には、単に「これ、頼むね」だけでなく、その部下の過去の実績、強み、特性を踏まえ、「君のこんな特性を評価しているから、この仕事を君に任せたいのだ」という具体的な期待を伝えることが極めて重要である。MCの方が「野嶋さんのこれまでの動画をクライアントが見て、ぜひ野嶋さんにと指名している」と言われたことで仕事への意欲が高まったように、具体性のある期待の言葉は、部下にとって大きなやりがいとなるのだ。
さらに、部下にとって最大のやりがいとなるのが、身近で大切な家族からの承認である。リーダーは、自社の仕事が社会にどのように役立っているのかを部下がイメージできるよう、言語化して伝える役割がある。部下自身が自身の仕事を家族に誇りを持って説明できる状態にすることが、長期的なモチベーションと働きがいを醸成する。
Q. コストゼロで部下のモチベーションを高める方法があるのか?
モチベーションを向上させる報酬には「金銭的報酬」「ポスト的報酬」「仕事的報酬」「精神的報酬」の4種類が存在する。中でも「精神的報酬」は、コストがかからないにもかかわらず、絶大な効果を発揮すると注目されている。
精神的報酬を高める上で有効なのは、「みんなの前でその人の価値を言葉にする」という行為だ。1対1で褒めることも大切だが、朝礼や会議の場で「〇〇さんの企画書作成能力は素晴らしい」といった具体的な称賛を公開すると、褒められた部下の自尊心とやる気を格段に高める。これはパワハラが公衆の面前で発生すると本人のダメージが大きくなるのと同じ心理的効果の逆利用であり、ポジティブな刺激として作用する。褒められて嬉しくない人間は存在せず、さらに良い期待として背中に乗り、部下は次回も最大の結果を出そうと尽力するだろう。
しかし、部下の長所を見つけることが難しいと感じるリーダーもいるかもしれない。実はこれは「見ていない」のではなく、「意識的に見ていない」ケースがほとんどだ。長所を探そうと意識し、視点を変えるだけで、部下の隠れた強みや良い点に気づくことができるはずである。
Q. 部下を惹きつけ、会社に長く留まらせるためにリーダーは何をすべきか?
給与や福利厚生以外の理由で「この会社にいたい」と部下に思わせるためには、3つの視点がある。

創業時の思いや経営方針
他社との比較で明確になる自社の強み
顧客の声
まず、会社が設立された時の熱い思いや、企業が掲げる経営方針は、単なるスローガンではなく、社員が働く上での強力な指針となり得る。「日本をピボットする」という創業時の大いなる目標に共鳴し、条件面よりもその理念に惹かれて入社した者も少なくない。リーダーはこの創業時の情熱や会社独自のこだわりを薄れさせずに語り継ぎ、浸透させる役割を担う。
次に、同業他社との比較を通じて自社の強みを明確にし、部下に伝えることの重要性だ。企業内部で働いていると、自社の優れた技術力、スピード、顧客への親身な姿勢といった特長が当たり前になり、その強さに気づきにくくなる傾向がある。リーダーは、自社の優位性を再認識し、それを部下に言語化して伝えることで、部下は自社への誇りと帰属意識を深める。
そして、顧客からの感謝や喜びの声を部下に届けることである。これは前述の「精神的報酬」にもつながる。特にBtoB事業など、直接顧客と接しない部下にとって、自らの仕事が顧客にどのような価値を提供しているかを知ることは大きな励みとなるだろう。経営層だけでなく、中間管理職もこうした信念や価値観を隅々まで浸透させることで、部下の仕事の解像度を高め、長く会社に貢献する人材へと成長させるのだ。
Q. 1on1ミーティングより効果的なコミュニケーション方法は存在するのか?
多くの企業で導入されている1on1ミーティングだが、堅苦しい雰囲気では部下が本音を語りにくいという課題もある。そこで有効なのが「雑談」だ。自販機の前に立つほんの数分、喫煙所での休憩中、またはデスクでのちょっとした立ち話。このような非公式の場での対話は、部下の心理的ハードルを下げ、深い話を引き出しやすいのだ。

特に若い世代の社員は、自身の現在の仕事が将来どのようにキャリアに役立つのか、漠然とした不安を抱えていることが多い。リーダーは、こうした雑談の機会を活用し、「3年後にどうなっていたいか」「将来目指すポジションは何か」といった長期的な視点での問いかけをするとよいだろう。具体的なキャリアプランを持つ社員の新人時代の話や、できる人の考え方を伝えることで、部下は自分の現在地から未来への道筋を具体的にイメージできるようになる。普段の会話の中で自然にキャリアに関するヒアリングを行うことで、いざ正式な1on1ミーティングを行う際にも、その質が高まるだろう。
Q. チームの雰囲気を前向きにするために、リーダーはどのような声かけをすべきか?
意外かもしれないが、チームの翌日の雰囲気は、前日の退勤時にすでに作られ始めている。リーダーの「お疲れ様」に加える一言が、部下の心持ちを大きく左右するのだ。
その日の良かった点を具体的に伝える
翌日の心配事を軽減する
明日の見立てを立てやすくする
部下が退勤しようとする際、「今日もお疲れ様」の一言だけで終わるのではなく、「今日のクレーム対応、落ち着いて素晴らしかったよ」や「会議での発言、とても良い視点だった」といった具体的なフィードバックを加える。こうすることで部下は気持ちよく一日を終え、翌日も「頑張ろう」と前向きな気持ちで出社できる。一日の終わりに叱責を受けて帰ると、自宅で悶々と悩み、翌朝が憂鬱になるのとは対照的である。
また、翌日に重要な商談や不安を伴うタスクを抱える部下に対しては、「明日の商談、二人で行こうね。私もフォローするから大丈夫だ」と一声かけることで、部下の緊張や不安は大きく軽減されるだろう。さらに、「明日はあのクライアントとの商談で、特にAとBについて重点的に話す予定だから、改めて確認しておいてくれ」と翌日の仕事のポイントを伝えると、部下は具体的に準備するアクションに移ることができ、安心して朝を迎えられる。
そして最も基本的ながら強力なのが「感謝の気持ち」を伝えることである。頭では理解していても、実践できていないリーダーは多い。しかし、「ありがとう」の一言は、部下の心に深く響き、次への行動を促す。小さな感謝でも積極的に言葉にすることで、信頼関係は深まり、組織全体の生産性も向上するだろう。
Q. リーダーの言葉にはどのような力があるのか?
筆者は会社員時代、必ずしも上司に恵まれていたわけではなく、部下として辛い経験もした。その経験から言えるのは、リーダーの些細な言動や対応が、部下に与える影響は計り知れないという事実だ。部下はリーダーの行動や言動、気遣いを非常に注意深く見ているものであり、それがその日のモチベーションや、時にはキャリアの選択をも左右する。

リーダー自身の振る舞いは、部下の成長と安心を考慮した気遣いの上に成り立っているべきだ。日々の業務に忙殺される中で意識が散漫になることもあるだろうが、自身の言葉が持つ圧倒的な影響力を自覚し、意図的に、そして温かい言葉を発することが重要である。「ありがとう」の一言が、部下の一日、ひいてはキャリアを大きく変え得る。その自覚こそが、良きリーダーへの第一歩となるだろう。