
HYROX人気の裏側を独占取材
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2026年8月24日
世界で爆発的人気を誇るフィットネスレース「HYROX」、急拡大の秘密を現地レポ。なぜ人は過酷なレースに挑むのか?なぜ広告費ゼロでここまで広がったのか?これまでのスポーツビジネスの常識を覆す収益モデルを解剖。熱狂的なファンを生む次世代スポーツビジネスの裏側に迫る。 <ゲスト> リチャード・カウリー|...
参加者150万人を突破した新興フィットネス「ハイロックス」急成長のビジネス戦略
1kmのランニングと8種類の高強度ワークアウトを組み合わせる「ハイロックス」が、世界のフィットネス市場で注目を集めている。2017年の第1回大会では参加者わずか650人だったが、昨年には年間150万人を突破し、日本を含む世界各地で熱狂的なコミュニティを形成する。
一般的なフィットネス競技と一線を画し、高額な参加費を払ってでも人々が熱狂する「ハイロックス」は、いかにしてこの急成長を遂げたのか。その人気の秘密とビジネスモデルに迫る。

Q. 「ハイロックス」が短期間で爆発的な人気を獲得した要因は何か?
ハイロックスの人気要因は、その圧倒的なアクセシビリティにある。このスポーツは、ジムにある一般的な機材のみを使用するため、高価な専門器具の購入は不要だ。初心者向けのダブルス(二人一組)から上級者向けのソロプロまで幅広いカテゴリーが用意されており、体力レベルや年齢、身体能力に関わらず誰でも参加しやすい設計がなされている。実際、車椅子のアスリートや80代の高齢者までが競技に参加する。誰をも歓迎するこの包括性が、間口を大きく広げる原動力となっている。
Q. 他の競技と比較した「ハイロックス」の際立つ特徴は何か?
ハイロックスはトライアスロンのような高価な専用機材を必要とせず、一般的なジムに備え付けの器具でトレーニングができる点が特徴だ。アイアンマンレースが完走に10時間前後かかる一方、ハイロックスの平均レース時間は約1時間25分と、短時間で達成感が得られる。これはアスリートが過度な負担を感じずに日常の生活と両立しやすいため、多忙な現代人にとって魅力的である。加えて、競技は基本的に屋内で開催され、天候に左右されない安定した環境で実施される点も他競技との大きな違いである。
Q. 「レースケーション」という新しい旅の形はどのような経済効果を生み出しているか?

ハイロックスは「レースケーション(Racecation)」という新しい旅のスタイルを生み出している。これは、世界中の都市で開催される大会への参加を目的として旅行し、競技だけでなく現地の観光やグルメも楽しむというものだ。参加者は例えば水曜日に現地入りして木曜日にレースに挑み、週末は観光するというアクティブな休暇を満喫する。この動向により、遠方から数万人規模の参加者が集まることで開催地の宿泊施設は満室となり、飲食や観光などの消費活動も活発化。地域経済へ大きな貢献をもたらしている。
Q. ジム通いの人々に新たな「目標」を提供することで、どのような価値が生まれているか?
ハイロックスは「自分との戦い」を通じて、ジム通いの人々に具体的な目標を与えた。各ワークアウトでタイムが厳密に計測されるため、アスリートは以前の自分との比較を常に意識し、着実な進歩を実感できる。この「本番ゴール」の提供は、ただジムに通うだけだった多くの人々にトレーニングの意義とモチベーションを与えた。ある参加者は、ハイロックスをきっかけに生活習慣が改善され、喫煙や飲酒を辞めて早朝トレーニングを始めるなど、単なるスポーツ以上のライフスタイルの変革をもたらしている。SNSでの自己表現を重視する現代の若者層の健康志向とも合致し、目標達成と自己成長のプラットフォームとなっている。
Q. 「ハイロックス」が提供する独自の観戦体験と会場運営の工夫は何か?

通常のマラソンやトライアスロンでは観客が選手を見られる機会は限られているが、ハイロックスでは全8つのワークアウトステーションすべてを観客が自由に移動しながら、選手を間近で応援できる。選手と観客がほぼ1対1で同行できるような導線設計により、選手は大勢の声援を受けながら各競技に挑むことが可能だ。DJによる大音量の音楽、迫力ある実況、厳格なジャッジが一体となり、来場者全員がスターのように感じられる、まさに「ジムとナイトクラブが融合したような」熱狂的なスタジアム体験を提供している。これにより、観客も競技の一部となり、特別な一体感を生み出す。
Q. 広告費ゼロで急成長を続ける「ハイロックス」のマーケティング戦略と収益構造はどのようなものか?

ハイロックスは広告予算をほぼゼロとしている。そのマーケティング戦略の核は「アスリート自身が製品を語る」というものだ。参加者たちは、日々のトレーニングから大会参加、完走までの体験を自身のソーシャルメディアで自発的に発信し、これが最も強力な広告となっている。何千万人ものフォロワーを持つインフルエンサーよりも、実際にスポーツを愛し、打ち込む「オーガニックな」アンバサダーたちこそが、より信頼性の高い口コミを生み出している。収益構造は、全体の60〜70%を占めるチケット販売が柱である。残りはスポンサーシップ、ジム会員費用、物販で賄い、広告費をかけずに健全なビジネスモデルを構築している。
Q. なぜハイロックスは「ライフスタイル」と呼べるほど参加者の生活に深く根付いているのか?
ハイロックスは単なる競技イベントではなく、参加者の生活全体を包括する「ライフスタイル」となっている。パートナーシップを結んだジムをトレーニングの拠点とし、共に練習する仲間とのコミュニティ形成を促す。参加者は早朝のトレーニング、特定のシューズやプロテイン摂取、さらには「レースケーション」として休暇先を選ぶまで、日常のあらゆる選択をハイロックスに同期させる。競技を通じて目標を持つことは、食生活の改善や早寝早起きなど、健全な生活習慣への移行を促し、身体的・精神的な健康向上に寄与する。義務感からではなく、心から愛するスポーツが生活の一部となり、自己成長を続けるための大きなモチベーションを生み出すことで、熱狂的な支持と定着を実現しているのだ。