
日本人プレミアリーガー10人の新シーズンを展望
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2026年8月23日
8月22日に開幕するプレミアリーグ。アーセナルは連覇するのか?日本人選手10人は活躍できるのか?レギュラーメンバーに展望してもらった。 <ゲスト> 木崎伸也|スポーツライター 1975年、東京都生まれ。2002年夏にオランダへ移住。翌2003年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材。スポーツ...
プレミアリーグ新シーズン:日本人選手の期待と課題とは?
世界のトップリーグ、プレミアリーグには今季も多くの日本人選手が挑戦する。新天地で定着を目指す選手がいれば、既存のトッププレイヤーたちは怪我からの完全復活を期すなど、その境遇は様々だ。新シーズン、彼らがどのような活躍を見せるのか、専門家の見解を交えながら深掘りする。

Q. 新天地アストン・ヴィラで鈴木彩艶はプレミアリーグの舞台に立てるのか?
鈴木彩艶のアストン・ヴィラへの移籍は、今季最も注目される動向の一つである。当初レギュラーの座は厳しいと見られていたが、正守護神マルティネスの負傷離脱と、エメリ監督からの高い評価が重なり、開幕から出場する可能性が浮上している。アジアカップによる一時離脱という懸念点はあるものの、指揮官の期待は絶大である。

アストン・ヴィラのサッカーと鈴木のプレースタイルは高い親和性がある。特に相手チームがハイプレスを仕掛けてきた際、鈴木の長所である高精度なキックと飛距離は、アストン・ヴィラのビルドアップに大きく貢献する。これにより、相手の守備を容易にひっくり返すことができるため、戦術上非常に重要な存在となる。エメリ監督は自ら獲得した選手を育てることに長けている監督だ。厳しさもあるが、それは選手を次のステップへ押し上げる意図の現れでもある。イタリアのパルマ時代には苦戦した「つなぐサッカー」が、アストン・ヴィラで真に開花する土壌があるだろう。また、鈴木が大きなミスを犯してもすぐに立ち直れるメンタルの強さも高く評価されている。プレミア特有の激しいフィジカルコンタクト、特にハイボール処理への対応が新たな課題となるだろうが、彼の適応能力に期待は大きい。
Q. クリスタル・パレスで共闘する冨安健洋と鎌田大地の新シーズンはどうなるか?
冨安健洋にとって、クリスタル・パレスへの移籍は理にかなった選択である。彼が望むセンターバックでの起用が前提であり、3バックを多用するパレスでは出場機会が得やすい。現時点ではリアドの準レギュラーと目されているが、経験豊富な冨安が怪我なくシーズンを過ごせれば、主力定着も十分可能だ。守備の要として、若いチームメイトを動かす戦術眼も評価されている。

一方、鎌田大地も同じくクリスタル・パレスに加入。だが、鎌田の最大の懸念点は監督との関係性だ。フランクフルト時代のグラスナー監督とは絶大な信頼関係を築いていたが、新監督サージュの下でその関係をゼロから再構築しなければならない。サージュ監督は前任者と似た3-4-2-1システムを採用するものの、プレシーズンでの守備の強度がやや不安視されている。加えて、パレスの補強が例年遅れがちなため、戦力整備の面でも遅れが生じており、今季はチームが下位に沈む可能性も指摘されている。日本代表も4バックへの転換を模索しており、パレスでの2人の活躍が代表の強化に直結するかは未知数である。
Q. 昇格組の新たな日本人戦士たち、前田大然、守田英正、坂元達裕は活躍できるのか?
前田大然は昇格組のイプスウィッチで既にレギュラーの座を掴んでいる。彼の持ち味である献身的なプレッシングと、鬼のような裏抜けのスピードは、チームのカウンター戦術に完全に合致する。チームが過度にボールポゼッションに固執せず、引いて守ってからの速攻に徹すれば、残留の可能性は高いだろう。ウイングのポジションだが、シーズンで5から8ゴールを奪うことができれば、プレミアでの評価も高まるはずだ。
守田英正はメディカルチェック不合格でイプスウィッチ移籍が頓挫したが、ハル・シティへ加入。怪我さえ完治すれば、破格の待遇で迎え入れられたことからレギュラーは確実視される。スポーティングCPという名門での経験と、パスワークのセンス、さらに空中戦と対人守備の強さを併せ持つ彼は、最下位候補のチームにおいて「戦術的マエストロ」として中盤を牽引するだろう。
坂元達裕はコベントリーに所属し、現状では準レギュラー扱いだが、十分に出場機会を得られるだろう。右サイドを主戦場とし、得意の左足から繰り出す鋭いドリブル突破とカットインからのシュートが魅力だ。守備への貢献度も高く、ランパード監督が重視する「強度」に合致する。彼のプレースタイルは日本代表が欲する逆足ウイングのピースとなり、アジアカップ招集の可能性も十分に秘めている。これらの昇格組の選手たちがどれだけ個性を発揮し、チームを残留に導けるかが見どころとなる。
Q. 日本人トッププレーヤー三笘薫、遠藤航は怪我から復活し、本来の輝きを取り戻せるのか?
三笘薫の現状は厳しい。腰の負傷(ヘルニアとの噂)は予想以上に深刻で、既に身体全体のバランスに影響が出ていると指摘される。かつての爆発的な走りが「辛そうに見える」状態であり、肉体的なピークを過ぎた可能性すら示唆されている。ブライトンも売却の好機を逃し、クラブ側にも選手側にも誤算が生じている。ヒュルツェラー監督が10月から11月、あるいは年内の復帰は難しいと示唆していることから、長期的なリハビリが必要となるだろう。焦らず、完全にコンディションを整えることが彼の将来にとって不可欠だ。

遠藤航もまた、深刻な負傷と闘っている。足の指の間の靭帯断裂という難治性の怪我で、人工靭帯を挿入してプレーを続けている。これはファン・ダイクでさえ痛みを抱えている部位であり、完治は極めて難しいと見られている。ワールドカップの際にはベストコンディションではなかったと指摘され、リバプールや日本代表で再び信頼を取り戻すためには、この痛みをいかにマネジメントし、パフォーマンスを維持するかが鍵となる。監督からの信頼を再構築し、チームの重要な一員としての地位を確立できるか、厳しい戦いが続く。
Q. 田中碧、高井幸大の現状と、中村敬斗の移籍問題の深層とは?
田中碧はリーズでサポーターからの高い支持を得ているものの、ファルケ監督が「本来使いたいタイプではない」と感じている側面がある。ファルケ監督は繋ぐサッカーを好むが、現実的な戦術(5バックなど)へ移行した場合、中盤の枠が減り、田中がベンチを温める「便利屋」となる可能性が高い。現状以上の成長を望むなら移籍が最善だが、リーズ以上のレベルで、かつ活躍が期待できる新天地を見極めるのは難しい判断となるだろう。
高井幸大はトッテナムのセンターバックで現在5番手の序列に甘んじている。プレシーズンでも出場機会を得られず、プレミアリーグの高い壁を感じている状況だ。足元の技術は評価されるが、対人デュエルにおける信頼性や、守備の危機管理能力(先回りコーチングの苦手さ)に課題がある。現在のトッテナムで経験を積むよりも、ボール保持を志向する他のチームへレンタル移籍し、プレミアのスピードやフィジカルに適応することが、今後のキャリアにとって重要である。
中村敬斗のプレミアリーグ移籍が難航している最大の要因は、所属クラブであるスタッド・ランスの高額な移籍金設定にある。クラブは財政的に困窮しておらず、むしろ中村を残留させてリーグ昇格の切り札としたい意向があるため、市場価格を大きく上回る金額を設定している。さらに中村本人も、過去の経験から安易な移籍で選手生命を縮めることを警戒しており、自身のプレースタイルと将来に見合った移籍先を慎重に選ぼうとしている。代理人のフランス市場への偏重も一因として挙げられ、現状では膠着状態が続きそうだ。
Q. 今季プレミアリーグ全体の日本人選手の立ち位置と見どころはどう変化するのか?
今季のプレミアリーグは、全体として「日本人選手の顔ぶれは増えたものの、地味なシーズンになる」という見方も強い。かつて遠藤航や冨安健洋のように、絶対的なビッグクラブで毎週レギュラーとして活躍する選手が少なくなっているためだ。多くの日本人選手が、自らのチームを牽引し、個の力で勝ち抜くことが求められる。鈴木彩艶がどこまで世界のトップストライカーたちを相手にゴールを死守できるか、そして昇格組の選手たちが泥臭くチームを支えることができるかが、個別の見どころとなるだろう。
リーグ全体としては、移籍金インフレが異常なレベルに達している。中堅クラスの選手でさえ、数千万ポンドという巨額の移籍金が発生しており、日本の円安も相まってその高騰ぶりは著しい。この異常な市場状況は、日本人選手がさらにステップアップする際の大きな障壁となるだろう。アーセナルの絶対王者化の過程や、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッドがどのようにリーグ上位に食い込むかなど、日本人選手以外の部分での見どころは非常に多い。総じて予測不可能な、激動のシーズンになることは間違いないだろう。
