PIVOT CAREER
ベンチャーキャピタリストのキャリアパス
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2026年8月11日

VCで経験を積んだ後、次なるキャリアとして何を選ぶべきか。起業家への転身、スタートアップのCXO、あるいは独立系VCの立ち上げなど、選択肢は多様化している。VCという職業をステップボードにするための戦略とは何か?ユーザベースでの新規事業立ち上げを経て独立したファーストライトキャピタルの岩澤脩氏に聞い...
ベンチャーキャピタリストになるには? 求められる意外な素養とキャリアパス
ベンチャーキャピタリストという職業は、一般的な認知度が高まりつつある一方で、その実態については謎が多いままだ。どのようなバックグラウンドがあれば有利なのか、具体的なキャリアパスはどう描けるのか、そして仕事の醍醐味は何か。本稿では、第一線で活躍するキャピタリストの見解に基づき、VC業界で求められる素養からキャリア戦略、その仕事の深い魅力までをQ&A形式で深掘りする。

Q. どのような人物がベンチャーキャピタリストになれるのか?
ベンチャーキャピタリストに求められるバックグラウンドとして、しばしば金融機関やコンサルティングファーム出身者が挙げられる。彼らは企業評価やデューデリジェンスのスキルを持つため、VC業務への適応が早い。しかし、形式的な経歴は重要視されないケースも多い。
それよりも重視されるのは、特定の領域で徹底的に好奇心を追求し、突き抜けた経験があるかという点である。たとえプロのバレエダンサーといった一見VCとは無関係に見えるキャリアであっても、その情熱と専門性が評価される。学歴や過去に働いた会社の知名度以上に、個人の深い探求心と独自の経験が成功への鍵を握ると言えよう。
Q. ジュニアキャピタリストに具体的にどのようなスキルが求められるのか?
多くのVCでは、特に20代半ばのジュニアキャピタリストを「経験不問」で募集する事例が増えている。これは、社内で蓄積された投資判断の「型」やデューデリジェンスの教育フローが確立されているためだ。入社後、実務を通じてスキルを習得できる環境が整っているVCでは、ポテンシャルを重視した採用が行われる。
ただし、基本的な調査能力や分析力は必須である。例えば、Excelを使ってデータを分析できる能力は求められる。そうした基礎スキルがあれば、多様なバックグラウンドを持つ人材でもチームに加わり、成長していける余地は大きい。VCの組織規模は多様であり、100名以上の大規模なVCから、FirstLightのような10名未満の少数精鋭チームまで存在し、それぞれが異なる働き方を提供する。
Q. ベンチャーキャピタリストのキャリアパスと出口戦略にはどのようなものがあるか?
ベンチャーキャピタリストとしてのキャリアパスは主に二つある。一つは、ジュニアから副担当、主担当へと経験を積み重ね、最終的にファンド全体を主導するゼネラルパートナー(GP)を目指す道だ。もう一つは、2〜3年の実務経験を経て、スタートアップのCXO(最高経営層)や起業家に転身する道である。VCの仕事を通じて投資家視点やビジネスの「手触り感」を学ぶことは、起業家としての成功を早めるショートカットとなり得る。
特に、後者のパスを志す場合、VCに参画する際に「2年間」といった明確な期限を定めて取り組むことが推奨される。投資案件との付き合いは5年、10年と長期に及ぶため、計画的に次のステップへ進むための出口戦略を持つことが重要だ。アメリカでは、VC内で給与を得ながら起業準備ができる「アントレプレナー・イン・レジデンス(EIR)」制度が既にあり、VC自身も優秀な人材が起業家として巣立つことを積極的に支援している。これは、新産業を創出するためのエコシステムとして機能しており、踏み台とみなされることなく歓迎されるキャリアの一形態である。
Q. VCを選ぶ際の判断基準には何があるか?
どの投資フェーズ(シード、アーリー、ミドル、レイターなど)の企業に投資しているか
どのような領域(AI、ディープテックなど)に特化しているか
投資先企業への関わり方(ハンズオン:深く関与、ハンズイフ:状況に応じて関与、ハンズオフ:あまり関与しない)
VCと一口に言っても、その事業方針は大きく異なるため、自分の関心やキャリア目標に合致するVCを選ぶことが肝要だ。これら3つの軸に基づき、VCが何に強みを持つのか、どのようなスタイルで投資活動を行っているのかを深く理解する必要がある。現在、東証グロース改革の影響でIPOのハードルが上がり、VCへのLP出資が減少し始めている。そのため、新たなVCを立ち上げるのは困難な状況にあるが、個々人がVCを選ぶ際には、将来性も踏まえた見極めが求められる。

Q. 良いベンチャーキャピタルを見極めるポイントとは何か?
良いVCを見極める上では、まず「LP(Limited Partner)や投資先双方から信頼され、継続的にファンドレイズを成功させているか」という点が重要である。これは、VCが健全に事業を継続できているかを示す基本的な指標だ。そして、もう一つ、VCの大先輩が語った「良いVCの条件」として、「世代交代をし続けられるベンチャーキャピタルであること」が挙げられる。ファンドマネージャーであるGP(General Partner)が交代し、若い世代にバトンタッチできる仕組みを持つVCこそが、持続的に成長できると評価できるだろう。
VCの世界では、一般的な企業のように半年に一度といった頻度での人事異動や昇進は稀だ。新しいファンドが立ち上がる約4年に一度のサイクルで、大きなプロモーションやGPへの登用が行われることが多い。そのため、次の世代のGPを育成し、引き継ぐサクセッションプランを明確に描けるかどうかが、経営陣の腕の見せ所となる。この視点を持つことで、長期的な視点で信頼できるVCかどうかを見極められるのだ。

Q. ベンチャーキャピタリストの仕事の最大のやりがいはどこにあるか?
ベンチャーキャピタリストのやりがいは、他の金融業とは一線を画す。ヘッジファンドやバイアウトファンドのように短期的な金銭的リターンを追求するのではなく、VC投資は通常10年以上の長いスパンで行われる。その最大の魅力は、「何者でもない一人の起業家が大経営者に成長する過程を一番近くで見届け、新産業の夜明けに立ち会えること」にある。金銭的なリターンも重要だが、それ以上に「産業を創る」という職人的なプライドと倫理観が彼らを動機づけるのだ。
キャピタリストは、起業家の「学校の先生」のような存在でもある。多感な時期の起業家に寄り添い、時には厳しい忠告でぶつかることもある。しかし、企業が大きく成長した時に「あの時、あの先生がいたから今の自分がある」と心から感謝される経験こそが、金銭的価値では測れないVCならではの報酬である。投資家とイストという呼称の違いが示す通り、VCは単なる資金提供者ではなく、新産業の創造というミッションを背負った専門家集団なのである。