
マスキズム vs 暗黒社会主義/日本語吹き替えバージョン
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2026年8月14日
20世紀のフォーディズムから21世紀のマスキズムへ。労働者への還元なき富の独占と、火星移住計画に隠された地球放棄の思想とは何か。テック企業による新たな独占の構造と対抗策を、クィン・スロボディアン氏とベン・ターノフ氏に徹底解説してもらった。 <MC> 斎藤幸平|東京大学准教授 経済思想家であり、哲学...
「マスキズム」とは何か?イーロン・マスクが変革する資本主義の光と影
現代社会は、テクノロジーの急速な発展により大きく変容している。その象徴的存在であるイーロン・マスクの言動を深く分析し、「マスキズム」という新たな概念がどのように資本主義や民主主義、そして我々の未来に影響を与えるのかを問う。
本書『マスキズム 新たな独占の時代』の著者であるクィン・スロボディアン氏とベン・ターノフ氏へのインタビューを基に、この概念の本質と課題を探求する。



Q. マスキズムとは具体的に何か?
マスキズムとはテクノロジーを介した自律的な主権を約束するものであり、「サイボーグ保守主義」とも称される。
それは少数の独占的なテック企業と各国の政府が深く関係し合う共生関係であり、結果として多くの人々のそれら企業への依存度を高めていく。
政治的な熟議よりもオンライン上の感情的模倣によって動員される、新たな政治主体の形成が特徴である。
Q. なぜイーロン・マスクがマスキズムの象徴とされるのか?
イーロン・マスクがこの概念の象徴である理由は、その途方もない富と権力の規模にある。
彼は地球上で最も裕福な人物であり、将来的に史上初の「兆万長者」となる可能性すらある。
また、ウクライナ紛争でのスターリンク活用のように、軍事通信網を左右することで地政学的状況を変える力を持つ。
彼の事業は現代の様々な政治経済・文化的な発展を集約したものであり、彼個人が現代資本主義の動向を物語る最も強力なストーリーテラーと言えるためである。
Q. テック企業と国家の関係はどのような「悪魔の取引」をもたらすのか?
テック企業は反国家主義的なイメージを持たれることが多い。
しかし実際には、無料のGPS、連邦預金保険、多額の政府融資や国防総省からの軍事契約など、国家システムと補助金に依存して成長してきた歴史がある。
国家はコスト削減や効率化のため民間企業にサービスを委託することで能力を拡大するが、それは私企業の都合に国家の重要機能を支配される「悪魔の取引」でもある。
この関係性によって非公職の独占企業主が実質的な拒否権を持つリスクが生じている。
Q. マスキズムは「進歩」と言えるのか?従来の資本主義とどう異なるのか?

電気自動車による脱炭素化や僻地での通信インフラ確保など、マスクの事業には社会的に有益な側面も確かに存在した。
しかし、彼の事業の最近の展開は、富や社会保障が分配され、人々の生活向上が約束されるフォーディズム的な社会契約とはかけ離れたものだ。
彼は「異人種による侵略」といった言葉を用いて社会対立を扇動し、一部の選ばれた者のみが救済される要塞型社会を指向している。
その政治思想はアパルトヘイト時代に通じる排外主義を内包すると指摘する声もある。
Q. 気候危機時代においてマスキズムはどのような「適応」を提示しているのか?
現在の気候危機下において、マスキズムは地球を救うことを放棄した、エリートのための「資本主義的適応」を提示している。
火星移住計画はその究極的なビジョンだが、これは地球上で気候大災害に適応するための一形態だ。
例えばサイバートラックは単なるエコカーではなく、予期せぬリスクや異常気象に備える「武装要塞」として売られている。
つまり、一般社会全体の繁栄ではなく、不確実な未来に少数の人々が生き残るための「入場料」を販売している状況である。
Q. テクノファシズムを防ぐための対抗策はあるのか?
古典的なファシズムが大衆を巻き込む全体主義運動だったのに対し、現代のテクノファシズムは個に分断された人々がオンラインネットワークを通じて模倣し連帯する形態を取る。
しかし、テクノロジーは中立的な存在ではなく、常に政治的闘争の結果によってその利用目的が決定される。
そのため、独占企業の手に集中した技術を民主的に活用し直す可能性はある。
Facebookマーケットプレイスに見られるような非商品化された分散型ネットワークを通じた、コミュニティベースの交流がそのヒントとなる。
アメリカのデータセンター建設への地域住民の反発は、新たな政治的闘争の具体例だ。
Q. 日本や個々人がマスキズム時代をどう生きるべきか?
日本社会もいずれアメリカ社会で起きているようなマスキズムの影響を受ける可能性が高い。
そのような時代における最善の「生存戦略」は、単にテクノロジーを再考・民主化するだけに留まらない。
教育や製造業、医療研究といったテクノロジーの外側に存在する「非テック」分野の社会的価値と重要性を再認識し、多角的な政治経済の形成に注力すべきだ。
また、技術が自動的にすべてを解決するという救済論的思考を排し、地域コミュニティにおける対面での地道な関係構築こそが、民主主義を回復させる重要なステップとなるだろう。
私たちはデジタル技術の恩恵を受けつつも、人間的なコミュニケーションの重要性を決して忘れてはならない。
