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【建設業参入のリアル】 RIZAPがホワイトカラー500人を職人へ転向
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2026年7月30日

今年4月、RIZAPグループは建設業への本格参入を発表。グループ内のホワイトカラー人材500人を職人へ転向する。実際に転向した社員の研修現場を直撃取材した <目次> 00:01 ダイジェスト 00:57 ホワイトカラーから現場職への転職 03:44 ライザップ建設業参入の狙い 09:22 異動・転...
ライザップ参入で揺れる建設業界の労働移動:新3Kとホワイトカラーからブルーカラーへの挑戦
人手不足が深刻化する日本社会において、労働移動の円滑化は喫緊の課題となっている。特に、ホワイトカラーからブルーカラーへの職種転換は政府も推進する一方、多くの課題も指摘されている。
そんな中、フィットネス業界で急成長を遂げたライザップグループが建設業に参入し、既存のホワイトカラー従業員を職人へとリスキリングする挑戦が注目を集めている。この動きは、日本社会における労働移動のリアルと、その裏に潜む課題を浮き彫りにする。
本稿では、この画期的な試みを事例に、労働市場の構造変化、現場の教育体制、そしてブルーカラーの仕事が持つ本来の価値と偏見、さらには持続可能な社会実現に向けた展望をQ&A形式で深く掘り下げる。

Q. なぜ異業種からの建設業参入、特にライザップの動きが注目されるのか?
ライザップグループが2023年4月に建設業に参入したことは、業界内で大きな話題を呼んだ。同社はチョコザップなど、世界記録的な年間1,020店舗の出店数を誇るノウハウを持つ。この出店過程で、建設コストの高騰や工事遅延といった発注側の課題に直面してきた。
自らが抱えた課題を解決する立場として、培ったノウハウを他社支援へと展開。建設事業への参入を決めたのが大きな理由である。
この動きの最大の特徴は、単なる参入に留まらない点にある。ライザップはグループ内のホワイトカラー職約500人を建設技能職へとリスキリングする計画を発表。これは従来の外部業者への依存から脱却し、職人を直接雇用することで、施工の安定性と適正価格の実現を目指すものである。
同時に、従来の「きつい、汚い、危険」という建設業の3Kイメージに対し、「健康、快活、Qアップ(Qualityアップ)」という新たな「新3K」を提唱。労働環境の改善と職人一人ひとりのモチベーション向上を図る挑戦である。

Q. 労働力移行が進む中で、ホワイトカラーから現場職へ移る人々の現状はどうなっているか?
ブルーカラーの現場職に従事する人々の出自に関するデータを見ると、多様な背景が浮かび上がる。最も多いのは「他の現場職からの転職」で45%、次いで「新卒」が約30%を占める。
注目すべきは、「ホワイトカラー職からの転職」が約20%いる点である。これは、およそ5人に1人が事務職などから現場職へと転じている実態を示している。
しかし、日本全体の転職者数は年間約400万人程度と限定的だ。労働移動の最も一般的な形態は、転職ではなく「企業内異動」であると指摘される。人手不足の現場では、バス会社の総務がドライバーに、あるいはホワイトカラー職の定年後の再雇用先がトラックドライバーになるなど、社内での配置転換を通じて職種変更がなされるケースが多数存在している。
ライザップの事例もこの流れに乗るものであり、企業が従業員のキャリアを再設計する「リスキリング」が人手不足解消の重要な鍵となっている。
Q. 現場での人材育成において、どのような課題と変化が起きているか?
建設現場における人材育成は、長らく「背中を見て学べ」という慣習に頼ってきた側面が強い。
しかし、ライザップのように全くの未経験者を多数受け入れる現状では、この指導法はもはや通用しない。
番組の取材に応じた指導員は、経験豊富な先輩が年長の未経験者を教える際、「これやっとけ」のような威圧的な口調では相手の自尊心を傷つけるだけでなく、技術が伝わらないことを示唆。若手指導員であっても、体格差を考慮した個別指導や、技術を論理的に言語化して伝える重要性を語っている。
「教え方次第で未経験者でも3ヶ月で戦力になる」という指導員の言葉は、教育体制の変革が人材育成の鍵となることを示す。従来の職人気質な指導法から脱却し、個々人に寄り添った丁寧な指導こそが、現代の現場に必要なアプローチとなっている。この変化は、建設業における人材の多様化と、それに対応する教育の柔軟性が求められる時代の到来を告げるものであろう。

Q. 実際に職種転換した人々はどのようなリアルな感情を抱いているのか?
ホワイトカラー職から建設現場へと異動した当事者の声は、戸惑いと発見が入り混じるリアルな感情を物語る。ある異動者は、「すごくびっくりした」「できるか不安だった」「体力的にきつい」と率直な感想を述べている。冷房の効いたオフィス環境から、屋外での作業が多い現場への変化は、想像以上の身体的負担を伴うようだ。
一方で、ネガティブな感情ばかりではない。「新しいことなので学べる」「壁ができていくのを見ると楽しい」「成長を実感できる」など、ものづくりの楽しさや達成感、自身の成長を前向きに捉える声も聞かれる。これまで全く経験したことのない分野に足を踏み入れたからこその、新鮮な感動ややりがいを感じ始めている様子がうかがえる。
しかし、厳しい現実も存在する。異動後も元の職種の給与や勤務条件が維持されているため、体力的に過酷な業務に見合った待遇変更がない。これは「健康、快活、Qアップ」を掲げる「新3K」の中の一つであるQアップ(給与アップ)にも関わる大きな課題であり、労働に見合った対価と福利厚生の整備が今後の鍵となるだろう。

Q. 労働移動を阻む要因と、ブルーカラーに対する潜在的な偏見には何があるのか?
政府が「労働移動」を促進する一方で、実際には労働移動がなかなか進まない現実がある。全労働者に占める労働移動の割合はわずか1%程度に過ぎず、その内訳も現場職と事務職の間でバランスが取れているのが実態である。
この停滞の背景には複数の要因が考えられる。
第一に、職種を劇的に変えることの非日常性。異なる分野でゼロから学ぶ「リスキリング」期間は精神的な負担が大きく、この苦しい期間を支える社会的なケアが不足している。第二に、ブルーカラーに対する無意識の偏見だ。
番組出演者が「AIに仕事を奪われたホワイトカラーがブルーカラーの仕事を奪うのか」と指摘する点、また「今の仕事に失敗した時の保険として大型免許を取った」という発言は、ブルーカラーを下に見る社会的なバイアスが根深く存在することを示す。
この偏見は、江戸時代の「職人」と「番頭」が対等であった社会から、明治維新以降の近代化の中で、職人が周辺的な労働力として位置づけられ、下請け構造と共に定着していった歴史的な経緯を持つと指摘される。本来、尊重されるべき技術や創造性が、近代の価値観によって軽視されてきた側面があるだろう。
Q. ブルーカラーの仕事が持つ本来の魅力とは何か?
ブルーカラーの仕事には、ホワイトカラーにはない独自の本質的魅力が数多く存在する。
第一に、「形として残る仕事」であるという達成感。自らの手で壁や建物を造り上げ、それが何十年も街の景観として残り続ける経験は、深い満足感を生む。異動者が語った「壁ができていく様を見ると楽しい」という言葉がその好例である。
第二に、地域社会への貢献と密着性。ブルーカラーの企業の多くは地域密着型であり、地域イベントへの参加やインフラ整備を通じて、住民からの感謝を直接肌で感じることができる。これは地域の一員として、社会に不可欠な役割を担っているという誇りに繋がる。
かつては「柄の悪い仕事」と思われがちであったが、近年は「ニッカポッカ」のような作業服がデザイン性を取り入れたり、「ワークマン」ブームが起きたりするなど、イメージ刷新の動きも見られる。
AIが高度化する中でも「ものづくりは人間の力でしかできない」という信念のもと、ブルーカラーの仕事の価値は再評価されるべき時が来ているだろう。
Q. 「普通に頑張れば普通に稼げる」社会の実現に向け、どのような取り組みが必要か?
月に数百万円稼ぐ「スター職人」のような存在も素晴らしいが、真に目指すべきは、普通に頑張る人が普通に働けば、きちんと生活できるだけの収入を得られる社会の実現である。そのためには、いくつかの視点からの変革が必要不可欠となる。
一つは、搾取構造の排除と適正な賃金体系の確立。下請け、孫請け構造の中で中間搾取されがちな実態を改善し、末端で汗を流す労働者に正当な対価が支払われるよう、企業と社会全体での意識改革が求められる。
二つ目は、労働環境の継続的な改善。ライザップの「新3K」のように、健康や快活さに配慮した職場環境の提供は、新たな人材を呼び込み、定着させる上で不可欠である。
人手不足が自動的に待遇改善に繋がるわけではない。優良な労働環境を率先して提供し、適切な賃金体系を構築する挑戦的な企業を社会全体で応援し、こうした企業の取り組みがモデルとなる循環を生み出すことが重要である。
私たちは、今現場で何が起こっているのか、どのような課題を抱えているのかに関心を持ち、積極的に議論に参加することが、未来の働き方、社会全体をより良くするための第一歩となるだろう。