
AI覇権は"日韓台"の時代へ?【ソ・ジェヒョン】
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2026年7月20日
ChatGPTは昨日の会話を忘れる。この"欠点"こそが、半導体市場の主戦場を「演算」から「記憶」へ動かしている。なぜキオクシア株は一時、急騰したのか。NVIDIA一強の食物連鎖はどこへ向かい、半導体株は今からでも遅くないのか。韓国最大手「未来アセット運用」で1.3兆円を運用した伝説のファンドマネージ...
AI覇権は日本・韓国・台湾が握る 1.3兆円投資家が語るAI半導体エコシステムの変革と未来の投資戦略
人工知能(AI)は産業構造に未曾有の変革をもたらしている。その覇権が従来の米国のビッグテック企業だけでなく、ハードウェアを供給する日本、韓国、台湾といったアジアの国々に移りつつある事実は、投資家にとって新たな視点をもたらすだろう。
運用実績1.3兆円を誇る韓国の伝説的ファンドマネージャー、ソ・ジェヒョン氏は、このAI革命の「地殻変動」と未来の投資戦略について深い洞察を提供する。彼の知見は、半導体エコシステムの全体像を理解し、今後の投資機会を探る上で極めて重要である。
本稿では、ソ氏の投資哲学から始まり、NAND型メモリの台頭、NVIDIAを中心とした半導体サプライチェーン、さらには韓国株の割安感と個人投資家が取り得る実践的な戦略まで、多岐にわたるトピックを深掘りしていく。
Q. 運用実績1.3兆円を誇る伝説的投資家とはどのような人物か?
ソ・ジェヒョン氏は、韓国最大手の資産運用会社「未来アセット運用」の元投資運用本部長、また「テシンアセットマネジメント」の元代表取締役社長を務めた輝かしい経歴の持ち主だ。ファンドマネージャー時代には1.3兆円もの資産を運用し、7年間にわたる担当期間中にファンド収益率が1000%を超えるという驚異的な実績を打ち立てた。
彼の投資哲学は一貫しており、「世の中の変化が株価を作る」というものだ。かつては京都議定書の採択による気候変動や、中国のインフラ投資サイクルに注目して成功を収めた。現在は、産業革命の10倍の規模と速度で進むAI関連技術を投資ターゲットの中心に据えている。その根底には、「嘘をつかない」「知ったかぶりをしない」「自らの利益のために市場を惑わさない」という強い倫理的信念がある。ソ氏は、自らを儲けさせることだけでなく、投資教育を通じて一般市民の生活レベルを向上させることを自らの使命と捉え、累計18万人もの受講生を抱える金融教育学校を運営し、約9割の異例の再登録率を誇っている。
Q. AI市場の変化がNAND型メモリの需要をなぜ高めているのか?
AI市場は現在、膨大なデータを入力し知識を蓄積する「学習」フェーズから、自律的にユーザーを理解し行動を代行する「推論」や「エージェント」フェーズへと移行しつつある。
AIエージェントの出現により、半導体に求められる仕様は根本的に変化した。AIがユーザーの過去の行動履歴や指示を記憶し続け、例えば旅行の手配を自律的に行うような高度なサービスを提供するには、その情報を持続的に保存する機能が不可欠だ。ChatGPTが前日の質問を記憶しない現状を考えると、いかに「記憶」が重要であるかがわかるだろう。
ここで必要となるのがNAND型フラッシュメモリである。これは、電源が切れてもデータが保持される「不揮発性」の特性を持つメモリだ。従来のDRAM(電源供給が途絶えるとデータが消える揮発性メモリ)はAIの「学習」に重要であったが、「推論」や「エージェント」が本格化するにつれて、電源オフ時でもデータを維持できるNANDの需要が劇的に増加している。日本が誇るキオクシア株の急騰も、このAIエージェントの開花によるNANDメモリへの需要急増が本質的な追い風となっているからに他ならない。
Q. NVIDIAエコシステムにおける主要企業の役割は?
現在のAI半導体エコシステムは、NVIDIAを中心とした強固な相互補完関係によって成り立っている。NVIDIAは高性能GPUの設計を担い、特に新しい「Vera」シリーズではCPU機能も統合し、設計能力の限界を追求する。
NVIDIAが設計した半導体を実際に製造するのは、台湾のTSMCである。TSMCは「ファウンドリ」と呼ばれる半導体受託製造企業であり、高い製造技術力でNVIDIAを含む世界の半導体企業から信頼を得ている。NVIDIAは彼らから手数料ベースで製品を受け取り、多額の利益を上げている。
そのGPUの性能を最大限に引き出すためには、膨大なデータを高速で処理するDRAMと、永続的に記憶するNANDが必要不可欠となる。DRAMは主に韓国のサムスン電子、SKハイニックス、米国のマイクロン・テクノロジーが寡占している。特にHBM(広帯域メモリ)ではSKハイニックスが約60%という圧倒的なシェアを占める。
一方、永続的な記憶を担うNANDは、日本のキオクシアやサンディスク、そしてサムスン電子、SKハイニックスが主要な供給元だ。また、GPU/CPU間の通信やカスタム半導体(ASIC)の領域では、ブロードコムが強力な地位を築いてきたが、近年はマーベルなどの新たな企業も台頭している。CPUの設計面では、日本のソフトバンクグループ傘下のARM Holdingsが重要な役割を果たしており、NVIDIAのVera CPUにもそのアーキテクチャが採用されている。
このエコシステムは、NVIDIAが製品を多く販売すればするほど、それに必要なTSMCの製造能力、メモリ企業の供給、ARMの技術、そしてブロードコムやマーベルといった周辺チップ企業に至るまで、サプライチェーン全体の企業に利益をもたらす仕組みとなっている。
Q. 日本と韓国の半導体市場に潜む投資チャンスとは?
AI半導体市場において、日本と韓国の企業は特に記憶領域(DRAM/NAND)で世界的に非常に重要な位置を占めている。例えば、日本のキオクシアはNAND型フラッシュメモリの開発製造大手であり、近年その株価は急騰している。
韓国企業はさらに大規模な存在感を示す。NAND市場ではサムスン電子が世界シェア約34%、SKハイニックスが約22%を占め、HBM市場ではSKハイニックスが60%もの圧倒的シェアを持つ。これほどのグローバル競争力と市場優位性を持ちながら、韓国株は「コリア・ディスカウント」と呼ばれる割安な状態にある。その主な原因は、韓国国内の個人投資家が資産の約70%を不動産に集中させ、株式市場への参加が著しく低いことだ。
SKハイニックスの株価収益率(PER)は、来期予想でわずか5倍程度と、国際的に見ても極めて割安な水準にある。サムスン電子は半導体だけでなく家電や通信機器なども手掛ける総合メーカーであり、市場の下落局面ではその多様性が安定感をもたらす。SKハイニックスはHBMにおける先行者優位を背景に、AIブームにおいてはより急速な株価上昇が期待される。
こうした状況に対し、日本と韓国の政府はともに民間資本を株式市場に呼び込む政策を推進している。日本のNISAのような優遇制度は、長期的な安定投資を促進し、個人投資家が国の基幹産業を資金面で下支えする強力な存在となることを期待されている。韓国も同様の政策を取り入れており、これらの取り組みが市場の評価に好影響を与え始めている。
現在の市場動向を見ると、海外の機関投資家は韓国の半導体企業を積極的に買っており、外国人投資家が持つ韓国上場株式の持分は51%を超える。つまり、現地の個人投資家があまり買わない分を、割安と判断した海外勢が買っているのが実態だ。
Q. AI時代の半導体投資において、個人投資家がとるべき戦略とは何か?
AI市場の本格的な成長は2030年から2032年頃まで続くという見通しがあり、長期的な視点での投資が非常に有効だ。この間に地政学リスク、為替変動、貿易関税などによる一時的な価格変動は避けられないが、それは賢明な投資家にとっては仕込みの機会となる。
重要なのは「時間分散」の戦略だ。市場の変動を利用し、例えば今後半年間かけて計画的に少量ずつ買い増していく方法である。一度に多額を投資する「一括購入」はリスクが高く、一時的な高値掴みを避けるためにも避けるべきだ。ソ氏自身も、「私は常に、待てば必ず買い時が来る、だから一度にすべて買わず、時間分散で買うよう教えている」と述べている。
また、NISA(少額投資非課税制度)のような制度を最大限に活用し、税制優遇を受けながら長期的に資産を保有することも効果的な戦略である。成長投資枠などを利用することで、より多くの個人投資家がAI半導体エコシステムがもたらす利益を享受できる可能性がある。