
【キーワード解説】レアアースの基本
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2026年7月16日
ニュースの頻出用語を解説するシリーズ、今回のテーマは「レアアース」。中国の輸出規制などが度々話題に上がるが、そもそもなぜ中国はレアアースを握っているのか。レアアースはなぜ重要なのか、基本を解説する。 <目次> レアアース なぜ中国が支配? 中国のシェア率
現代社会を支える「レアアース」 中国依存の深層と脱却への課題
電気自動車やスマートフォン、先端兵器といった現代社会に不可欠な製品の多くが「レアアース」と呼ばれる特殊な金属に依存している。
過去数年にわたり、中国がその輸出を規制する動きは国際ニュースで頻繁に報じられてきた。この背景には何があるのだろうか。
単なる資源の争奪戦として捉えがちなこの問題だが、その実態を深く掘り下げることで、サプライチェーンの脆弱性や地政学的な駆け引きといった複雑な要因が見えてくる。

Q. レアアースとは何か、また現代社会におけるその重要性とは?
レアアースは、鉄や銅のような一般的な金属とは異なり、地球上の存在量が偏っていたり、精錬が難しい金属を総称する「レアメタル」の一種である。日本語では「希土類」と呼ばれ、スカンジウム、イットリウムを含む17種類の元素を指す。
これらの元素が現代社会で非常に重視される理由は、その特殊な性質にある。
最大の用途は、非常に強力な磁石の製造だ。この高性能な磁石によって、モーターは劇的に小型化され、同時に高い出力を得ることが可能になった。そのため、電気自動車の高性能モーターや、スマートフォンのバイブレーション機能、さらには軍事利用されるミサイルの精密誘導システムなど、幅広い先端技術製品において必要不可欠な存在となっている。
レアアースは、現代社会の発展を推進する「動かす金属」と言っても過言ではないだろう。
Q. レアアースは本当に「レア(希少)」な資源なのか?
その名前が示すイメージに反して、レアアースは地球上に広く分布している。実際、アメリカやオーストラリアなど世界各国に埋蔵されている事実が知られている。
埋蔵量でいえば、中国が世界全体の約5割を占め、首位であることは確かだ。しかし、この数字は、中国がレアアースの「鉱石自体」を独占しているわけではないことを示している。つまり、多くの国に採掘可能なレアアースは存在するのだ。
このことは、単に「量が少ないから希少」という一般的な認識とは異なる。レアアースの本当の課題は、埋蔵量の多寡ではなく、むしろその加工と処理の複雑さに起因するのだ。
Q. なぜ中国はレアアース市場で圧倒的な地位を確立したのか?

中国がレアアース市場で「一強」と呼ばれる理由は、その圧倒的な生産シェアにある。採掘段階では、中国が世界の約7割を占めている。
しかし、真に中国の支配を決定づけているのは、採掘した鉱石から利用可能な金属を取り出す「精錬」プロセスだ。この精錬の過程において、中国のシェアは驚くべきことに世界の9割を超える。
つまり、世界中で掘り出されたレアアースのほとんどが、一度は中国で精錬されてから最終製品へと送られているという実態があるのだ。
中国は単に埋蔵量が多いだけでなく、この精錬プロセスにおける技術と設備、そして低コストでの生産体制を独占的に確立したことにより、国際市場での強固な地位を築き上げてきたのだ。
Q. レアアースの精錬プロセスに潜む課題とは何か?
レアアースの精錬プロセスは、見た目以上に困難で環境負荷が高い。鉱石から目的のレアアース元素を分離・抽出する際、ウランやトリウムといった放射性物質を伴う場合が多く、これらが放射性廃棄物として排出される問題がある。
これらの放射性廃棄物を安全に処理するためには、非常に厳格な環境規制と多額の費用が必要となる。環境保護意識が高く、法規制の厳しい先進国であればあるほど、処理にかかるコストは莫大なものとなるのだ。
歴史的に、中国はこれらの環境コストや処理に伴う負担を、経済成長を優先する中で積極的に引き受けてきた。言い換えれば、他国があまり手を出したがらない「汚れ仕事」を中国が一手に担い、それによって低価格での供給を実現してきた背景がある。
この事実が、中国のレアアース市場における独占的な地位を磐石なものにした主要な要因だと言えるだろう。
Q. 中国からのレアアース依存脱却はなぜ困難なのか?

サプライチェーンの安定化と安全保障上の観点から、世界各国は中国へのレアアース依存から脱却し、供給源の多角化を急いでいる。代替となる採掘場所を探し、新たな鉱山を開発する動きは既に進行中である。
しかし、新たなレアアース鉱山が見つかったとしても、精錬と廃棄物処理の問題が立ちはだかる。精錬工場を建設し、前述のような放射性廃棄物を処理できる技術と体制を確立するには、膨大な投資と時間がかかり、環境負荷を容認できる新たな拠点を見つけることは容易ではない。
たとえ特定の国が採掘量を増やしても、最終的に中国以外の場所で安定的に、かつ環境に配慮した形で精錬を行うことができなければ、「脱中国」は真の意味で達成されたとは言えないのだ。
そのため、今後もレアアースを巡る国際情勢は、単なる資源問題としてではなく、環境、経済、そして地政学的な複雑な要素が絡み合った、重要なキーワードとして世界の注目を集めるだろう。



