
太陽系・未知の第9惑星
太陽系に存在?幻の第9惑星「プラネット・ナイン」と宇宙の神秘
最新の宇宙探査は、私たちを太陽系の遥かな過去へといざない、その成り立ちに関するこれまでの常識を覆すような発見をもたらしている。同時に、地球外のフロンティアを目指す人類の壮大な挑戦は、地球自身の未来にも深く関わる問いを投げかけている。本記事では、最先端の惑星科学が明らかにする太陽系のドラマと、人類が目指す宇宙での新たな社会建設について探究する。

Q. はやぶさ2の探査が明らかにした、太陽系の衝撃的な事実とは何か?
小惑星探査機はやぶさ2は、2020年に小惑星リュウグウのサンプルを持ち帰った。その分析結果は、従来の太陽系形成理論に大きな一石を投じるものだった。リュウグウの物質には、低温環境下でなければ形成されないとされる二酸化炭素やアンモニアなど、揮発性の高い成分が豊富に含まれていたのである。このことは、リュウグウの母天体が、現在想定される位置、すなわち火星と木星の間の小惑星帯で形成されたものではない可能性を示唆した。太陽系のはるか外縁、土星よりも遠い極低温の領域で誕生した天体が、後に太陽系内側に移動してきたと解釈できる内容であった。
また、はやぶさ2とほぼ同時期に、NASAの探査機OSIRIS-RExが小惑星ベンヌから持ち帰ったサンプルからも同様に、現在の軌道からは説明のつかない低温由来の物質が検出されている。これらの複数の探査機による共通した発見は、初期太陽系にこれまでの想定を超える激しい物質の大移動があったことを強く裏付けている。
Q. 45億年前の太陽系で起きたとされる「大動乱」とは具体的にどのようなものか?
複数の探査機の観測結果が示した低温起源の物質の発見は、「太陽系初期の大動乱」、すなわち「惑星大移動説」の説得力を大きく高めた。これは約45億年前の太陽系形成初期に、巨大ガス惑星である木星、土星、天王星、海王星が現在の軌道から大きく移動したという理論である。この惑星の軌道変化が、多くの小惑星や彗星をかき乱し、遠方の氷を含む天体を太陽系内部に運び込んだと説明される。
この大動乱によって、地球へも外縁部から大量の氷を含む天体が衝突し、現在見られるような豊富な水が供給された可能性が指摘されている。本来、地球が形成された軌道上では、太陽に近い暖かさから多くの水が蒸発し、これほどまでの「水の惑星」となることは難しかったはずだ。しかし、この壮大な惑星の大移動があったからこそ、地球に海が形成され、生命の誕生につながったという点で、私たちの存在にも深く関わる歴史的出来事として捉えられている。
Q. 「プラネット・ナイン」とは、いったいどのような天体で、なぜ注目されているのか?

現在「プラネット・ナイン」、すなわち第9の惑星の存在が提唱され、その探索が進められているが、これはかつて第9惑星とされていた冥王星のことではない。冥王星が惑星の定義から外されたのは、海王星の軌道外側にある「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれる領域に、冥王星と同程度の大きさの天体が多数発見されたためである。もし冥王星を惑星とするならば、それら全てを惑星とみなす必要が生じ、体系が複雑になることが理由だった。
一方、ここで言及されているプラネット・ナインは、地球の数倍もの大きさを持つ、天王星や海王星クラスの巨大惑星だと推測されている。この仮想の惑星は、太陽系初期の大動乱の際に、他の巨大惑星の重力の影響で太陽系外縁へと遠く弾き飛ばされ、現在も太陽の重力を受けて非常にゆっくりと公転していると考えられている。もしその存在が確認されれば、太陽系初期に惑星大移動が本当に起きていたことを決定的に裏付ける証拠となるため、惑星科学者から非常に注目されている。
地上からの観測だけでは、その天体の正確な質量や軌道を確定することは困難だが、周辺の小天体の特異な軌道運動が、見えない巨大な天体の影響を示唆している。今後も観測が継続されれば、その姿がより鮮明になる日が来るかもしれない。
Q. 人類はなぜ今、火星移住計画を進めているのか?

現在進められているアルテミス計画は、人類を再び月に送り、さらにその先にある火星への有人探査、ひいては移住を見据えている。この挑戦は単なる技術的な目標に留まらない、より深遠な意義を持っている。地球上にはすでにフロンティアが少なくなり、既存の社会システムや概念の中で限界を迎えているとも言われている状況だ。こうした中、宇宙は人類がゼロから新しい社会を構築し、持続可能な生き方を実験できる唯一の「フロンティア」としての役割を果たす。
例えば、火星に数百人規模のコミュニティや都市を建設すると仮定した場合、そこにどのような経済体制、統治システム、倫理観を導入するのかを人類はゼロから考え、合意形成していくことになる。それは、資本主義か社会主義か、あるいは全く新しい何かなのか。こうした地球のキャパシティが限界に達している中で、いかに人間が「生きるか」という現代地球の喫緊の課題に対し、宇宙での新たな挑戦が示唆を与え、解決策のヒントとなる可能性を秘めていると考えることができる。人類が莫大な予算を投じてまで宇宙を目指すのは、この「ゼロから創造する」価値を求めているからだと言えるだろう。
Q. 火星での社会建設は、具体的にどのような形で実現可能になるのか?
火星は、人類が地球外で新たな社会を構築するための大きなポテンシャルを秘めている。特に注目すべきは、火星の地下に豊富に存在する氷の存在だ。これを資源として利用することで、水を用いた水素エネルギー社会の構築が可能になると考えられている。地球上で推進されている脱炭素技術や、化石燃料に依存しないエネルギーシステムの多くは、燃料が潤沢でない火星の環境においてそのまま適用できると期待されている。
例えば、水から得られる水素燃料を使えば、交通機関や電力供給を賄うことができるだろう。しかし、火星での社会建設は単にエネルギー問題を解決するだけでは実現しない。居住施設をどう建設するか、厳しい放射線環境や低重力の中でどのように健康を維持するかといった、多岐にわたる課題が存在する。これには、建築工学だけでなく、人間の身体に特化した「宇宙医学」やバイオサイエンスといった「人間科学」の発展が不可欠である。これらのハードルを一つ一つ越えていくことが、火星社会実現への道となるだろう。
Q. 今後注目すべき宇宙プロジェクトには何があるか?

数年後、特に注目されるのは、欧州宇宙機関(ESA)が主導する木星の氷衛星探査計画「JUICE(Jupiter ICy moons Explorer)」である。このミッションは、木星のガリレオ衛星であるエウロパ、ガニメデ、カリストなどの地下に存在する可能性のある液体の海や、生命の痕跡を探査することを目的としている。
この壮大なプロジェクトには、日本もセカンドパートナーとして深く関与しており、100名以上の日本人科学者がこのJUICEミッションに参加し、機器開発やデータ解析に貢献している。JUICEは、私たちの太陽系における生命の可能性を探る上で極めて重要な探査となるため、その成果には大きな期待が寄せられている。
