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【速報解説】停戦合意は終わったのか?
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2026年7月9日

アメリカ中央軍によるイランへの大規模攻撃と、トランプ大統領の「停戦合意は終わった」発言を専門家が解説。状況が悪化する中でも、必ずしも再び全面戦争に突入する可能性は高くないという。一体なぜか?中東の安全保障に詳しい溝渕正季教授(明治学院大学)が分析する。 <ゲスト> 溝渕正季|明治学院大学法学部政治...
アメリカ・イラン情勢緊迫化:「終わった」と語るトランプと、ホルムズ海峡の主導権争い
アメリカとイランの間で、再び中東情勢が緊迫している。米国中央軍によるイランへの大規模攻撃の発表に続き、ドナルド・トランプ大統領が「イランとの停戦合意は終わった」と発言し、市場では原油価格が急騰した。
一見すると全面衝突への道のりのように見えるが、両国の内情やこれまでの経緯を紐解くと、そこには複雑な思惑と、短期的ながらも交渉の余地が見えてくる。はたして、今回の危機の本質はどこにあり、今後情勢はどのように展開するのか、専門家への取材を元に多角的に分析する。

Q. 米国とイランの間で何が起きているのか?
まず、最近の状況を時系列で整理する。米国中央軍の発表によると、日本時間7月8日の朝に大規模なイランへの攻撃が行われた。

この作戦は数時間後に完了したと報じられている。攻撃対象はイラン側の防空システムや指揮系統のネットワークなど軍事目標であり、その規模は極めて大きかった。
この軍事行動の理由は、イラン側が最近商業船3隻を攻撃したことへの報復であるとされている。これに対し、同日の午後にはトランプ大統領がイランとの停戦合意について問われ、「終わったと思う」(I think it’s over)と述べた。この発言は直ちに市場に影響を与え、地政学的リスクの高まりから原油価格が一時的に約6%も上昇する事態を招いた。

Q. この状況は全面戦争への序曲なのか?
現状だけを見れば、全面戦争のリスクは高まっているように思える。しかし、専門家の見解では、米国とイラン双方ともに全面戦争は望んでいないのが本音であるという見方が支配的だ。
米国、特にトランプ政権としては、中間選挙を目前に控え、国内でのガソリン価格高騰やそれに伴うインフレを何としてでも避けたい。中東での全面的な紛争は、原油価格をさらに押し上げ、経済的・政治的に大きな打撃となる。一方、イラン側も、米国との全面戦争をこれ以上続けるのではなく、経済を立て直し、外貨獲得のために石油輸出を増やしたいと考えている。つまり、双方に全面戦争を避けたいという強いインセンティブが存在する構造である。
Q. なぜ短期間で停戦合意は瓦解したのか?
背景には、停戦合意自体の構造的な脆弱性がある。特に、両者間にはホルムズ海峡の「自由な航行」に対する解釈に決定的な齟齬があった。イラン側は、海峡を自国のコントロール下に置きつつ、イランと調整することで船舶の自由な航行を認めるという立場であった。しかし、米国側が想定していた「自由な航行」は、紛争以前のように誰もが自由に海峡を通れる状態を指しており、イラン側の介入は一切許容されないものだ。
この根本的な認識のズレが、攻撃と反撃の連鎖を引き起こした最大の要因であり、この曖昧さが構造的な欠陥として機能し、今回の事態を招いたといえる。
Q. トランプ大統領の発言の真意は何なのだろうか?
トランプ大統領の「停戦合意は終わった」という発言は非常に衝撃的であり、原油市場を大きく揺り動かした。しかし、彼の発言の真意や背景には、表層的な意味以上のものがあると専門家は指摘する。彼自身もイラン人は「クズだ」などと激しい言葉を用い、イラン側も合意の終了を認めているものの、トランプ大統領は同時に外交担当者による交渉が続くこと自体は容認する姿勢を示している。
この背景として、NATO首脳会談中に彼が示したNATO加盟国への強い不満が挙げられる。トランプ大統領は、イランのみならず、長らくNATO諸国に対しても積年の不満を抱いていた。今回の「停戦終了」発言は、NATOへの怒りがピークに達する中で飛び出した感情的なものであった可能性が指摘されている。このような「勢いで言っちゃった」側面があるため、数日後には態度を軟化させ、イラン側が交渉再開を熱望していると言い出す可能性も十分にあるという。
Q. イランはなぜ自国に有利な停戦合意を破ったのか?
今回の停戦合意は、イランにとって軍事行動を一時的に停止し、海上封鎖の解除と石油輸出の段階的拡大という多大な経済的メリットをもたらす非常に有利なものであった。しかし、イランはあえてこの有利な合意を破る形で商船を攻撃した。
その最大の動機は、ホルムズ海峡における自国の影響力、すなわち「主導権」の確立にある。攻撃された商船の多くは、イラン側が指定する北側航路ではなく、オマーンに近い南側航路を利用していた。イランは、このオマーン側ルートが慣例化し、国際的な既成事実となることを強く警戒した。自国がホルムズ海峡の通行を管理し、将来的に通行料などを徴収できる立場を確立・維持したいという強い思惑があったからだ。この航路に関する支配力は、イランがこの紛争で獲得した「最大の交渉カード」と認識しているものであり、これを維持するためには、一時的な経済的利益を犠牲にする覚悟があったといえる。

もう一つの要因として、イランが米国の反撃の規模を読み違えた可能性が指摘される。イランは、米国が自国の強硬な行動に対して大規模な軍事報復には出ないと、ある程度の自制を期待していた可能性がある。しかし、今回の米軍による攻撃は、イランの予想を上回る規模であった。さらに、イラン国内では、米国に対してより厳しい態度を求める強硬派の指導部の影響力が増しており、これが商業船攻撃という行動を後押ししたことも考えられる。
Q. 今後、中東情勢の行方をどう読み解けば良いか?
米国とイランが双方とも全面戦争を回避したいという基本的な構造に変わりはないため、いきなり本格的な軍事衝突へと移行する可能性は低い。しかし、ホルムズ海峡での散発的な攻撃や閉鎖といった緊張状態が続く中で、両者による外交交渉も並行して進んでいくと予想される。特に、イラン側が再び交渉を熱望する姿勢を示すことで、情勢が落ち着くことも考えられる。
今後の情勢を注視する上で、最も重要な指標となるのは、ホルムズ海峡を通過する船舶の動向だ。どのルートを、どの程度の船舶が、どれくらいの頻度で通過しているかを継続的に追跡することが、イランの影響力や双方の駆け引きを測る上で決定的な判断材料となる。引き続き、海峡の物流状況から目を離せない。