
インド経済と日印関係の新章<字幕版>
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2026年7月5日
インド経済は今後も高成長が続くのか?日印関係は今後どう発展していくのか?元みずほコーポレート銀行幹部で、現在、インド有数のコングロマリットであるTCGグループのプレジデントを務めるジェレミー・ゴーシュ氏に聞いた。 <ゲスト> ジェレミー・ゴーシュ|TCGグループ プレジデント 投資会社チャタジー・...
TCGゴーシュ氏に聞く、日本とインドのビジネス協創新時代:なぜインド富豪は日本に注目するのか?


Q. 日本の金融機関がインドへ積極的に進出する背景には何があるか?
日本とインドの関係は、今まさに新たな章に入った。複数年前から始まったトレンドは、近年著しく加速しており、これはインド企業にとって日本からの多大な投資を予期させるものである。
両国関係は政府間の協力から始まり、その後は金融機関へと広がり、最終的には日本の法人部門全体へと波及している。
この動きは具体的な形で現れている。例えば、みずほはインドのトップクラスの投資銀行であるAvendusを戦略的に買収した。この事例は、日本の金融機関によるインド市場への本格的な参入を象徴する。
さらに、住友不動産や三井不動産といった日本の大手企業もインドの不動産市場へ大規模な投資を実施し、その影響力は製造業やライフサイエンス分野にも及んでいる。日本企業がインドへの投資を加速する流れは、今後も継続するとみている。
Q. インド市場が投資家にとって特に魅力的な理由とは何か?
インドはG20の中で唯一、年率6~8%のGDP成長が見込まれる国であり、これは少なくとも予見できる将来において、他に類を見ない高成長率を意味する。この強力な経済的ファンダメンタルズが、海外投資家を引きつける最大の理由である。
加えて、インドは圧倒的な「人口ボーナス」期にある。人口の約40%が30歳以下であり、今後10〜20年間にわたりこの強力な人口構成が持続的な内需拡大と経済成長の原動力となる。
労働力と市場規模の両面で、世界の他国に抜きん出たポテンシャルを持つ。日本の優れた「深い科学」の技術、例えば精密医療やロボティクスといった分野と、インドの豊富な「人材プール」が組み合わさることで、両国間には極めて高い補完関係が生まれるのである。
さらに、日本が得意とする気候変動対策、量子センシング、AIを活用した成長分野においても、インドとの連携は多大な相乗効果をもたらす可能性を秘めている。これらが一体となり、日本とインドが互いに協力する強力なインセンティブとなるのだ。
Q. 中東情勢の変化はインドのエネルギー戦略にどのような影響を与えているか?

インドは日本と同様、原油の主要な輸入国であり、この状況は当面変わることはないだろう。従来、インドは中東のGCC諸国、そして近年はロシアからも原油を調達してきた。
しかし、中東の地政学的な変化は、インドのエネルギー戦略にも新たな方向性をもたらしている。特に、UAEはOPECからの離脱を発表しており、これにより日々の原油生産量をより自由に決定できるようになる。この状況は、インドにとってUAEとの緊密な連携を深める機会を提供し、エネルギー調達先の多様化を進める可能性がある。
イラン戦争を契機に、中東地域の伝統的な同盟関係には変化が見られ、UAEがイスラエルと連携を強め、さらにインドとUAEの関係も深まるなど、新たな戦略的クラスターが形成されつつある。これにより、エネルギー安全保障を含む広範な分野での連携強化が見込まれ、各国が未来に向けた戦略的思考をより重視するようになっている。
Q. 日本企業がインドで成功を収めるための鍵は何であるか?
過去、多くの日本企業がインド進出で苦戦を強いられ、多額の損失を出すケースも存在した。しかし、現在の状況は根本的に異なると考える。
現代のインド政府は、以前にも増して成長志向であり、外国からの直接投資(FDI)に対して非常に好意的である。モディ首相は自身の出身地グジャラート州の首長時代から日本との関係を深く築き、安倍元首相とも強い絆があった。この政治的背景が、現在のFDI歓迎姿勢を一層強化している。
具体的には、土地取得、ライセンス供与、税制などの規制面が外資にとって遥かに有利になっている。これらは、日本とインドにとって「黄金時代」の到来を意味する。
日本が抱える課題、特に国内での人材不足とインドの豊富な若年層人材プールは、完璧な補完関係にある。日本の持つ技術力、例えば製造業や革新的科学における専門性と、インドの広大な人材を組み合わせることは、両国に最適な相乗効果をもたらすだろう。
中国からの一時的な転換を経験している中で、インドは製造業やイノベーション科学における真の戦略的パートナーとなり得る。日本企業がこの新たな時代にインドで成功するための鍵は、モディ政権下の「プロ成長」かつ外資歓迎の環境を最大限に活用し、両国の強みを組み合わせる協創の精神を持つことにある。
Q. TCGが提唱する非営利AI研究拠点「CREST」とは、具体的にどのような構想であるか?

TCGグループが構想するAI研究拠点「CREST(Center for Research, Education, Science and Technology)」は、創業者であるチャタジー博士の哲学「知識が生んだ富を、さらなる知識の創造に還元する」に基づいて設立された非営利の研究機関である。
TCGは多岐にわたる事業を展開するプライベート投資会社であり、そのDNAの中心にはAIへの強いコミットメントがある。このCRESTは、その哲学とコミットメントを体現するものだ。
真に社会にインパクトを与える「ディープサイエンス」には、10~20年といった長期的なコミットメントが必要である。営利目的ではこのような長期の研究は難しく、非営利組織として運営することで、目先の利益に囚われずに深く本質的な研究に取り組むことを目指している。
「AIネイティブ」という言葉が示すように、CRESTにおけるあらゆる研究はAIを中核に据え、膨大なデータを解析し、新たなパターンや答えを見出すことに特化している。
CRESTの研究モデルは、従来の大学や企業の研究機関とは一線を画する。Googleが特定の課題に対してPhD人材を投入し、データ科学者を配置して集中的に問題解決を図るようなアプローチを模範としている。
これにより、社会課題に対する発見を加速させ、スケーラブルな速度で実行することを可能にする。インド国内に拠点を構える他、すでに英国での設立準備を進めており、米国、そして日本でのCREST設立も目標としている。教育・研究レベルでの実質的な国際協力を通じ、各国が抱える深遠な社会課題(AI、ロボティクス、長寿、気候変動、津波早期探知など)の解決に貢献していく計画である。
Q. 「CREST Japan」設立に向けて、どのようなパートナーシップを模索しているか?
CREST Japanの設立に向け、TCGは複数のレベルでパートナーシップを積極的に模索している。
ディープサイエンスの研究には「データへのアクセス」が不可欠であり、これは政府機関との協力を最も重要な要素と位置づけている。日本の政府、例えば経済産業省(METI)などとシニアレベルで対話を開始しているのはこのためである。
政府機関に加え、TCGは英国で展開したモデルを日本でも再現するため、志を同じくする慈善財団や超富裕層の個人との連携も検討している。これらの組織や個人のサポートは、非営利の研究活動にとって極めて重要であると考える。
また、日本の教育機関、特に東京周辺の主要な大学との協議も進んでいる。日本における博士号取得者の減少という課題に対し、インドの優秀な博士号学生を招致し、日本の著名な科学者と共に深く研究する提案は、日本の学術界から非常に好意的に受け止められている。これは、日本の学術的ニーズとインドの人材リソースを結びつけるwin-winのモデルとなると期待している。
TCGは、この大きな日印コラボレーションにおいて、微力ながらも日本の発展、そしてインドの成長に貢献したいという強い意向を抱いており、AI研究、教育、科学技術といった幅広い分野で両国の利益となるような貢献を目標とする。
