PIVOT TALK FOOTBALL
【決勝トーナメント展望:オランダ】日本戦で得た教訓。鬼門はPK戦。
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2026年6月29日

6月29日から始まるW杯の決勝トーナメント。優勝候補に挙がる8カ国の強豪チームについて最新分析してもらった。 <ゲスト> ミムラユウスケ|スポーツライター 2006年7月にスポーツライターとしての活動をはじめ、2009年1月にドイツへ渡る。ドイツを中心にヨーロッパで取材。2016年9月22日より、...
ワールドカップで優勝を狙うオランダ代表 グループリーグ総括から決勝トーナメント展望、課題までを徹底分析
FIFAワールドカップにおける強豪国の一角、オランダ代表は、グループリーグを堂々たる成績で突破した。多くのメディアがそのポテンシャルに注目し、優勝候補の一つと目している。しかし、その裏側ではいくつかの苦難と、それを乗り越えた先に見えた確かな光明があった。本稿では、グループリーグの戦いを詳細に振り返り、チームを勝利へ導いたクーマン監督の決断や、メディアからの厳しい批判、さらには決勝トーナメントにおける戦略的課題に深く切り込む。伝説的な記録を持つ一方、致命的な弱点も抱えるオランダ代表が、一体どこまで勝ち上がれるのか、徹底的に分析する。ファンならずとも必読の、未来を読み解く情報がここにある。

Q. オランダ代表はグループリーグをどのように戦い抜いたか?
オランダ代表のグループリーグ戦績は、総合的に見て85点と高評価を与えられている。初戦の日本戦で引き分け、追いつかれた展開に反省点があったものの、スウェーデン戦では5-1と大勝し、チュニジア戦も順当に勝利を収めた。この結果、グループリーグを首位で突破した。

特に攻撃面では、3試合で合計10得点を記録し、これは全グループの中でトップタイの数字であった。日本戦での守備戦術(5バック)が機能しなかった反省から、スウェーデン戦以降は攻撃的な戦術へとシフト。この戦術変更が功を奏し、高い得点力を発揮できたことは、チームにとって非常にポジティブな要素だ。選手たちは自分たちのプレースタイルに自信を持ち、「この形で戦えば勝てる」という確信を得たのである。
Q. クーマン監督が下した戦術転換とその影響とはどのようなものだったか?
クーマン監督は、オランダ代表の最多得点記録を持つメンフィス・デパイをサブに置くという、大きな決断を下した。これは保守的と見られていたクーマン監督にとって、大胆な采配であり、チームに劇的な変化をもたらした。

具体的には、フォワードのファーストチョイスとして、若手のブロビーをセンターフォワードに据え、マーレンを右ウィングで起用する布陣が確立された。ブロビーはイングランドプレミアリーグで戦い抜いてきた実績があり、世界最高峰のリーグで十分に通用する実力を示している。マーレンもオランダで右サイドでの経験が豊富であり、この新布陣が攻撃陣の活性化に大きく貢献した。
さらに、スウェーデン戦で途中出場したザマーフィルが勢いをもたらすなど、新しい攻撃の選択肢が明確になった。デパイをサブに回すことで、チームはむしろ攻撃の「形」を見つけることができたと言えよう。クーマン監督はグループリーグの3試合を通してメンバーをあまり大きく変更せず、この確立された固定メンバーでトーナメントを戦い抜く意図が見える。これは、チームとしての連携を高め、勝利の道筋を固める狙いがあると考えられる。
Q. 初戦の日本戦はチームにどのような「感謝」をもたらしたのか?
初戦の日本戦は、結果的にオランダ代表にとって貴重な教訓を与え、チームがポジティブな方向へ転換するきっかけとなったため、「感謝」すべき試合であったと分析できる。この試合でクーマン監督は、日本対策として普段は採用しない守備的布陣、具体的には5バック戦術を導入したが、これが思うように機能せず、さらに消極的な選手交代が批判の的となった。例えば、切り札となりうるブロビーの投入が85分と極めて遅かった点だ。
試合後、オランダメディアはクーマン監督の采配に対し激しく反発した。「格下と目される日本に対し、安易に逃げ切ろうとした消極性」が批判の根源であり、これは監督に大きな外圧を与えた。海外のサッカー界では監督とメディアの激しい論戦は珍しくないが、今回の批判は監督が戦術を見直す決定的な要因となった。
この教訓を受け、クーマン監督は続くスウェーデン戦では従来の攻撃的な戦術へと回帰し、ブロビーを抜擢。これが奏功し5-1の大勝を収めたことで、選手たちは自分たちの本来のスタイルが最も強いと確信した。開幕前のプレビューで、日本戦でのつまずきがオランダの優勝への鍵となる可能性が指摘されていたが、実際に「痛い目」ではないものの、日本戦での課題露呈がチームをより強くしたと言える。
Q. オランダ代表が持つ「90分無敗」の驚異的な記録とその影にある弱点とは何か?
オランダ代表は2006年のワールドカップ以降、驚くべき記録を維持している。それは、本大会において「90分以内で敗北したことが一度もない」という点だ。2010年大会の決勝では延長戦で、その他はPK戦で敗退しているが、試合時間内での敗戦は一度もない。この強靭な勝負強さは、トーナメントを勝ち進む上で大きな武器となることは間違いない。

しかし、この堅守を誇るチームにも、致命的な弱点が存在する。それは、PK戦への対応能力である。現在の正守護神、フェルブルッヘン選手のプロキャリアにおけるPK阻止率はわずか7.6%だ。これは一般的なゴールキーパーの平均阻止率が20%から25%であることを考慮すると、非常に低い数字と言わざるを得ない。具体的なデータを見ると、キャリアでPKを26本受けてうち阻止できたのは2本のみ、24本は決められているという衝撃的なものだ。さらに、ネーションズリーグでのPK戦でも6人中5人に決められるなど、大舞台での実績も芳しくない。
このため、もし決勝トーナメントでPK戦に突入した場合、オランダは非常に不利な立場に置かれる可能性が高い。2014年大会ではファン・ハール監督がPK戦直前にゴールキーパーを交代させる奇策で成功を収めたが、クーマン監督が同様の采配を下すかは未知数である。PKに弱いとされる正キーパーを交代させるという決断は、試合の行方を大きく左右する重要な選択となるだろう。
Q. 決勝トーナメントの勝ち上がりと、最大の障壁となるフランス戦での勝機をどう見るか?
決勝トーナメントにおいて、オランダは初戦でモロッコとの対戦が予想される。地力とこれまでの戦い方から見て、モロッコには勝利し、順当にベスト8までは進出できる可能性が高いと多くの専門家が分析している。比較的に恵まれた組み合わせであるとも言えるだろう。しかし、初戦には不吉な懸念も存在する。2006年にオランダが90分で最後に敗れたポルトガル戦は、「ニュルンベルクの虐殺」と呼ばれるほどカードが乱発した大荒れの試合であったが、その際の審判を務めたサンパイオ氏が、今大会の開幕戦でレッドカードを多用するなど、再びカードを乱発する傾向が見られる。これが審慎に及ぼす影響は警戒すべき点だ。
ベスト8まで進出した場合、次の最大の障壁は準々決勝で対戦が予想されるフランス代表である。純粋なチームの地力とタレントの層から見ても、フランスに軍配が上がるのが現状の評価であり、ここで敗退し、ベスト8が最終到達点となる可能性が高い。目標はベスト4だが、そこに到達するのは非常に困難だ。ベスト8での敗退はメディアからの批判を免れないだろうが、現在の実力を客観視すればやむを得ない結果と見ることもできる。
それでもフランス相手に勝機を見出すとすれば、それは徹底したカウンター戦術である。フランスが前がかりになって攻撃を仕掛けてきた際、その背後のスペースを突く高速カウンターがカギとなる。特にガクポやマーレンといった快速アタッカーが、そのスピードを活かして相手ディフェンスラインを切り崩せれば、ゴールを奪える可能性は出てくる。シンプルなサイドからのクロス攻撃も効果的だろう。0-0の状況を粘り強く保ち、フランスが焦れて前線に上がってきた隙を狙う我慢強い戦い方が、番狂わせを起こす唯一の道だと考えられる。