
【株主総会リポート】ANAマイル見直し・JALはどうなるのか
ANAとJAL、マイル戦略と企業姿勢の真価:株主総会が示した両社の明暗
ANA(全日本空輸)がSFC(スーパーフライヤーズカード)制度の改定案を発表し、その後ユーザーの大きな反発を受け見直しを表明した問題は、多くの人々の関心を集めている。一方、JAL(日本航空)は同様のマイル制度について「見直し予定なし」と明言し、両社の経営戦略や顧客対応が大きく対比される形となった。
本稿では、航空業界に詳しい専門家の見解を交えながら、両社の株主総会で何が語られ、何が課題として浮上しているのかを深掘りし、今後の動向について考察する。マイルという顧客囲い込み戦略の行方、そして航空会社とユーザーとの新たな関係性が問われている。

Q. ANAの株主総会は、SFC改定の見直し発表にも関わらず、なぜ波乱なく終わったのか?
ANAホールディングスの株主総会は、通常より大幅に短い約1時間半で平穏に終了した。これは総会前日にSFC改定の見直しを唐突に発表したためだと指摘されている。マイル改定がユーザーに「解約」と受け止められるほど炎上していたが、経営陣はこれを鎮静化させる「総会対策」として利用した可能性が高い。実際、SNS上のユーザーはANA経営陣の発言を「何も分かっていない」と批判しており、会社側の認識と顧客の受け止め方には大きな隔たりがあったと言えるだろう。

Q. ANAが発表したSFC新制度がなぜ多くのユーザーから反発を受けたのか?
ANAの新SFC制度が「炎上」した主な原因は多岐にわたる。まず、かつて「永久に上級会員特典が続く」とプロモーションしていた既得権を剥奪しようとした点である。これにより「約束が違う」「これまでのマイル修行の否定」と多くの反発が寄せられた。
次に「ANAカードで年間300万円決済」という条件だ。他社の還元率の高いカードを使いこなす利用者からすれば、ANAカードに限定されることで、自身の経済合理性に基づいた決済手段が制限される不満が生まれた。
さらに、海外出張や旅行が多いユーザーにとっては、国内線ラウンジ利用よりもスターアライアンスゴールド資格の維持が死活問題であった。これにより世界各国の提携航空会社のラウンジや優先サービスが利用でき、治安が懸念される国での安全確保にも繋がる。この重要な特典が危ぶまれたことが、特に大きな懸念を呼んだ要因であった。

Q. ANAはマイル制度の見直しを発表したが、今後どのような対応が予想されるか?
ANAは9月末までに改めて案内すると表明したが、「見直す」と「変える」は意味合いが異なる点に注意が必要である。株主総会で300万円の決済基準について明言しなかったことから、最終的にその基準を維持する可能性も残る。
ANAは「2030年度にはラウンジの混雑が限界に達する」と説明しており、物理的なスペースの拡大が困難である以上、会員数増加への何らかの抑制策は不可避と考えられる。見直しの内容としては、SFC会員の中でもダイヤモンド会員のような、より利用実績の多い層への優遇強化、または既得権を尊重し、既存会員は旧ルール、新規入会者は新ルール適用とするような階層化された制度が導入されることも考えられる。しかし、ラウンジ混雑という構造的な問題がある以上、完全な現状維持は難しいのが実情であろう。

Q. ANA新運賃システム導入で生じた混乱の真因とは何か?
ANAの混乱はSFC改定だけではない。5月に導入された国内線新運賃体系の「シンプル」では、最安運賃であるにもかかわらず、事前の座席指定ができなくなった。これは家族連れがバラバラの席になるリスクをはらみ、大きな不満を招いている。さらに、新システム移行に伴う「オーバーブッキング騒動」やチェックイン不能の問題も頻発した。これは単一の原因ではなく、新システム(アマデウス社製)の導入に伴うシステム不具合、現場スタッフの不慣れ、そしてユーザーへの周知不足という複合的な要因が絡み合って生じたものだ。
例えば、チェックイン時の姓名入力順序が、予約時と逆の「名→姓」に変更されたが、この変更が十分に周知されず、多くの利用者が戸惑った。これらの問題に対し、ANA側は顧客への情報伝達が不十分であったことを株主総会後に認めたとされている。
Q. JALはマイル制度を見直さないと表明したが、その背景と戦略は何か?
JALは株主総会で、マイル制度について「見直す予定はない」と明確に表明した。さらに、ANAの懸念点を念頭に「ラウンジの利用制限」や「ワンワールドのステータス格下げ」を否定。これにより、ANAで不満を抱えたユーザーに対し、大きな安心感を与えたことは戦略的な対応と言えるだろう。JALもANA同様にラウンジ混雑の課題は抱えているが、こちらは既存会員の特典を維持しつつ、新規の上級会員資格の取得条件を厳格化することで、会員数の伸びを緩やかにする抑制策を取っている。
このJALの姿勢は、2010年の経営破綻を経験し、顧客との関係再構築に努めてきた経験が背景にあると推測される。また、マイルが「ポイ活」などで貯める「資産」から、航空会社のロイヤリティプログラムにおける「手段」へと、その価値や位置づけが変化していく時代の転換点でもあると捉えられている。

Q. JALで「飲酒問題」が頻発する報道の背景には何があるか?
JALでパイロットや客室乗務員による飲酒問題が頻繁に報じられているように見えるが、その実情は他社との企業文化の違いに起因している。JALの飲酒事案の多くは、国の法律で定められた乗務前のアルコール検査ではなく、会社が自主的に行っている検査段階で検知されたものである。他社ではこのようなケースを「体調不良」などとして公表しない傾向がある一方、JALは、一度経営破綻を経験したからこそ、法令順守や規律を重んじ、少しの気の緩みも許さないという厳格な企業文化を持っているため、些細なことでも公表に踏み切る姿勢を示している。これにより、表面的にはJALで飲酒問題が頻発しているように見えても、実際にはガバナンスが高いことの裏返しとも言えるだろう。
Q. JALの国内線サーチャージ導入検討と羽田-ドーハ線の状況はどうなっているか?
JALは国内線でも燃油サーチャージ導入を検討しているが、国際線のような高額ではなく、数百円から千円程度の規模感で導入を考えているようだ。これは燃油高騰に対応する一時的な措置であり、国内線経営の構造問題を抜本的に解決するものではないとしている。
一方、JALが日本の航空会社として唯一運航する羽田-ドーハ線は、中東やアフリカへのアクセスを確保する戦略上重要な路線であり、パートナーであるカタール航空の羽田就航後も路線を維持する方針である。しかし、中東情勢の悪化により乗り継ぎ需要が低迷すれば、パートナーに任せる可能性も示唆しており、中東情勢が今後の運航継続を左右する鍵となるだろう。