
日本株は大幅下落へ?/AI・半導体相場に急ブレーキ/日銀・FRBの動向に要警戒
「日経平均8.8万円」も視野に? AI株ブームの先にある短期リスクと長期展望
AIブームを背景に、足元で日本株は歴史的な高値を更新した。日経平均株価は一時7万円台を突破し、市場は熱気に包まれている。しかし、この株高がどこまで続くのか、はたまた目前に大きな調整局面が迫っているのか、投資家の間で様々な見方が交錯している。
本稿では、市場の振り返りから短期的なリスク要因、そして長期的な成長期待までをQ&A形式で深掘りする。日米の中央銀行政策や地政学リスク、さらにはAI半導体市場の最新動向を分析し、高値を更新する相場をどのように読み解くべきかを探る。


Q. 最近の日経平均の上昇と市場の現状をどう評価するか?
日経平均株価は、以前から予想されていた「7月から9月に6万8,000円」という強気予想を大幅に上回り、一時7万円台に達した。しかし、市場ではこれを過熱感と捉え、むしろ7月に天井を打つ可能性への警戒感が強まっている。専門家の間でも、達成感から利益確定売りが出やすい局面であるとの指摘がある。
さらに、信用取引における評価損益率がほぼ0%に近づいていることも懸念材料の一つだ。これは個人投資家の多くが含み益を抱えていることを意味し、通常、市場が過熱している際の逆張り指標として知られる。ひとたび相場が崩れ始めれば、一斉に利益確定売りが殺到し、急落につながる危険性が高い。
また、配当の支払い時期は株価に季節的な影響を与える。6月上旬と7月上旬は配当再投資により資金がバリュー株に流れやすい。特に日経平均は7月初旬にピークをつけやすい傾向がある。7月初旬の株高の後は、ETFの分配金落ちにより相場から流動性の支えが失われ、下落に転じやすいため注意が必要だ。
Q. 日米の中央銀行の政策が現在の市場にどのような影響を与えているか?
日銀は利上げと国債購入の減額調整を同時に打ち出したことで、長期金利の先行きが極めて不透明になっている。金利の上昇圧力と抑制圧力が拮抗し、長期金利チャートは「三角持ち合い」と呼ばれる形状を形成している。これは、次に大きくどちらかに動く可能性を示唆し、市場にとって大きなリスクである。
日銀は昨年度だけで67兆円もの総資産を圧縮し、今年度も40兆円から50兆円規模の国債が減る見通しである。この規模は、補正予算や消費減税の財源問題(数兆円から10兆円規模)と比較しても圧倒的に大きく、強力な金融引き締め効果をもたらす。この金融引き締めは企業の設備投資意欲を削ぎ、政府が推進する成長戦略に水を差しかねない。

物価動向については、コアCPIは既に2%を割り込み低下傾向にある。日銀総裁が重視するサービス物価上昇率も1%程度と弱い。8月に発表されるCPIの基準改定では、過去の例に鑑みて物価上昇率が下方修正される可能性が高い。これは、日銀が利上げを続ける根拠をさらに弱めるだろう。
一方、米国FRBの新議長は、市場の慣例を破り、金融政策の先行きを示すフォワードガイダンスを停止する可能性を示唆した。これは市場の不確実性を高め、投資家がリスク量を維持することを困難にするだろう。歴史を紐解くと、1987年のブラックマンデー直前のグリーンスパン元議長も同様の「お作法破り」の姿勢で市場を攪乱したことが指摘される。日米の中央銀行がデリケートな金融政策を続けている現状は、市場に不測の事態をもたらす潜在的なリスクを抱えていると言えよう。
Q. 世界の地政学リスクと米国の政治情勢が市場に及ぼす影響は?
現在の市場環境は、1987年のブラックマンデー直前と複数の点で酷似している。当時もFRBの利上げ、イランを巡る地政学リスク、そして国際協調の乱れという三つの要因が重なり、株価暴落に繋がった。現在、FRBはタカ派的な姿勢を見せ、イラン情勢も引き続き不安定であるため、これらが重なれば、歴史的な暴落が再来する危険性がある。
6月に入ってから米国の防衛株が上昇に転じており、これは市場が新たな地政学リスクを織り込み始めた兆候と見られる。イラン情勢は一時落ち着きを見せたものの、今後、米中間選挙後のトランプ氏の動向によっては、再び強硬策に転じるリスクが指摘される。トランプ大統領が選挙を有利に進めるため、原油高抑制でイランに対して戦略的に態度を軟化させた可能性もあり、選挙後には情勢が緊迫化するかもしれない。
日米の債券市場は非常にデリケートな関係にある。日本の長期金利が対米金利比で歴史的な上限に近づいているため、日本の金利が不用意に上昇すると、米国の金利を押し上げ、国際的な金融不安を引き起こす可能性がある。過去に日本が為替介入で米国債を売却した際、その売却益により日本の国債発行が抑制され、かろうじて金利上昇が抑えられた綱渡りの状況を考慮すると、金融市場は依然として脆弱なバランスの上にある。
Q. AI半導体市場に不穏な兆候があるというのは事実か?
韓国のSKハイニックスが、NVIDIAの次世代AI半導体「ルービン」向けHBM4メモリの生産を抑制すると報じられた。NVIDIAは通常、新世代の半導体を発売する際、製造の難しさから歩留まりが悪化し、一時的に増収率や利益率が低下する傾向がある。今回の生産抑制は、ルービンの量産計画に暗雲が立ち込めていることを示唆し、AI半導体ブームの根幹を揺るがす重大なリスクとなる可能性がある。

この報道を受けて、韓国市場ではAI半導体ラリーの象徴だったSKハイニックスの株価が急落。関連半導体株も軒並み値下がりし、韓国総合指数全体がサーキットブレーカーが発動するほど大きく下落した。この韓国市場の動揺は、日本株にもネガティブな影響を与える可能性が極めて高く、特にテック株主導で株高が続いてきた日本市場には大きな懸念材料である。
過去の事例も現在の状況に警鐘を鳴らす。2000年のITバブル崩壊時、2年間にわたり一部のテック株だけが買われる歪な相場が続いた後、相場が天井をつける直前には資金が一時的にバリュー株へとシフトした。このシフトからわずか10日後に市場は暴落しており、現在のAI株からバリュー株への物色は、相場の最終局面が近いことを示唆する危険なサインと捉えるべきだ。
Q. 短期的な調整リスクがある一方で、中長期的な展望は楽観的と考えて良いか?
短期的なリスクは存在するものの、中長期的な視点ではAIブームに対する楽観論は依然として強い。経済には「コンドラチェフの波」と呼ばれる約50年周期の技術革新サイクルが存在し、現在のAIブームはこの新たなイノベーションの波に当たる。過去の蒸気機関や鉄道、インターネットといった大きなイノベーションの後は、約20年間にわたる長期的な景気拡大が続いた。2022年のChatGPT登場を起点とすれば、このAIブームは2040年代まで続く可能性がある。
また、米国と中国の政治サイクルも追い風となろう。来年(2025年)は米国の大統領選挙の前年にあたり、歴史的に株価が非常に上昇しやすい年として知られる。特に共和党政権下では、大恐慌以降、大統領選挙の前年に株価が下落した例はない。中国では2027年に5年に一度の共産党大会が開催され、幹部が昇進のために経済実績を上げる必要があり、国策であるAI・半導体分野への投資加速が予想される。これらの要因から、来年にかけて半導体関連の需要は強く推移する見込みだ。
中長期的なトレンドを捉えると、AIによる生産性向上は世界の経済成長を牽引するだろう。もし短期的な調整を経た後、再度「3割高の法則」が適用されると仮定するならば、6万8000円を起点とした場合、日経平均は2027年頃には8万8000円に達する可能性も考えられる。
したがって、夏から秋にかけて調整局面を迎える可能性はあるが、中長期的な視点で見れば、これらの下落は投資家にとって絶好の買い場となるかもしれない。足元の市場のデリケートさを意識しつつ、冷静な視点で次なる好機を捉えることが重要だ。
