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【速報解説】円安161円超でも介入は難しい。165円シナリオの現実味
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2026年6月20日

161円を突破したドル円。今後、介入はありうるのか?今後の円安の占う上でのポイントは何か?為替ストラテジストの佐々木融氏に聞いた。 <ゲスト> 佐々木 融|ふくおかフィナンシャルグループ チーフ・ストラテジスト 1992年上智大卒、日銀入行。国際局為替課で介入実務を担い、NY駐在時は米連銀との情報...
ドル円161円超えはなぜ?専門家が語る円安の真因と介入の限界
ドル円相場が161円台を突破し、市場に緊張が走っている。この円安はどこまで進むのか、そして政府・日本銀行は有効な手を打てるのか。本記事では、このドル円高騰の真の要因、為替介入の是非、そして今後の日本経済に待ち受ける構造的なリスクを専門家の視点から徹底解説する。

単なる円安として捉えるには複雑すぎる現在の状況について、一つずつその背景を深掘りしていくことで、これからの展望を理解するための重要なヒントが得られるだろう。
Q. 現在の急速なドル円高騰の主因は何であるか?
現在のドル円上昇は、「円安」というよりも「ドル高」が主因である。円は他主要通貨と比較して3番目に強い水準にあり、投機的に売られているわけではない状況だ。
このドル高の背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ期待の高まりがある。米国の2年国債金利が上昇するにつれ、ドルが他の通貨に対して全般的に買われている。金融政策の先行きを敏感に織り込む2年金利の上昇が、ドル円を押し上げる主要因とされているのだ。
日米の2年金利差とドル円の相関は介入後にさらに強まっており、金利差が10ベーシスポイント(0.1%)拡大すると、ドル円が1.5円動く計算になる。そのため、わずかな米金利の上昇でもドル円が162円台に達する可能性は十分に存在する。

さらに注目すべきはユーロドル相場の動きである。ユーロドルが過去1年間サポートとなっていた1.14ドルを下抜けるかどうかが、本格的なドル高への試金石となる。もしこの水準を下回れば、ドル高の流れが加速し、ドル円も40年ぶりの高値である162円台に突入する可能性が極めて高いと見られている。
Q. 為替介入は現状有効な手段となるか?
現在のドル高局面において、為替介入は効果が期待できない。過去の介入が奏功したように見えたのは、実は米国のCPI(消費者物価指数)が予想を下回り、金利が低下したことによる偶発的なドル安要因が重なったためである。介入自体がファンダメンタルズを変える力は限定的だ。

さらに、現在の円はポンドやユーロといった他の主要通貨に対してむしろ円高で推移している。つまり、「投機的な円売り」という介入の大義名分が成立しにくい状況にある。政府・日銀が160円近辺での介入を試みれば、そのラインを防衛線とみなされ、効果がなければ当局の信頼性が失墜するリスクを伴う。
ドル高の根源にあるFRBの利上げ期待が解消されない限り、円売り介入は「焼け石に水」となる可能性が高く、当局は安易な介入には踏み切れないジレンマに陥っている。
Q. 為替介入が実施されない場合、円相場にどのような影響が及ぶか?
為替介入が実施されない、あるいは効果が限定的であると市場が判断した場合、円相場はさらなる下落圧力を受けることになる。現在の市場では、金利差を狙った「円ショート」(円売りドル買い)が積み上がる一方、介入期待から「円ロング」(円買いドル売り)のポジションを持つ投機筋も存在する。しかし、介入の不発が明確になれば、この円ロングが急速に解消され、結果として大量の円売りが発生する可能性が高い。
介入への期待が薄れることで、円ロングを持つ投資家たちは、評価損の拡大を避けるために一斉にポジションを投げ出すだろう。これは円安の加速要因となり、特に円安方向に動きが顕著に出やすい相場環境において、一段の変動を引き起こす可能性がある。
すでに一部の市場参加者の間では、安値でドルを仕込むために「介入を待って円を売り、ドルを買いたい」という思惑が広がっており、当局が介入に踏み切れない状況は、彼らにとって好機と映る可能性がある。
Q. 中長期的に円安圧力を強める要因は何か?
中長期的に円安圧力を強める構造的な要因は複数ある。第一に、日銀の政策決定に絡む政治的圧力が挙げられる。長期金利上昇による政府の利払い費増加への懸念から、日銀に対して国債買い入れの継続を求める政治的圧力が高まる可能性がある。これは「財政ファイナンス」と見なされ、中央銀行の独立性および通貨の信頼性を損ない、円安を誘発する要因となる。
第二に、日本の根強いインフレと実質金利の大幅なマイナスが続く状況である。現在の日本のインフレ率は、過去に政策金利が2.5%〜6%であった時期と同水準にあり、それに対して現在の金利がいかに低いかを如実に示している。実質金利がマイナスである限り、国内資金の海外流出を促し、構造的な円安圧力として作用し続ける。
第三に、原油や資源価格の高騰による貿易赤字の拡大が挙げられる。中東情勢の緊迫化などを背景に、円建ての原油・銅・アルミといった輸入物価が前年比で大幅に上昇している。これにより国内企業のコストは増加し、さらなるインフレを招くと同時に、慢性的な貿易赤字を拡大させる。貿易赤字の拡大は、恒常的な円売り圧力となる。
第四に、他国と比較して利上げペースが著しく遅れる日銀の姿勢である。市場は日銀の利上げを非常に緩慢なペースでしか織り込んでおらず、その見通しはインフレ率に対して十分ではない。世界各国が利上げ方向に舵を切る中で、日銀の対応が後手に回れば金利差は拡大し続け、円安がさらに加速することは避けられない。もし日銀が金融政策正常化に遅れを取れば取るほど、このギャップは拡大していく恐れがある。
第五に、日本企業による巨額の対外直接投資が継続していることである。過去には、対米直接投資として5500億ドル(約89兆円相当)という巨額の約束もあり、これが恒常的な円売り・ドル買いの実需を生み出している。例えば小型モジュール炉の建設投資のように、個別の大規模プロジェクトもこの傾向を後押しする。こうした実需に基づく円売り圧力は、簡単に解消されるものではないため、円安の流れを長期的に維持する要因となっている。
Q. もし円安が進行した場合、どのような最悪のシナリオが考えられるか?
専門家は、年末までにドル円が165円に達する可能性を指摘している。もしこの水準に達し、さらにそこで介入が試みられたとしても、ドル高が続く限りその効果は薄いだろう。介入が繰り返し失敗すれば、当局に対する市場の信頼は失墜し、「無意味な防衛線」が突破される事態を招く。
最も懸念されるのは、投機筋ではなく、日本国民自身が円の将来に不安を抱き、資産防衛のために円預金を外貨に替え始める「キャピタルフライト」(資産逃避)が発生する可能性だ。現在、日本国民は1100兆円もの現金・預金を保有していると言われている。そのわずか一部でも外貨に動き出せば、政府が保有する175兆円の外貨準備では到底その流れを止められない。
このような事態に陥れば、制御不能な通貨暴落へとつながるリスクがあり、それが最悪のシナリオと見なされている。介入によって国民に介入の限界を意識させ、却って不安を煽る事態は避けねばならないという専門家の警鐘もそこにある。
Q. ドル高を牽引するFRBの金融政策スタンスはどのようなものか?
ドル高を支えているのは、FRBのタカ派的な金融政策スタンスである。FRBは依然としてインフレの根強さを警戒し、利上げの可能性を排除していない。
最新のFOMC(連邦公開市場委員会)では、今後の政策方針を示す「フォワードガイダンス」が撤廃された。これは、FRBが特定の将来的な政策を示さず、今後の金融政策を経済指標の結果に大きく依存させる姿勢を明確にしたことを意味する。結果として、個別の経済指標やFRBメンバーの発言が市場のボラティリティを大きく高める要因となるだろう。

現在の米国経済を見ても、インフレ圧力は根強い。FRBが注視するコアPCE(個人消費支出)価格指数は、目標の2%に届く前に再び上昇傾向にあり、雇用市場も依然として強固だ。非農業部門雇用者数も過去の水準に戻っており、失業率は低位安定している。これらは利上げの必要性を示唆する経済状況だ。
さらに、FOMC参加者の金利見通しを示すドットチャートでは、2026年までに2回以上の利上げを予想するメンバーが増加している。

これはFRB内でのタカ派(金融引き締め派)への傾斜を示しており、今後の利上げ期待をさらに高めている。市場は既に相応の利上げを織り込んでいるが、予想を上回る経済指標の発表があれば、さらなるドル高の余地が生まれるだろう。