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【速報解説】米イラン合意成立 アメリカ側が妥協か
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2026年6月15日

米イランの合意が成立。しかしG7、独立記念日、中間選挙のスケジュールに追われたトランプ政権はイランに相当な妥協をした可能性も。ホルムズ海峡封鎖という「カード」をイランに握らせてしまったリスクも残る中での核交渉の行方は。アメリカ情勢の専門家・渡部恒雄さんと読み解く。 <ゲスト> 渡部恒雄|笹川平和財...
「熱い戦争」から「冷たい戦争」へ? 米イラン合意の行方を読み解く
日本時間の15日、アメリカのトランプ大統領がイランとの合意完了を発表した。ホルムズ海峡の無償解放を伴うこの合意は、今年2月の軍事衝突から約3ヶ月半を経て、ついに戦闘終結への一歩となるかに見えた。
しかし、この「歴史的な一歩」と称される合意は、本当に中東情勢を安定させるものなのだろうか。アメリカの対イラン政策に詳しい笹川平和財団の渡部恒雄氏への取材を通じ、この合意の真意と今後の展望を探る。

Q. 今回の米イラン合意はどのように評価できるのか?
今回の合意は、完全な停戦や和平を意味するものではない。渡部氏はこれを「一歩前進」と評するが、その実態は核開発交渉などの本格的な対話に進むための「入り口」となる枠組み合意だという。
これは、オバマ政権下での包括的核合意(JCPOA)の際にも用いられたアプローチであり、詳細を詰める前にまず対話の形を整えるという、賢明な交渉術と言える。
ただし、核開発や制裁解除といった核心部分は今後60日間の協議に委ねられており、合意の真価が問われるのはこれからである。現時点ではあくまで軍事的な応酬を一時停止するという点で評価されるべきであり、楽観視は禁物だと指摘する。
Q. なぜトランプ政権はこのタイミングで合意を急いだのか?
この合意が成立したタイミングには、トランプ政権の巧妙な政治的計算が色濃く反映されている。主な要因は、国内の政治日程、特に11月に控える中間選挙への影響だ。
米国内でのガソリン価格高騰は、トランプ大統領の支持率に直結する大きな懸念材料であった。ホルムズ海峡の解放によって原油価格を下げ、有権者に安心感を与えることで、中間選挙における共和党の劣勢を回避する狙いがあったと考えられる。
さらに、G7を控えた国際社会へのアピールも背景にあった。世界中が原油高に苦しむ中で、トランプ政権が少なくとも最悪の事態を回避したというメッセージを発することで、外交的にも成果を印象付けようとしたのだ。ただし、この短期的な政治的利益を追求する中で、イランにある程度の妥協を強いられた可能性があり、それが将来の対立の火種となり得ると渡部氏は警鐘を鳴らす。
Q. イスラエルは今後の合意形成にどのような影響を与える可能性があるのか?
今回の米イラン合意の行方を左右する上で、最も予測不能な「変数」がイスラエルの存在である。イスラエルはイランが核兵器製造能力を持つことを決して容認せず、今回の合意にも否定的だ。

今後の核交渉でイランが一定の核能力を保持することになれば、イスラエルは交渉を「壊す」ような軍事行動に出る可能性も否定できない。現に、合意発表の直前にもイスラエルがヒズボラを攻撃するなど、その強硬な姿勢は変わっていない。
渡部氏は、トランプ政権の本質が既存の秩序を「壊す」ことにあると分析し、今回の合意もマイナスのダメージを減らす「ダメージコントロール」に過ぎないという。トランプ大統領はガソリン価格低下といった短期的な成果で支持層を満足させることに注力しており、中東の根本的な矛盾解決には向き合わないため、イスラエルの問題は常に燻り続けるだろうと述べる。
ただし、アメリカ国内の世論は変化の兆しを見せている。特に若い世代の間では、かつてのようにイスラエルを絶対的に支持することがアメリカの国益に繋がるとは考えない人が増えており、この世代間の意識の差も今後の中東政策に影響を与える可能性がある。
Q. ホルムズ海峡の「解放」は、日本を含む世界のエネルギー市場にどのような意味を持つのか?
今回の合意で特に重要視されるのが、世界最大のエネルギー輸送路であるホルムズ海峡の解放だ。日本をはじめとする中東にエネルギーを依存する国々にとっては、供給不安が一時的に解消される点で大きなプラスと捉えられる。
しかし、渡部氏はこの解放を手放しで喜べる状況ではないと指摘する。トランプ政権の政策は、結果としてイランにホルムズ海峡を封鎖するという強力な交渉カードを与えてしまったと分析する。
イランはいつでも海峡を閉鎖できる状況にあると考えられ、日本を含む各国は「ホルムズ海峡封鎖によるエネルギー危機」という恒久的なリスクに備える必要に迫られているのだ。
これにより、化石燃料への依存からの脱却、代替エネルギーへの転換、代替輸送ルートの確保など、日本のエネルギー戦略の抜本的な見直しが喫緊の課題となるだろう。
Q. 今後の核交渉における最大の論点と懸念事項は何か?
今後60日間で詰めることとなる核交渉においては、いくつかの重要な論点と懸念事項が存在する。一つは、ホルムズ海峡における通行料の問題である。
国際法上、ホルムズ海峡は国際航路であり、いかなる国も通行料を徴収することは許されない。ここで前例を作ってしまうと、世界中の国際航路に影響が波及し、秩序が崩壊しかねないため、アメリカ側はこの点において絶対に譲歩できない立場にある。

また、イラン側の交渉パターンも注意が必要だ。過去の核合意の際も、合意に至った後でさらに厳しい要求を突きつけてくるという経緯があるため、今回の交渉も予断を許さない状況が続く。
さらに懸念されるのは、アメリカがイランにホルムズ海峡というカードを与えてしまったため、核交渉で過去のような強い態度に出られなくなった点だ。これにより、オバマ政権時代の合意よりも緩い内容になる可能性すら指摘されている。これはイスラエルの強い不満を招き、再び情勢が不安定化する引き金となる可能性が高い。
Q. 米国の中東政策の信頼性低下は地域情勢にどう影響するのか?
今回の合意は「熱い戦争から冷たい戦争へ移行した」と評されるが、これは紛争が終結したわけではなく、対立が形を変えて継続しているに過ぎない。中東における平和への道のりは遠く、状況は「薄氷を踏むような不安定さ」を伴う。
今回の紛争を通じて明らかになったのは、湾岸諸国がアメリカに全面的に安全保障を依存できないという現実だ。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの石油関連施設が攻撃されても、アメリカが必ずしも守ってくれるわけではないという不信感が広まった。
この結果、これらの湾岸諸国はアメリカ依存からの脱却を模索し始めており、独自で自衛能力を強化したり、新たな外交関係を構築したりする動きが見られるだろう。これは、これまでの米・イラン・イスラエルの三極関係に加え、湾岸諸国の思惑も複雑に絡み合い、中東全体のパワーバランスをより予測不能で不安定なものへと変化させるだろうと渡部氏は結んでいる。