PIVOT TALK LIFE
カリスマ英語教師の結論。どうすれば日本人は英語がしゃべれるのか?
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2026年5月30日

なかなか上がらない日本人の英会話力。結局、どうすれば日本人は英語を話せるようになるのか?カリスマ英語教師として学生や社会人を指導してきた、安河内哲也氏に聞いた。 <ゲスト> 安河内哲也 | カリスマ英語教師 上智大学卒。東進ハイスクール等で実用英語教育の普及に注力。文部科学省の審議会委員を歴任し、...
日本人が英語を話せるようになるには?カギはマインドセットと実践にあり
多くの日本人が「英語を話せるようになりたい」と願い、様々な教材や学習法に触れてきた。
しかし、現実はなかなか「話せない」状態から抜け出せない人々が多い。
一体なぜなのか。
長年の英語指導経験を持つ安河内哲也氏が指摘するのは、語彙や文法、発音の問題ではなく、英語に対する日本人の根本的な「マインドセット」にあるという。
本記事では、このマインドセットを「ピボット」させるための具体的な実践方法や、AI時代の英語学習のあり方、さらには子どもの英語教育まで、Q&A形式で深掘りする。

Q. 日本人が英語を話せない根本的な理由は何なのか?
日本人が英語を話せない主な理由は、単語や文法、発音といったスキルや知識の不足ではない。
多くの場合、中学・高校、そして大学受験で十分な英語教育を受けており、知的好奇心の高いビジネスパーソンであれば基礎的な素地は備わっていると言える。
しかし、高学歴な人ほど「完璧な英語でなければ話すべきではない」という完璧主義のマインドセットに縛られている。
学習におけるPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)で言えば、日本人はPlan(計画・学習)ばかりを延々と繰り返している点が問題だ。
単語を覚えたり、文法を学習したり、シャドーイングをしたりとインプットばかりに時間を費やし、D(実践・話す)の機会を自ら奪っている。
海外のノンネイティブが多少ブロークンでも堂々と英語を話す一方、日本人は「話せる」の基準をネイティブレベルという極めて高い位置に設定し、その到達を待つばかりになっている点が実践への壁となっているのである。

Q. 英語習得のための具体的な行動変容は何が必要なのか?
まずは「マインドセットの破壊」が不可欠である。
完璧主義の意識を変えるために、意図的に下手な英語を話す練習を取り入れるのが効果的だ。
たとえば、出川哲朗氏のような「出川イングリッシュ」を意識的に使って会話を始めてみることは、英語を口に出すことへの抵抗感を軽減する上で役立つ。
初めに恥をかくハードルをあえて下げることで、緊張をほぐし、自身の英語を声に出す機会を作り出すことができるだろう。
ひとたび英語を口に出し始めれば、「通じなかった」「間違っていた」という具体的な課題に気づけるようになる。
この「気づき」が次のインプット学習の質を高め、自身の弱点をピンポイントで強化するサイクルにつながるのだ。
この意味で、PDCAサイクルにおいてDo(実践)がなければ、その後のCheck(検証)もAct(改善)も機能しないと言える。
また、英語学習は短期間で習得できるものではなく、最低でも3年から5年の継続が必要だという認識を持つべきである。
これは楽器の演奏と似ており、楽譜を学ぶ(インプット)だけでは上達しないし、いきなり精密に弾けるわけでもない。
最初は下手でも実際に楽器を弾き続ける(アウトプット)ことで徐々に上達するのと同じで、英語もインプットとアウトプットを組み合わせ、粘り強く反復することが成功への鍵を握っている。

Q. AIが進化する現代において、英語学習の意義やメリットは依然として存在するか?
AIの同時通訳技術は著しく進化し、将来的には単純な伝達目的であれば、英語学習なしで多くのことが可能になるだろう。
しかし、ビジネスの最前線で働くエリート層にとっては、タイムラグのない「生」の対話能力が依然として強力なアドバンテージとなる。
翻訳機を介した会話が主流となる中で、自然な会話ができる個人は特別な人間関係を築き、「ギルド」と呼ばれる排他的なネットワークの一員となるだろう。
AIは英語スピーキング練習における優れた「壁打ち相手」となる。
ChatGPTなどのボイスチャット機能を使えば、「ゆっくり話して」「簡単な英語で」といった指示も可能だ。
日常のテーマやビジネス関連の質問など、31日分の会話トピックをAIに作成させることで、自宅でも継続的にアウトプットの機会を確保できる。
ただし、AIとの会話には限界があることを理解すべきだ。
AIの会話は人工的で予測可能なため、実践を通じて生じる「予測不能な展開」や「文化的な背景によるずれ」など、人間同士のリアルなコミュニケーションで得られる経験は代替できない。
AIでの基礎練習を経て、オンラインであれリアルであれ、人間と会話する機会を意図的に作ることが、真のコミュニケーション能力を養う上で不可欠である。
さらに、英語学習は論理的思考力の向上にも大きく貢献する。
英語のスピーキングで重視されるのは「Assertion(主張)、Reason(理由)、Evidence(具体例)」という論理的な構成だ。
このフレームワークに沿って話す訓練は、日本語でのプレゼンテーションや会議における議論進行にもそのまま応用でき、母語のコミュニケーション能力全体の底上げにつながる。

Q. 自身の英語力を客観的に測り、成長を実感するにはどうすればよいか?
自身の英語力を測る上で、TOEICに代表されるマークシート形式のテストに頼りすぎるのは適切ではない。
これらのテストは主にリーディングとリスニングの能力を測るもので、スピーキング能力を正確に評価することはできない。
マークシートテストでは、口を動かさなくても満点を取れるため、スピーキングに意識が向かない傾向にある。
目標として掲げるべきは「ネイティブレベル」という非現実的なものではなく、「草野球の親父レベル」を目指すことだ。
これは、ビジネスで不自由なくコミュニケーションが取れる程度の英語力を指す。
このレベルであれば、日本で生まれ育った一般的な学習者でも5年から10年の継続で十分に到達可能である。
楽天の三木谷浩史氏やソフトバンクの孫正義氏のような、日本人らしいアクセントがあっても堂々とビジネスで英語を使いこなす経営者たちが、優れたロールモデルとなるだろう。
自身のスピーキング能力を客観的に評価するには、VersantやPROGOS、TOEIC Speaking Testなどの専門のスピーキングテストの活用が有効だ。
これらのテストでは、口を動かさなければ点数が0点になるため、アウトプットへの強い動機付けとなる。
テスト対策を通じて論理的に話す訓練を重ねることで、英語での発話能力だけでなく、日本語でのコミュニケーションスキルも向上させることが可能となる。
Q. 子どもの英語教育において、親が最も注意すべき点とは何か?
子どもの英語教育において最も大切なのは、「英語を嫌いにさせない」ことだ。
日本のEFL(外国語としての英語)環境では、小学校で週に数時間英語の授業を受けた程度で、英語が自然と話せるようになるわけではない。
「グローバル社会だから英語ができなければ生き残れない」といった脅迫めいた言葉は、子どもが英語を嫌いになる要因にしかならないため避けるべきだ。
親はテストの点数や、スペルミス、ピリオドの付け忘れといった「ケアレスミス」を過度に気にして子どもを叱責してはならない。
このような完璧主義は、子どもが失敗を恐れて英語を話そうとしない大人に育つ温床となる。
むしろ、「ケアレスミスをたくさんしよう。そして直していこう」という姿勢を教えるべきだ。
ケアレスミスをすればするほど、そこから学び、英語は上達するのである。
言語能力が本格的に成熟する10代半ばから後半に英語を嫌いになっていなければ、十分伸びしろがある。
そのためには、まず子どもが英語を「楽しい」と感じられる環境を整えることが最優先だ。
もし学校の英語教師との相性が悪く英語嫌いになりかけている場合は、塾などを活用して、英語が楽しいと再認識させる機会を提供することも検討するべきだろう。
最後に、子どもが「間違いを恐れないマインド」を育むためには、大人がまず率先してその手本を示すことが不可欠だ。
親や教師がたとえ下手な英語でも、「My English is not good enough, but let’s study together!」と堂々と話し、間違う姿を見せることは、子どもに安心感と挑戦する勇気を与えるだろう。
ICTツールを活用すれば、ネイティブの音声に触れる機会は豊富に提供できる。
教師の役割は、率先して間違いを犯し、それを修正していく「学習するロールモデル」となることだ。
大人のマインドセットのピボットが、子どもの英語教育の未来を良い方向に導くカギとなるのである。