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圧倒的成果を生む人事施策の考え方
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2026年5月20日

「とりあえず研修をやろう」…あなたの会社の施策、現場から「大本営発表」となっていませんか? 組織人事コンサルタントの浜岡氏と圧倒的成果を生む人事施策の考え方を徹底解説。 <ゲスト> 浜岡範光|組織人事コンサルタント/エグゼクティブコーチ リクルートで人事・営業・経営企画等を経験。年間1000名規模...
「とりあえず研修」はもうやめよう。成果を生む人事施策の極意
形式的な研修をただ受動的にこなす現状は、組織の成長を阻害する大きな要因ではないか。しかし、社員の意識と行動を劇的に変え、目覚ましい成果を上げるユニークな施策を打ち出す企業も存在する。
「面白法人カヤック」が新入社員に求める「入社初日の退職届」は、その象徴的な事例と言えるだろう。
本記事では、この興味深い事例を端緒とし、組織人事コンサルタントの浜岡範光氏が提唱する「成果を生む人事施策の考え方」を深掘りする。意味のない研修が蔓延する根本原因から、社員の自律性と貢献感を高めるための重要な視点まで、滑らない人事施策を設計する極意を徹底解説する。

Q. 面白法人カヤックが「入社初日に退職届」という人事施策を実施する狙いは何か?
面白法人カヤックの「入社初日に退職届」という人事施策は、新入社員が会社を単なる雇い主ではなく、自身の目標を実現するためのプラットフォームとして捉え、主体的にコミットすることを促す。新入社員は将来的に「こんなことが実現できたので退職します」という形式で、自らが会社を使って何を成し遂げたいかを表明するのだ。これにより、何のためにこの会社に入社したのか、何を実現したいのかを明確に意識させ、当事者意識を育む。
同時に、周囲の社員も新人の思いを理解し、彼らが目標を達成するための支援や機会提供を具体化させる契機となる。この施策は、形だけの人事ではなく、社員の行動と会社の成長に直結する強いメッセージを発信する好例である。
Q. 多くの企業で「意味のない研修」と社員が感じてしまうのはなぜか?
多くの企業で実施される研修の約9割が、社員から「意味がない」と感じられている現状が明らかだ。これは、研修の目的である「行動変容」が促されず、現場の成果に繋がらないためだと言える。その根本原因は、人事施策における「ゴール設定」の欠如に帰結する。

多くの企業では、「管理職研修を実施する」という行為自体が目的化し、「この研修を通じて、誰が、何が、どうなったら、事業にどう貢献するのか」という最終的なゴールが不明瞭なまま施策が遂行される。ゴールなくしては、研修は受け手にとって単なる「やらされ仕事」となり、なぜそれが必要なのか、自分の仕事にどう活かせばよいのか理解できない。結果として、現場での具体的な行動変化には繋がらず、企業全体の生産性向上にも寄与しないのだ。
Q. 人事施策の目標達成に必要な「行動設計」が欠如しているとはどういうことか?
人事施策が本来目指すべき「行動変容」を定着させるためには、大きく3つの壁を乗り越える必要がある。第一に「知識の壁」、第二に「実践の壁」、第三に「継続の壁」である。現状の研修の多くは、正しい知識や理論を伝える「知識の壁」を越えることに終始し、それらを実際の業務でどのように応用し、行動に移すかという「実践の壁」や、新しい行動を習慣として続ける「継続の壁」を乗り越えるための具体的な設計が不足する。
例えば、野球選手がバッティングフォームを変えるように、慣れた行動様式を変えることは一時的に成績が下がるリスクを伴うため、実践には大きな抵抗がある。施策の効果を最大化するには、知識付与だけでなく、具体的な行動のイメージを与え、実践をサポートし、フィードバックを繰り返すことで行動変容を定着させる一連のプロセス全体を設計しなければならない。
Q. 経営から高い期待を寄せられる人事部門が、その役割を果たせないジレンマとは何か?
現在、企業の人事部門には「ビジネス成果への貢献」や「組織風土改革」といった極めて高い期待が寄せられている。しかし、多くの人事部門はそうした役割を十分に果たせているとは感じておらず、この乖離が大きなジレンマとなっているのが実情だ。この問題は、人事担当者の知識やノウハウ不足に起因するのではなく、「経営戦略策定への関与の弱さ」や「経営戦略自体の不明瞭さ」という構造的な課題に根差す。

特に大企業においては、人事部内が採用、研修、制度など機能ごとに細分化され、「縦割り」が深化している。各担当者は自身の持ち場における施策実行に奔走し、組織全体の経営課題解決という本来の目的から逸脱する傾向があるのだ。結果として、個別の施策が孤立し、部門全体としての事業貢献という大きな目標に繋がりにくくなる。
Q. 人事施策の失敗を避けるためには、どのような思考が必要となるか?
人事施策の失敗を回避し、成功に導くためには、「やることありきの罠」「成功条件がぼんやり」「役に立たない企画ブロック」「蔓延するやらされ感」という4つのパターンに陥らないよう、以下の思考プロセスが不可欠となる。
まず、施策を検討する初期段階で「論点」を明確にする必要がある。論点とは、意思決定における最重要ポイントであり、達成したいゴールに対しどのような基準で選択を行うかを示す。例えば、「短期的な資金確保」が重要なのか、「長期的な収益最大化」が論点なのかによって、選択すべき施策は根本的に異なるのだ。
次に、経営陣を巻き込むための「フライパンを温める」技術が重要である。これは、具体的な施策案を提示する前に、まず課題自体の重要性について経営陣との認識を共有し、賛同を得るプロセスを指す。さらに、問題発生時には個人の資質を責める「犯人探し」ではなく、制度やプロセス、期待役割の不明確さなど「構造探し」に徹し、根本原因を解決する視点を持つことが肝要だ。
Q. 現場社員の「やらされ感」をなくし、施策を効果的に浸透させる秘訣は何か?
現場社員に「やらされ感」を与えず、人事施策を円滑に浸透させるためには、「ロジック」「パッション」「シンパシー」という3つのエッセンスを伝えることが不可欠である。

第一の「ロジック」は、なぜこの施策が必要なのか、その論理的な根拠や会社全体における整合性を明確に伝えることを意味する。第二の「シンパシー」は、この施策によって会社や社員自身にどのような良い変化がもたらされるのか、実現したい未来を共有し、共感を生み出すことである。最後に「パッション」とは、施策の推進者自身がその意義をどれほど熱く信じ、本気で成功させようとしているか、その情熱を示すことだ。運営側の熱意が伝わらなければ、受け手は決して本気にならない。
これら3つの要素をバランスよく伝えることで、社員は施策を自分事として捉え、自律的な行動変容へと繋がりやすくなる。アナウンサーのスポーツ実況研修が成功したのは、まさにこの3つの要素が自然と揃っていたためと言えるだろう。
Q. 良い会社作りにおいて、社員一人ひとりが持つべき意識とは何か?
組織全体として成果を最大化し、より良い会社を築くためには、社員一人ひとりが「神様に祈るな、作る側に回れ」という主体的な意識を持つことが重要だ。「たまたま良い会社、良い上司、良い仕事」に巡り会えることは、天文学的に低い確率に依存する偶然に過ぎない。
むしろ、「あなたがいるから良い仕事、良いチーム、良い会社になる」という意識で、自ら環境を作り出す側に回った方が、圧倒的に成功の打率は高まるだろう。良い会社作りは人事部門のみの仕事ではなく、全社員の責務である。個々人が「境界線を越える行為」としてのリーダーシップと、その挑戦を支え共にするフォロワーシップを発揮することで、今までの当たり前を変革し、組織を成長させる原動力となるのだ。
特に「会社はどうしたいのですか?」と、他人事の主語が出てくる20人規模から始まる組織の課題に直面した際には、ミドル層が経営方針を現場に落とし込み、全員が当事者意識を持って行動する文化を育むことが極めて重要となる。