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洋上風力発電は日本を救えるのか?経済安全保障の最前線
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2026年4月29日

ホルムズ海峡封鎖により問われる日本のエネルギー戦略。洋上風力発電は日本の救世主になれるのか?地方発の「エネルギー・資源・フィジカルAI」戦略を、北九州市の武内和久市長に聞いた。 <ゲスト> 武内和久|北九州市長 1994年東京大学卒業後、厚生省に入省。2001年に外交官へ転身。 2015年以降アク...
地方発経済安保戦略で日本の未来を拓く、北九州市の挑戦とは
現代社会はエネルギー問題、資源の安定供給、サプライチェーンの寸断など、世界的な危機に直面している。こうした国家レベルの課題に対し、地方都市は何ができるのか。本記事では、地方都市発の経済安全保障戦略を推進し、日本全体のパラダイムシフトを牽引する北九州市の壮大な挑戦に迫る。北九州市は、自らの強みを活かし、危機をチャンスに変えることで、未来を見据えた新しい都市モデルを構築しているのだ。

Q. 地方都市である北九州市が、なぜ経済安全保障戦略に取り組むのか?
現在のホルムズ海峡問題やエネルギー危機は、物価高騰や納期遅延として、建設、医療など多岐にわたる市民生活に身近な分野で深刻な影響を及ぼしている。これはまさに地方都市がそのポテンシャルを発揮し、日本の経済安全保障を下支えする「出番」が来たと北九州市は認識している。経済安全保障はもはや国だけの課題ではなく、北九州市が持つ長年の「ものづくり」の技術力と「環境先進都市」としての実績を背景に、このピンチを好機と捉え、日本全体のパラダイムシフトを起こすという歴史的役割を担う覚悟を示しているのである。
Q. 日本最大規模の洋上風力発電が本格稼働した北九州市は、どのような未来を描くのか?
北九州市若松区響灘で本格稼働した日本最大規模の洋上風力発電所は、市内の約4割の世帯電力をカバーする。北九州市が目指すのは単なる発電拠点ではない。風車の製造、運搬、メンテナンスの全てを一箇所で行うアジアで唯一の「総合拠点」となることだ。強固な地盤とものづくりの蓄積、300トン級の大型構造物に耐える港湾インフラがこの目標を支える。さらに世界最大手であるデンマークの風車メーカー誘致にトップセールスで注力しており、将来的な浮体式洋上風力発電の拠点化も視野に入れ、日本の再生可能エネルギー分野を強力に牽引していく。

Q. 製鉄の歴史的大転換、「グリーン・スチール」は日本の産業をどう変革するのか?
日本製鉄は八幡製鉄所において、約6300億円を投じ「高炉」から「電炉」への転換を進めている。これは120年の歴史を持つ鉄鋼業における最大のチャレンジだ。「高炉」が輸入した石炭と鉄鉱石を燃やして鉄を生産するのに対し、「電炉」は再生可能エネルギーを含む電力で国内の鉄スクラップを溶かし、再び鉄に再生する。この変化は輸入資源依存型から自立型へのパラダイムシフトであり、鉄の「輪廻転生」というべき資源循環を促進する。高品質な鉄をクリーンな電力で生産する「グリーン・スチール」は脱炭素社会の実現に不可欠であり、北九州市が世界をリードするショーケースとなるだろう。
Q. 希少資源の「都市鉱山」化はどのように実現されているのか?
北九州市の「エコタウン」は、25社、総額911億円が投資された国内最大級のリサイクル企業集積地である。ここでは、使用済み製品からレアメタルやレアアースといった希少資源を回収する「都市鉱山」プロジェクトが推進されている。PCやスマートフォンからの貴金属、半導体廃液からのレアアース、車載リチウムイオン電池からの資源回収など、高度な技術を持つ企業が集結。九州域内から集まる様々な廃棄物を再資源化し、地域の資源循環の中核を担う。この先進的なリサイクルシステムは製造業が盛んなインド政府が自国への「システム輸出」を要望するほど世界的に高く評価されており、日本の資源自給に貢献する。

Q. 空の物流やAI活用、新技術の実装における日本の課題と北九州市の挑戦は?
北九州空港では、ヤマト・双日・米ベータテクノロジーズ社と連携し、日本初の「空飛ぶEVトラック(電動航空機)」実証実験が始まった。24時間稼働可能な空港を活かし、ドライバー不足や海上輸送のリスク回避、そしてクリーンエネルギーを用いた新たな物流網の構築を目指す。一方で、EV普及の道のりは平坦ではなく、成功と失敗を繰り返す「三歩進んで二歩下がる」状況が続く。北九州市発のEVバスメーカーが民事再生手続に入る事例もあったように、技術力と同時に経営能力の両輪が不可欠である。さらにAIやロボットのような新技術は試行錯誤による学習と進化が不可欠だが、日本の社会は行政が関わる事業において完璧さを求める「無謬性」が強く、リスクを許容しない傾向がある。北九州市はこの課題に対し、安川電機や九州工業大学などの技術集積と、豊富なインフラ、実証しやすい環境を活かし、「日本で一番フィジカルAIを実装しやすい都市」を目指し、自動運転バスの実証やAIを活用した行政サービスに取り組んでいる。完璧でなくても粘り強く継続し、新しい社会実装モデルを構築する意向を示した。

Q. 北九州市が提唱する「ゴールデンサイクル」と「プロトタイプシティ」、そして「副首都」構想とは何か?
北九州市は、洋上風力発電によるエネルギー創出、電炉転換による鉄の資源循環、エコタウンにおける希少資源のリサイクル、フィジカルAI実装による技術革新、そしてクリーンな航空物流を連携させた「ゴールデンサイクル」の実現を目指す。このサイクルを回すことで、日本のエネルギー・資源・技術・物流を下支えし、経済安全保障の「砦」としての役割を果たす構想である。さらに、この取り組みを通じて日本や世界の課題を解決する雛型となる「プロトタイプシティ北九州」の地位確立を目指している。これは国からの補助金に頼る「トリクルダウン型」ではなく、政令指定都市自らが明確なビジョンを掲げ、人や投資を呼び込む「ボトムアップ型」の地方創生モデルを提唱するものだ。そして北九州市は「副首都」の役割をも見据えている。過去100年で震度4以上の地震が3回という災害リスクの低さや、アジア諸国との地理的・心理的な近さという福岡県の強みを活かし、単なる首都のバックアップ機能に留まらない。有事の際に次の時代の産業を創出し、誘致を柔軟に切り替える準備ができた「攻めの拠点」として、福岡県全体で副首都を目指す意向を明確にしている。