PIVOT TALK FOOTBALL
【イングランド戦レビュー】歴史的勝利を分析。W杯に向けた収穫と課題は?
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2026年4月2日

聖地ウェンブリーでイングランド代表に勝利した日本代表。勝因は何か?W杯に向けた収穫と課題は何か?PIVOT FOOTBALLレギュラーメンバーに議論してもらった。 <ゲスト> 木崎伸也|スポーツライター 1975年、東京都生まれ。2002年夏にオランダへ移住。翌2003年から6年間、ドイツを拠点に...
日本代表イングランド戦勝利は快挙か?専門家が指摘する真の課題
先日行われたサッカー日本代表対イングランド代表戦で、日本は強豪相手に歴史的な勝利を収めた。この「快挙」を前に、サッカー専門家たちはどのような評価を下したのか。レオザ氏、木崎氏、ミムラ氏が今回の試合を多角的に分析した。

この勝利が単なる僥倖なのか、それとも日本代表の真の進化を示すものなのか。本記事では、彼らの議論を基に、日本代表がワールドカップ(W杯)で勝利を掴むために向き合うべき、隠された真の課題を徹底的に掘り下げる。
Q. イングランド戦勝利に対する専門家たちの評価はどのようなものだったか?
多くのサッカーファンが熱狂したイングランド戦の勝利。しかし専門家たちは、快勝という結果とは裏腹に、厳しい評価を下した。レオザ氏は90点、木崎氏は80点、ミムラ氏は70点と、いずれも100点満点とは程遠い採点である。

レオザ氏は「ワールドカップを気にしなければ100点だが、本大会に向けた危ないポイントが継続中だ」と指摘した。また、ミムラ氏は選手たちがW杯優勝を目標に掲げている現状を踏まえ、「まだ70点」と評価する。
過去のドイツ戦やブラジル戦での勝利に比べ、今回のイングランド戦後の選手たちの喜びが半分程度だったことからも、彼らがこの結果に満足せず、すでに次を見据えていることが伺える。この厳しい評価の根底には、勝利の裏に隠された日本代表の課題意識が存在すると専門家たちは述べている。
Q. 勝利の影に潜む、日本代表の根深い課題とは何か?
専門家たちが口を揃えるのは、日本代表が長年抱える課題が解決されていない点だ。
相手に引いて守られた際の攻撃の糸口不足
前線からのプレス時に生じる守備のズレや判断ミス
フィジカルを前面に出した相手との空中戦での弱さ
これらは今回のイングランド戦でも明確に露呈した。特に試合終盤は一方的に押し込まれる「サンドバック状態」であり、ゴール期待値(xG)ではイングランドが0.99に対し、日本は0.58と劣っていた。データが示すのは、もし相手に一流のストライカーがいれば失点していた可能性が高く、W杯のノックアウトステージで同点に追いつかれた場合、延長戦を戦い抜く余力がないかもしれないという懸念である。

後半、イングランドがプレスの強度を上げてくると、日本のビルドアップは機能不全に陥った。マンツーマンでくる相手を崩し切れていないことが課題だ。また、ボールを奪った後、陣形を立て直そうと無理に繋ごうとして、カウンタープレスに引っ掛かる場面も散見された。このような状況では、時には大きくクリアして時間を稼ぎ、守備組織を再構築する賢明な判断が不可欠であると指摘される。
Q. なぜイングランドは本来の力を出せなかったのか?戦術的背景は?
日本にとっての勝利は「快挙」である一方で、イングランドの低調なパフォーマンスも大きな要因であった。
W杯本番を100%とすると、今回のイングランドは「多く見積もっても60%」程度のコンディションであったと分析される。
ハリー・ケインやサカなどの主力選手が欠場し、監督のトゥヘルが実験的な戦術を試したことも響いた。
トップ下2枚のゼロトップ気味の布陣は、選手たちがコンセプトを理解できず、結果的に機能不全に陥り、「名将のスケベ心」が裏目に出たと表現される。
選手たちは不慣れなポジションや戦術を強いられ「これじゃない感」を抱えてプレーしており、個人としてはW杯代表選考に向けてアピールしたい一方で、チーム全体の士気が上がらなかったようだ。また、エースのケインが不在だったことで、攻撃の指針を失い、戦い方の目線が揃わず、チーム全体が中途半端なバルサ的なサッカーを目指してしまい、混乱を招いたと考えられる。
これは、日本の強みとも裏腹の関係にある。森保ジャパンがドイツやブラジルなど欧州・南米の強豪に勝てるのは、相手が戦術的に凝りすぎて自滅する傾向があるためだ。日本は奇をてらわず、堅実な守備ブロックからのカウンターという王道の戦い方を徹底することで、相手のミスを確実に突いていると専門家は分析した。
Q. 試合の鍵を握った日本代表の選手は誰か?その活躍の背景は?
日本代表の中で特に目覚ましい活躍を見せた選手の一人が、MF佐野海舟だ。データ上もボール関与数でチームトップを記録し、その貢献度が証明された。佐野の活躍は本人の能力だけでなく、イングランドの戦術ミスという外的要因にも支えられた側面がある。
イングランドの選手が中央に密集したことで、佐野の周囲にボールと敵が集まり、彼のボール奪取能力が最大限に活かされる状況が生まれていた。監督からは「一人で二人を見ている」と言われるほどの多大なタスクをこなし、攻守に渡る絶大な存在感を示した。
また、攻守に貢献し、得点の起点となった鎌田大地、得点を決めた三笘薫も高評価を得た。特に、MF守田英正不在の中で、ボランチの鎌田が攻撃に変化を加え、守備でも頼もしさを見せたことは大きい。三笘をインサイドに置く森保監督の采配も的中したと言えるだろう。

Q. W杯での致命傷となりかねない、セットプレー守備の課題と改善策は?
W杯本大会で日本の致命傷となりかねないのが、セットプレー守備だ。今回のイングランド戦でもコーナーキックから何度も決定機を許し、マグワイアのような100kg級の相手に対し、マンツーマンではパワーで太刀打ちできないことが露呈した。
アジアカップでの反省から一定の前進は見られたものの、根本的な弱点は解決されていない。現代サッカーのセットプレー守備のセオリーは、役割分担の徹底である。相手をブロックする「マンマーク役」と、ボールを弾き返す「ゾーン役」を明確に分けるべきだ。日本のように一人の選手が両方の役割を担うのは非効率で、フィジカルで負ける原因となる。
本大会では、相手のキーマン(例:ファン・ダイク)やキッカーの特性(内巻きか外巻きか)に応じて、ゾーンの配置やマンマークの担当を柔軟に変える高度な戦術対応が必須となる。これを遂行するには、コーチ陣の緻密な分析と、冨安健洋のような戦術理解度の高い選手の存在が不可欠である。
セットプレー守備の鍵を握る冨安のW杯復帰には明るい兆しが見える。代表チームが特別なケア体制を準備しており、膝ではなく別の箇所が負傷原因だったことから、復帰確率は上がっているという。また、空中戦に強い町田浩樹の復帰も待たれるところだ。
Q. W杯本大会で日本はどのように戦うべきか?対戦相手、特にスウェーデンの分析は?
W杯本大会での最大の懸念は、日本をリスペクトし、弱点を突いてくる「苦手なタイプ」のチームとどう戦うかである。イングランドのように自分たちのサッカーで挑んでくる相手には強いが、引いて守り、ロングボールやセットプレーで攻めてくる相手には脆さを見せる。この課題を克服できるかが鍵となる。
同組のスウェーデンは、グレアム・ポッター監督の下で現実的な戦い方をしてくるため、日本にとって「組みにくい」最悪の相手になる可能性がある。ポッター監督のチームは相手の嫌がることを突くサッカーが特徴であり、不用意にボールを持たされ、高さと強さでねじ伏せられる展開が予想される。
このような状況では、オランダ、スウェーデンに連敗し、グループステージ敗退というシナリオも十分に考えられ、楽観はできない。過去のドイツ戦やブラジル戦のように、強豪相手に互角に戦うだけではW杯は勝ち抜けない。日本の強さの振れ幅は非常に大きく、相手の戦い方次第で結果が大きく変わる危うさを抱えている。
Q. 試合中に柔軟な戦術対応を実現するために何が必要か?
本大会までに改善すべき具体的な課題は2つある。一つは、飲水タイムを戦術修正の場として有効活用することだ。イングランド戦では、交代選手への指示が間に合わず、チーム全体の戦術共有が遅れる失敗があった。
W杯では25分毎に修正のチャンスがある「4クォーター制」と捉え、交代選手の具体的な指示や戦術変更の議論をよりスムーズに行える準備を徹底する必要がある。これは森保監督自身も課題として認識し、取り組むべき点だと語る。
もう一つは、試合中に守備のやり方を変えるなど、より柔軟な戦術対応力を身につけることである。選手間での議論は活発化しており、これはポジティブな兆候である。試合の流れを読み、短い時間で最善の策を見出し、実行できる対応力が求められる。
最後に、イタリア代表がW杯予選で連続敗退している背景には、育成年代でフィジカルを重視しすぎ、テクニックやアイデアを持つ選手が育たなくなった「韓国化」とも言える現象がある。日本の強みである「うまさ」を失わないよう、この教訓を反面教師として学ぶ必要があると専門家は指摘している。