
【スコットランド戦レビュー】勝利でも不安あり
日本代表、スコットランド戦に見えたW杯への課題と収穫
日本代表がスコットランドに1-0で勝利した試合は、多くのメディアで高評価を受けた。しかし、専門家たちはW杯本番に向けた課題が山積しているとの辛口な評価を下した経緯がある。
一体何が問題だったのか。今回は、サッカー解説者のミムラユウスケ氏と木崎伸也氏の議論を基に、この試合から見えてきた日本代表の現状と今後の展望をQ&A形式で深掘りする。

Q. スコットランド戦は1-0の勝利にもかかわらず、専門家評価が低かったのはなぜか?
日本はスコットランド戦に1-0で勝利したが、スタッツ上でシュート数やボール支配率で圧倒しながらも、専門家である木崎伸也氏は60点、ミムラユウスケ氏も69点と厳しい評価を与えた。この辛口評価の背景には、森保監督がW杯での勝ち上がりを目指し掲げる「ターンオーバー」の実現性に対する深い懸念がある。
W杯では厳しい連戦が予想されるため、選手層の厚さ、特に主力組と控え組のレベルが重要となる。しかし、この試合では控え組が中心となった前半のパフォーマンスが低調であり、トップチームと控え組の実力差が大きく露呈した。これにより、ターンオーバーが機能せず、チーム全体が疲弊してW杯本番でタフな戦いを勝ち抜くことが難しくなるのではないかという不安が抱かれたのだ。

また、スコットランドのホームの雰囲気が予想外に淡白だったことも、評価に影響を与えている。厳しいアウェイ環境での試合が、実際のテストとしては不十分であったという点も指摘された。
Q. 前半に浮き彫りになった日本代表の課題は何か?
前半は日本代表にとって不本意な内容に終わった。選手たちは監督から指示されたタスクをこなすことに精一杯であり、その枠をはみ出て局面を打開するようなプレーが見られなかったという。これは、チームの膠着状態を招き、2022年のW杯コスタリカ戦のような試合展開を想起させるものであった。
前線からの守備においても課題が明らかになった。相手にボールを蹴らせて回収するという狙いがうまく機能せず、特に前半の序盤から30分間は、良いショートカウンターにつなげられない場面が目立った。これは、急造メンバーが多く連携不足であったことが大きく影響したと考えられる。
アウェイの厳しい環境への適応という点でも、スコットランド側のファンの盛り上がりに欠ける現状から、十分な試金石とはならなかった。本来期待されるような心理的なプレッシャーは日本代表にかからなかったと言え、真の対応能力は測れなかっただろう。
Q. 新戦力であるFW後藤や佐野浩大はどのような評価を得たのか?
FW後藤は、長身ながらも器用なポストプレーで攻撃を潤滑にする「10番タイプ」の能力を示した。菅原選手をはじめ、多くの味方選手が彼を経由してプレーしやすいと感じたようだ。しかし、空中戦では9回中わずか1回しか勝利できず、本人が指摘するように体を張って起点になるという点で課題が残った。
佐野浩大は本職であるボランチではなく、不慣れな2列目で起用されたため、その持ち味であるドリブルでの突破を十分に発揮できなかった。監督の意図に沿ってチームプレーを試みたものの、立ち止まってボールを受ける場面が多く、本人も消化不良であったと感じただろう。この出来ではW杯メンバー入りの可能性に黄色信号が灯るとの見方が示された。
さらに、三笘選手がシャドーのポジションに移った結果、左ウイングバック(WB)の選手層の薄さが新たな懸念点として浮上した。この試合で左WBとして起用された前田大然選手も、そのスピードやプレス能力は評価されたものの、攻撃面での貢献度は高くなく、ポリバレントな役割が裏目に出た形である。
現在の日本代表には、三笘選手や中村敬斗選手のようにドリブルで局面を打開できるジョーカータイプがこのポジションで不足しており、W杯本番までに解決すべき緊急の課題と言えよう。
Q. ジョーカーとして期待される塩貝選手の評価と、FW陣の最終選考はどうなるか?
後半から出場した塩貝選手は、アシストという結果を残し、守備面でも奮闘した。彼のプレーは、森保監督が選手の能力を最大限に引き出す采配を行ったことによる成功例として評価されている。ベストメンバーに近い状況で投入された塩貝選手は、持ち味を遺憾なく発揮し、W杯メンバー入りの最終選考レースにおいて存在感をアピールしたと言える。

この活躍により、FWの最終選考レースはさらに混沌とした状況になった。後藤選手、小川選手、町野選手、そして塩貝選手がほぼ横一線で並び、それぞれが異なるタイプの特性を持つ。ポストプレーに秀でる後藤、空中戦に強い小川、万能型の町野、そしてカオスを作り出す塩貝。森保監督が、どのようにこれらの選手を選び、起用するのかが注目される。
試合の決勝点については、「カオス」から生まれたとの見方がある。三笘選手と中村敬斗選手のポジションチェンジ、さらには左センターバックの鈴木純之介選手の攻撃参加が相手守備を混乱させ、結果的に堂安選手のゴールに繋がったという分析もある。塩貝選手の活躍のみならず、複合的な要因が勝利を呼び込んだことは、チーム戦術の奥深さを示している。
Q. 森保監督の采配にはどのような光と影があったのか?
森保監督の采配には、光と影の両面があったと専門家たちは分析する。若手選手や経験の浅い選手たちを先発させ、最低でも45分間のプレー時間を与えるというマネジメント手法は、選手のモチベーション向上とチーム全体の納得感の醸成という点で高く評価された。
しかし、戦術面では課題が浮き彫りになった。特に、一点を取りに行くために投入した3-1-4-2という攻撃的なシステムへの変更が、一部の選手、例えば伊東純也選手に明確に伝わっていなかった。その結果、選手間で意識の齟齬が生じ、守備の連携が機能不全に陥った場面が見られた。後半、日本が4本の枠内シュートを放った一方で、相手に6本のシュートを打たれたという事実が、その守備の不安定さを示している。
監督が選手に「自由」と「創造性」を促す姿勢は評価できるものの、特に守備に関しては、選手間で明確な約束事と戦術的な整理が必要であると専門家は指摘する。森保監督には、攻撃の創造性を担保しつつ、守備面での規律と浸透度をどのように両立させるかが求められていると言える。
Q. 前半のボランチコンビから見えた課題とは何か?
スコットランド戦前半の田中碧・藤田譲瑠チマの両ボランチコンビは、真面目にタスクをこなし、及第点のプレーを見せた。しかし、この両選手が組んだときに試合を動かすような「意外性」や「創造性」が不足している点が指摘された。
専門家は、膠着した状況を打破し、リスクを冒して局面を変えられる森田英俊のようなタイプの選手がなぜ招集されていないのかと疑問を呈している。森保監督は、体力と献身性を重視する「強度」志向の選手を好む傾向にあり、ポゼッション志向の森田選手がその基準に合致しない可能性も考えられる。
この試合で明らかになった創造性の欠如は、W杯を勝ち抜く上で深刻な問題となりうる。専門家からは、ボランチの人選を再度検討し、田中・藤田のような献身的な選手と、鎌田大地や森田選手のような個で違いを作り出せる選手とのバランスを取るべきだという意見も出ている。
Q. ケガ人が続出する現状で、W杯における日本代表の現実的な目標とは何か?
遠藤航、冨安健洋、南野拓実といった主力選手の怪我人続出は、W杯に向けたチーム作りに暗い影を落としている。特に冨安選手はハムストリングの負傷が再発しやすいリスクを抱え、W杯本番でのフル稼働が危ぶまれる。南野選手も十字靭帯断裂からの早期復帰を目指しており、出場すれば怪我の再発リスクが伴う強行軍となるだろう。

専門家からは、万全でない選手が多い現状を鑑みれば、「W杯優勝」という目標を「グループステージ突破、ベスト16、あるいはベスト8進出」へと下方修正することも視野に入れるべきだとの見解が出ている。怪我を抱える主力選手は、全ての試合で起用するのではなく、重要な局面で「ピンポイント」に投入する戦略が求められるだろう。
次なるイングランド戦は、ハリー・ケイン対策が最大の焦点となる。最近のケインは下がってきてビルドアップに参加する傾向があり、日本のDF陣がどのように対応し、彼の動きを封じるかが勝負の鍵を握る。また、森保監督が「戦術カタール」と呼ばれるハイプレス戦術を、強豪イングランド相手にどこまで実行できるか、その真価が問われる一戦となる。