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日経平均株価20万円の根拠【石黒英之】
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2026年3月29日

人口減少の日本に、なぜ「日経平均20万円」のシナリオがあり得るのか?野村アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト・石黒英之氏が提唱する「インフレマジック理論」。デフレからインフレへの転換がもたらす名目GDPの成長、東証によるPBR1倍割れ企業への改善要請、そして世界の中で"出遅れている"日本株の...
「日経平均20万円も夢じゃない」日本株とインフレ経済の真実
日経平均が連日のように最高値を更新し、日本経済は長期にわたるデフレを脱却したといわれている。だが「本当に日本経済は強くなるのか」「なぜ日本株に投資すべきなのか」といった疑問を持つ投資家も少なくない。一般的に浸透している「人口減少国では成長がない」という悲観的な見方は、果たして真実なのだろうか。日本の金融市場で今何が起きているのか。その実態を紐解き、日本株の隠されたポテンシャルとインフレ時代に取るべき投資戦略を深掘りする。
本稿では、著名な金融専門家が提示する「日経平均20万円」という驚くべき未来予測の根拠に迫る。日本の株価低迷の原因とされてきた誤解を解消し、アクティブ投資がなぜ有効なのか、そしてインフレ下で現金を持つことがなぜ「100%負ける投資戦略」になるのかを解説する。変化の時代を生き抜くために必要な知識と、あなたの資産を次のステージへと導く示唆がここにある。
Q. 日経平均20万円も視野に、なぜ日本株にこれほど大きな成長の可能性があるのか?
世界的な比較において、日本の企業は長い間「のび太」のような存在と例えられてきた。ROE(自己資本利益率=企業の稼ぐ力)が低く、その結果PBR(株価純資産倍率=市場の評価)も低い、つまり「テストの点数が悪く、先生からの評価も低い」状態が続いてきたからだ。数年前までは「グラフの枠外」と表現されるほど、世界の株式市場で注目される存在ではなかったという。しかし、これは見方を変えれば、少しの改善で市場評価が爆発的に高まる「伸びしろの大きさ」を示している。
日本株の転換点は大きく二つあった。一つは2022年のデフレからのインフレ転換、もう一つは2023年の東京証券取引所による企業改革の要請である。これにより、日本の企業は収益性改善と株主還元を強く意識するようになった。この経済(インフレ)、企業(改革)、政治(安定)の三位一体の好循環が始まり、万年0点だった「のび太」が10点を取り、教室中が驚くような状況が生まれた。つまり、過去の日本株に対する停滞イメージは既に過去のものであり、持続的な上昇トレンドへとシフトしているのだ。実際、直近ではアメリカ株をパフォーマンスで上回る局面も見られ、日本株の評価は歴史的な転換期を迎えている。
Q. 「人口減少は日本経済の成長を阻害しない」と言われるのはなぜか?
多くの人が「人口減少国である日本は成長できない」という固定観念にとらわれているが、これは大きな誤解を生むデータ解釈に過ぎない。経済成長に本当に重要なのは「総人口」ではなく、消費や経済活動を活発化させる「労働人口」だからである。日本は女性の社会進出、高齢者の労働参加、そして外国人労働者の増加により、実は労働人口が過去最高を更新中なのだ。
賃金についても、ここ数年で最低賃金は年間で25%近く上昇している。日本の経済のパイは「労働人口の増加(縦軸)×賃金の上昇(横軸)」によって決まるため、これら両方が拡大傾向にある現状では、日本経済の規模は着実に伸び続けている。例えば、かつてデフレ下で企業は経済成長ゼロでも7%の利益を上げていた。現在、インフレと企業努力、さらに1%程度の経済成長が加わり、日本企業全体で年10%の利益成長が見込める。利益と株価は収斂するという原則に基づけば、この成長率が続けば2040年には日経平均株価が21万6000円に達するという試算も可能となる。
Q. インフレ時代において、日本株ではインデックス投資とアクティブ投資のどちらが有効か?
一般的に分散投資の有効な手段として推奨されるインデックス投資だが、日本株においては慎重な姿勢が必要だ。例えば米国のS&P500は、企業が競争力を失えば指数から除外され、有望な企業が組み入れられることで常に「最強の500社」が保たれるという新陳代謝が機能している。しかし、日本のインデックスは残念ながら新陳代謝が十分に働かず、「良い会社も悪い会社もごちゃ混ぜ」の状態になっている傾向がある。
このため、日本の個別企業を深く分析し、成長が期待できる企業を選別する「アクティブ投資」こそが、高いリターンを狙う上でより有効な戦略となる。アクティブファンドを選ぶ際には、高い手数料を徴収しながらも指数にすら勝てていない「なんちゃってアクティブ」ファンドには注意が必要だ。月次報告書などで運用実績を確認し、指数(TOPIXなど)を上回るリターンを安定して出し、高い信託報酬に見合った成果を上げている本物のアクティブファンドを選ぶべきである。また、自身で個別銘柄を選ぶのが難しい場合は、パフォーマンス上位のアクティブファンドが保有する上位銘柄を参考にすることも有効な戦略の一つといえる。
Q. インフレ下で現金を保有し続けることが「100%負ける投資戦略」といわれるのはなぜか?
デフレ時代には「現金は王様」であったが、インフレ時代には現金の価値は日々目減りしていく。「100円の水の価格が200円になる」と単純化して考えれば、現金100円の購買力は半分になってしまう。これはまさに、現金が価値を「溶かし続けている」状態だ。例えば、年間3%のインフレ率であれば、1000万円の現金は1年間で約30万円、1日あたり約820円もその価値を失っていることになる。
アメリカがこの20年間で個人金融資産を4倍に増やし、2.1京円規模にまで到達したのに対し、日本が伸び悩んだ主な原因は、国民が現金や預金を多く保有し、投資行動を取ってこなかったからだ。デフレ思考から脱却し、インフレから資産を守る、さらには資産を増やすためには、株式などのインフレに強い資産への投資はもはや選択ではなく必須となる。何もしないままでいると、あなたの資産は確実に貧しくなるという厳しい現実を認識する必要があるだろう。
Q. なぜ日本には他国にはない「安すぎる」ゆえの大きな成長余地があるのか?
日本経済の大きな潜在成長力を示すものに、モノやサービスの「価格」がある。例えば、ある地域では回らない寿司屋で、味噌汁付き16貫のランチが1300円で食べられるという。米国で同様のものが提供されれば2万円を下らないだろう。これは日本のサービスや製品、さらには資産までもが国際的に見て「安すぎる」状態にあることを示している。この「安さ」は、今後のインフレの進展とともに値上げされる巨大な余地、すなわち「成長余地」そのものだといえる。価格の正常化は、企業の利益、個人の所得向上、そして国家経済全体の底上げに直結する。この価格差が是正されていくプロセスが、日本の長期的な経済成長の源泉となるだろう。
さらに地方経済にもその恩恵は及んでいる。都心部だけでなく、地方においても最低賃金は上昇し、外国人労働者の受け入れが活性化している。彼らは日本で働く最大の理由として「安心、安全」を挙げ、それが地方の活力となりつつある。長期デフレ時代に生まれた「努力が報われない」「他人の足を引っ張る」という不寛容な社会の側面は、インフレによる資産形成と所得向上によって人々に心の余裕をもたらし、より寛容で幸福度の高い社会へと変化していく可能性を秘めている。投資は個人の資産を守り増やすだけでなく、日本社会全体の質を高める力も持っているのだ。