
為替介入でも円安は止まらない/2026年、1ドル=165円へ/2040年日経平均15万円へ
なぜ円安は止まらないのか?日本経済の深層と今後の展望
歴史的な水準で進行する円安は、私たちの生活だけでなく、日本経済全体の未来に大きな影を落としている。多くの人々がこの状況に不安を感じているものの、その根本的な原因や解決策は複雑だ。
なぜ日本だけが先進国の中で実質金利マイナスという特異な状況に陥っているのか、そしてなぜ国内外からの投資が日本に集まらないのか。
本稿では、複雑に絡み合う円安の構造的な要因と、その影響、そして日本経済がこの危機から脱却するための処方箋を専門家の見解から読み解く。

Q. なぜ日本の円安は歴史的な水準で継続しているのか?
円の総合的な価値を示す実質実効為替レートは、1970年以降で最も低い水準にあり、歴史的な円安状態だ。
これは特定の通貨に対してだけでなく、円自体の価値が全体的に毀損していることを意味する。
物価水準から見た適正レート「購買力平価」では、ドル円の上限が109円程度だが、現在の為替レートはこれを大幅に上回っており、理論上ありえない「超円安」水準に突入していると言える。

この背景には、「実質金利の大幅なマイナス」という特異な状況がある。
先進国では日本だけがインフレ率以下の名目金利という状況であり、円は「持っているだけで価値が目減りする通貨」となっているため、トルコリラが過去に売られた際と同じ構造で、円が売られ続けるのは当然だ。
Q. 為替介入は、歴史的な円安を食い止める決定打となるのか?
政府・日銀による為替介入は、急激な変動を抑えるための「時間稼ぎ」に過ぎないと専門家は分析する。円安トレンドを根本から転換させる効果は限定的だ。
介入が行われる水準も過去の事例から変動し、次の目安は165円程度にまで円安方向にずれ込む可能性がある。
為替介入が日本の株式市場に与える影響は大きく、過去には介入後に日経平均が約10%下落した事例もある。特に円高メリットのある食品株を除けば、市場全体にとって強い売り圧力となるのだ。
一方で、為替介入は「国有財産の売却」とみなされ、消費減税の財源になりうるとの政治的な思惑も指摘されている。
Q. イラン情勢の緊迫化が日本経済のインフレと円安を加速させるのはなぜか?
イラン情勢の悪化は、原油価格を高騰させ、「原油高」と「円安」のダブルパンチとして日本を直撃する危険性がある。
日本の原油輸入価格は既に2008年の過去最高水準を超えており、この状況が続けば年間の原油輸入額が20兆円に倍増し、貿易赤字が拡大する。これはさらなる円安圧力を生む要因となる。
このままではガソリン価格は補助金なしで1リットル220円に達する可能性があり、国民生活への影響は計り知れない。
さらに、ホルムズ海峡の安全保障上のリスクが日本のエネルギー供給に深刻な影響を与えれば、代替エネルギーである液化天然ガス価格の高騰も不可避となる。
Q. なぜ日銀の利上げは円高をもたらさないのか?
市場は日銀の年2回利上げを織り込んでいるものの、それで政策金利が1.25%程度に達したとしても、インフレ率に追いつかず実質金利はマイナスのままとなるため、円高への転換には至らない見通しだ。

イラン情勢によるインフレ圧力の高まりは、FRBやECBなど主要な海外中央銀行の利下げ期待を後退させ、むしろ利上げ方向への転換を促している。
日本だけが利上げを躊躇すれば、海外との金利差が再び拡大し、「周回遅れ」と呼ばれる状況が、2022年の急激な円安を再来させるリスクをはらむ。
また、国際協調によるドル安誘導策「新プラザ合意」については、米国の国内事情(米国債金利急騰のリスク)や中国との協調の困難さから、現実的な選択肢ではないという見方が有力である。
Q. 利上げ困難な財政事情と構造的な人手不足が円安を固定化させているのはなぜか?
日本が「財政の罠」に陥っていることが利上げを困難にしている最大の理由だ。金利がわずかに上昇するだけでも、国債の利払い費が大幅に増大し、現在の消費税収に匹敵する25兆円もの財政負担となる予測が示されている。
過去の日銀の量的緩和政策の副作用として、利上げ時には民間銀行の当座預金への金利支払いが増加し、国庫への利息還流の効果を相殺してしまう状況が深刻だ。
構造的な人手不足もインフレをさらに押し上げる要因となっている。企業は人材確保のため賃上げを強いられ、そのコストが製品・サービス価格に転嫁されることで、物価上昇の悪循環が生まれる。
賃上げ競争に敗れる企業の淘汰が進み、生き残った企業の価格決定力が増すことで、インフレが常態化し円安が止まりにくい構造を形成しているのだ。
Q. 円安とインフレの時代に日経平均は「15万円」に達する可能性は現実的か?
円安とインフレが継続する中で、名目GDPが膨張し、それに連動して日経平均株価が2037年頃には15万円に達する可能性があるとの試算がある。
これはトルコやアルゼンチンといった国々でも見られた現象であり、通貨価値の下落に伴う「名目的な株高」であることを理解しておく必要がある。

通貨価値が下落することで、企業利益や資産価値が名目上膨らむ一方で、国民の実質的な豊かさとは乖離した「悪い株高」となる可能性が高い。
生活実感の伴わない株価上昇への注意が促されている。
Q. この構造的な円安から日本経済が脱却するための処方箋とは何か?
日本経済が構造的な円安から脱却するためには、いくつかの処方箋がある。
食料、医薬品、エネルギーなど重要分野での国内生産比率を高め、貿易赤字を縮小させることが不可欠だ。
電気機器の生産移管やデジタル赤字の拡大など、日本から外貨が流出しやすい構造も変革が必要となる。
最大の問題は、日本から海外への巨額な「対外直接投資」が続く一方で、海外からの「対内直接投資」が北朝鮮やネパールよりも低い世界最低水準という投資フローの偏りだ。これにより、稼いだ外貨が国内に還流せず、円高要因が失われている。
円安からの脱却には、国内の規制緩和や労働市場改革を通じて、国内外の企業が日本に投資したくなる環境を整えることが不可欠である。
高市氏が提唱する戦略的な国内投資促進策や既得権益との対決の姿勢が、日本経済の命運を握る「最後の砦」となりうる。マーケットは政策の実効性を先読みするため、その具体的な成果が円安是正の鍵となるだろう。
