ビジネス虎の巻
AI時代のリーダーシップ論【一條和生×細田高広】
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2026年3月16日

AI時代にリーダーとして生き残る条件は?「or」を「and」にする思考法とは?AI時代のリーダーシップ論をテーマにIMDビジネススクール教授の一條和生氏とTBWA\HAKUHODO CCOの細田高広氏に聞いた。 <ゲスト> 一條和生|IMDビジネススクール教授 - 一橋大学大学院社会学研究科教授 ...
これからの時代に求められる「リーダーシップ」とは?自分だけの「問い」から生まれる「自分らしい生き方」
AIが答えを出す時代において、私たちの人間的な価値はどこにあるだろうか。情報が溢れ、正解が求められる社会の中で、今、最も必要なのは「問いを立てる力」なのかもしれない。本稿では、スイスでリーダーシップ教育を行う教授の知見から、これからの時代にふさわしいリーダーシップの本質を探る。
それは決して肩肘張るものではなく、自分自身の内なる声に耳を傾け、「自分らしい生き方」を追求するプロセスから生まれるという。では、具体的にどのようにして、自分だけの問いを見つけ、周りを巻き込み、社会に変革をもたらすリーダーシップを育むことができるのか。本稿ではその具体的なヒントをQ&A形式で提示する。

Q. これからのリーダーシップに最も必要な力は何ですか?
AIが急速に進化し、正確な「答え」を瞬時に導き出す現代において、人間にしかできない最も価値ある能力は「問いを作る力」である。
AIは既存の知識を統計的に分析するため、正解が設定されている質問に対しては絶大な力を発揮するが、オープンエンドな質問や、そもそも正解がない「問い」に対しては苦手意識を持つ。
未来の不確実な世界で道を示すリーダーにとって、過去のデータからは導き出せない、新たな価値創造に繋がる問いを立てる能力が、これからの時代に不可欠となるだろう。
Q. 自分だけの「問い」をどのように見つけられますか?
問いは、まず自身の強い「好き嫌い」や「怒り」といった主観的な感情から生まれる。他者の意見や客観的な分析に囚われず、「なぜ自分はこれが好きなのか、あるいは嫌いなのか」と深く掘り下げて考えてみよう。
特定の物事への強い愛情である「偏愛」は、新しいものを生み出す原動力となる。
日常で感じる「もやもや」とした不満や怒りは、放置せずに自分事として捉えれば、現状を変えるための問いにつながる。
自分の人生を振り返り、心が動いた瞬間や感情の起伏があった出来事を掘り起こすことだ。就職活動が「好き嫌いを語る場」であるように、感情を深掘りし、問いに変えることで、独自の視点やオリジナリティが育まれていくだろう。最も厄介なのは、何も感じない「無関心」な状態である。
Q. リーダーシップはキャリアだけでなく「生き方」とどう関係していますか?
リーダーシップとは、特定のマネジメントスキルではなく、突き詰めれば「自分らしい生き方」そのものである。「自分はどう生きたいか、何をすると楽しいか、どのような人生を送りたいか」という根本的な問いから、リーダーシップは育まれるのだ。

自己の欲求を満たす「利己」から始まった問いは、その影響の円を広げ、社会が求めることとの接点を見つけることで、「利他」へとつながる。
この自己と社会の重なる領域こそが、大きな生きがいや働きがいを生み出す場となるだろう。
自身の「やりたいこと」を積極的に発信すれば、共感する人々が集まり、個人の思い(I)が「私たち」(We)というムーブメントへと昇華する。
自身の理想の生き方(老後の過ごし方、必要な資産、休日のアクティビティなど)を具体的に妄想レベルで描き出すことから始めるのが有効な方法だ。この生活側のゴールから逆算することで、長期的な視点で「今やるべきこと」が明確になり、人生の設計図が描かれていく。日本人はキャリアプランに偏りがちだが、欧米では人生全体のプランニングを重視する傾向がある。
Q. なぜイノベーションには「間違える勇気」が重要なのでしょうか?
イノベーションは「違い」を生み出すことである。しかし、「違い」とは往々にして、過去の常識から見れば「間違い」として認識されるものだ。
「間違えるな」と要求しながら、「イノベーションを起こせ」と求めることは本質的に矛盾している。新しいことに挑戦すれば、必ず失敗や間違いはつきものとなる。

リーダーは、新しい一歩を踏み出したことによる間違いを恐れてはならない。むしろ、挑戦的な失敗を許容し、それを未来へ繋がるステップとして称賛する文化を組織に醸成する役割を担うべきだ。
Q. AI時代に人間が持つべき「思考法」とは何ですか?
現代に求められるのは、二者択一で「どっちか」を選ぶ「OR思考」ではなく、相反する事柄を「どっちも」実現する方法を探る「AND思考」である。例えば、AIは答えのある問いには強いが、人間が取り組むべきは「日本はどうなるか」「我が社はどうなるか」といった正解のないオープンエンドな問いである。
「人間かAIか」という対立構造ではなく、「人間とAI」が協力する未来を志向すべきだ。
予測不能な時代において、当初の計画が破綻しても対応できるよう、常に複数のオプションを持ち、選択肢を一つに絞り込まない柔軟性が不可欠となる。
AIが高度な計算や情報処理を担うことで、人間は「解決策が不確実で合意形成が困難」といった、より高度で複雑な課題に集中できるようになる。
AIの発展は人間の思考力を低下させるのではなく、むしろ人間ならではの思考や創造性、挑戦の重要性をますます高めることになるだろう。
Q. 現代のリーダーに求められる「共感力」とはどのようなものですか?
これからのリーダーシップは、同調圧力的な「協調性」ではなく、相手の考えや感情を深く理解し、寄り添う「共感」が基盤となる。
かつては強さや権威がリーダーの証とされたが、今は逆である。自分の弱みや失敗談を率直に開示することで、人間的な魅力が増し、周囲は「自分と同じだ」と感じて共感し、信頼が生まれるのだ。

完璧なリーダー像を演じる必要はない。自身の人間的な部分を見せることで、より多くの共感を得られる。
リーダーシップは、単なる地位や権力による支配ではなく、共感を通じて人を巻き込み、ともに目標に向かう力に変化している。
他者に「あなただからついていきたい」と思わせる力が重要となるだろう。
Q. 大人になってからリーダーシップは獲得できますか?
もちろん可能である。リーダーシップは特別な才能ではなく、誰しもが持つ可能性である。重要なのは、「何をしていると生き生きとするか」を見つけ、それを追求することだ。年齢を重ねて魅力が失われるのは、好きなことをせず、生き生きとした輝きが失われた状態であるからかもしれない。
リーダーシップは「肩肘張るもの」と考える必要はない。
大きな目標を立てるのではなく、家族、職場、サークルなど身近な場所で「小さな勝利(スモールウィンズ)」を積み重ね、それを継続・拡大していくことが最も効果的だ。
自身が心から楽しみ、そしてその楽しさで周囲の人々も笑顔にできることを見つけることだ。そのようなリラックスした、自然体の姿勢こそが、無理なく人を惹きつけ、持続可能なリーダーシップへとつながるだろう。