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完全解説イラン情勢①なぜ始まった
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2026年3月11日

混迷を極めるイラン情勢の背景を、過去の重要解説から再構成した総集編。第一回目のテーマはなぜ戦闘は始まったのか。杉田弘毅氏、ジョセフクラフト氏、佐藤丙午氏が多角的な視点から対立の火種を浮き彫りにする。 <ゲスト> 杉田弘毅|明治大学特任教授 一橋大学卒業後、 共同通信社に入社。テヘラン支局長、ニュー...
今からでも間に合う!イラン情勢完全解説:なぜ始まったのか?
複雑な様相を呈するイラン情勢について、PIVOTでは様々な専門家を招き、これまで多岐にわたる動画を配信してきた。このシリーズでは、それらのコンテンツをテーマごとにダイジェストとして再構成し、イラン情勢の全体像を網羅的に理解できるような内容を目指す。
初回は、「なぜこの戦闘は始まったのか」という根本的な問いに焦点を当てる。米国、イスラエル、そしてイラン、それぞれの国家が抱える動機と戦略を深く掘り下げていくことで、多層的な対立の根源を明らかにする。複雑に絡み合った背景を紐解き、国際情勢の理解を深める一助とする。

Q. このイランを巡る紛争は、一体なぜ始まったのか?
イランを巡る紛争の勃発は、単なる安全保障上の判断だけから生じたものではない。米国、イスラエル、そしてイランのそれぞれが独自の思惑と目的を持っており、これらが複雑に絡み合い、最終的に軍事衝突という形となって表面化した。特に、トランプ大統領の国内政治的動機、イランの大国意識と核兵器への執着、そしてイスラエルの戦略的な体制転換への願望が、この紛争の主要な推進力であった。多極的な利害が衝突した結果が、現在の厳しい情勢をもたらしている。

Q. 米国トランプ政権がイラン攻撃に踏み切った主な動機は何だったのか?
トランプ大統領にとってイランへの軍事行動は、純粋な安全保障の枠をはるかに超えた、政治的な判断であったと指摘されている。専門家の分析では、その動機の実に9割が中間選挙に向けた国内政治的な思惑で占められていたとされる。イランに対して執拗に圧力をかけ続けても譲歩が見られなかったため、昨年秋頃から攻撃は「決めうち」されていた可能性が高い。攻撃するからにはトップを狙う「斬首作戦」を実行し、その後の展開は様子見という、トランプ氏特有の無責任なアプローチが背景にあったと考えられている。
Q. トランプ政権はイラン攻撃を、どのような国内問題の隠蔽に利用しようとしたのか?
イランへの軍事行動は、米国内で差し迫っていた複数の不都合なニュースから国民の目をそらす意図が明確にあった。当時、著名な人脈を巻き込んだ性犯罪疑惑「エプスタイン問題」では、ヒラリー・クリントン元大統領への議会召喚が進められており、事態の推移によってはトランプ氏自身への言及も避けられない状況であった。
また、国内移民局(ICE)による取り締まりの過剰な強制執行によって米国市民が射殺されるという痛ましい事件も発生しており、これが政権の足かせとなっていた。イラン情勢という、より大きな国外ニュースを投じることで、これらの国内スキャンダルや政策上の問題を覆い隠し、世論の関心を国外に転嫁する強い意図が働いていたと見られる。
さらに、トランプ大統領には7月4日の米国建国250周年記念日までに、外交上の具体的な「功績」を積極的にアピールする必要があった。イランだけでなく、ベネズエラなど他国での実績を、国民の愛国心が高まるこの記念すべきタイミングで強く印象付けることで、同年11月の中間選挙へ勢い良く突入したいという、強い時間的な焦りも動機の一つであったと推測される。
Q. イランが核開発に固執する真の理由は一体何なのか?
イランが国際社会からの制裁を受けながらも核開発を継続する背景には、複数の根深い理由が存在する。一つは、かつて広大なペルシャ帝国を築いた歴史を持つが故の「大国意識」である。最先端技術の粋である原子力を保有することは、イラン国家が世界における威信を保ち、その科学技術力を誇示し、発展していく上での原動力になると深く信じられている。これは1979年の革命以前から根強く存在する国民的感情と深く結びついている考え方である。
もう一つの、より現実的で戦略的な理由は、国家防衛のための「抑止力」である。隣国パキスタンや、常に敵対関係にあるイスラエルが既に核兵器を保有している状況下で、イランが独立自存の道を歩むには、核兵器による抑止力は不可欠だと戦略家たちは判断している。経済的発展と国家安全保障という二つの主要な側面から、核兵器の保持が自国の生存戦略において重要な位置を占めているのである。
Q. イスラエルがイラン情勢において最終的に目指していることは何か?
イスラエルは、イランにおける現在のイスラム教シーア派聖職者による指導体制や革命防衛隊の存在を根本的に容認できない立場にある。彼らが最終的に目指すのは、1979年の革命以前の親イスラエル的な、そして世俗的な体制への回帰、すなわち「レジームチェンジ(体制転換)」である。この究極的な目標達成のため、イスラエルは米国、特に当時のトランプ政権を巧みに動かし、連携した軍事行動に至ったと見られる。現在のイラン体制の転換こそが、イスラエルにとって最も望ましいシナリオであり、この不安定な地域における自国の安全保障を確立するための不可欠な手段と考えている。
Q. 米国とイスラエルによる初期軍事作戦は、イランに対しどのような戦略で設計されたのか?
米国とイスラエルが共同で行った初期の軍事作戦は、短期的には「大成功」と評価されている。しかし、その作戦は従来の地上戦とは一線を画す設計思想に基づいていた。イランは日本よりもはるかに広大な国土を持つため、現在の米軍規模で地上部隊を派遣し、全土を占領することは兵力的にもロジスティクスの観点からも非現実的である。

このため、作戦は地上軍の派遣を最初から避け、長距離からの精密打撃に焦点を当てた。まず航空優勢を確実に確保し、その後はスマートウェポン(精密誘導兵器)だけでなく、比較的安価なグラビティボム(非誘導爆弾)なども効果的に駆使して、軍事目標を継続的に攻撃する方針であった。国土の占領を直接の目的とはせず、イランの軍事能力に決定的な打撃を与え続け、その体制を内部から揺るがし、変化を促すことが真の狙いであったと考えられる。これは、限られた資源と制約の中で最大の戦略的効果を狙う、洗練されたアプローチと言える。