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ビットコイン暴落
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2026年3月10日

過去半年間、大幅に下落しているビットコイン価格。 イラン情勢との関係は?BTCはデジタルゴールドになり得るのか? その背景や今後の行方を楽天ウォレット シニアアナリストの松田康生氏に話を聞いた。 ▼収録日 2026年3月9日 16:00 <ゲスト> 松田康生|楽天ウォレット シニアアナリスト ...
ビットコイン暴落の真実:ETF、需給、デジタルゴールドの誤解、そして未来
過去半年間、ビットコイン価格は大幅に下落した。その背景には何があり、今後の行方はどうなるのだろうか。本稿では、市場の基本的な需給メカニズムから最近の価格暴落の複合的な要因、さらには「デジタルゴールド」としてのビットコインの役割、そして未来の普及期までを専門家の見解を交えながら解説する。
激動する暗号資産市場の核心に迫り、投資家が今後の動向を理解するための重要な視点を提供する。

Q. ビットコインの価格はどのように決まるのか?
ビットコインの価格は、その生産コストではなく、買い手と売り手のバランス、すなわち需給のみで決定する。市場において価格は、買い手と売り手の数が一致するように上下して調節する機能を持つ。
これはビットコインに限らず、あらゆる市場資産に共通する経済原則である。ビットコインの供給量はプログラムにより約4年ごとに半減(半減期)する仕組みを持つ。これが過去、「3年上昇し1年下落する」という特徴的な4年サイクルを生み出してきた根本要因だ。
Q. ビットコインの最近の暴落にはどのような要因があったのか?
今回の価格暴落の直接的な引き金は、2024年1月の米国でのビットコインETF(上場投資信託)承認後、一時約10兆円も流入した資金が、一転して流出に転じたことである。

約1兆円の資金が売りに回ったことで需給バランスが崩れ、価格が急落した。さらに流出額以上の価格下落が見られたのは、ETF登場以前からの大口投資家が、この流出に乗じて利益確定のための売りを浴びせた影響が大きいと見られる。
この動きに拍車をかけた要因として、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ停止、AI関連企業の巨額投資に対する回収懸念、そしてイラン情勢の緊迫化といった複数のマクロ経済的・地政学的な悪材料も挙げられる。特にFRB内で金融引き締めに積極的な要人が起用されたことも市場の重しとなった。
Q. イラン攻撃後なぜビットコイン価格は反発したのか?
ビットコインは過去の価格推移において、FTX破綻やハッシュウォー、取引所ハッキングなど、「もうダメだ」「これで終わりだ」と市場全体が絶望するような予想外の最悪の事態が発生した際に底を打ってきた。
今回のイランによるイスラエルへの大規模攻撃を、一部の「鼻の利く」投資家は、まさにその歴史的パターンにおける「最悪の事態」、すなわち絶好の買い場であり底打ちのサインと捉え、資金を投入した可能性がある。これが一時的な反発に繋がったと考えられる。
しかし、悲観論者からは依然として警戒の声が上がっている。過去のサイクルでは価格ピークから80%以上の下落があったのに対し、今回の下落幅はまだ50%程度に過ぎない。また、イラン情勢が「来るぞ来るぞ」と事前に織り込みやすかった外部要因であったため、AIバブル崩壊のような市場「内部のブラック・スワン(予測不可能な事象)」がまだ来ていない可能性を指摘し、真の底値はこれから訪れるとの見方もある。
Q. ビットコインは本当に「デジタルゴールド」と呼べるのだろうか?
「デジタルゴールド」という言葉は、ビットコイン市場が自主的に作り出した用語である。2020年以降のコロナ禍における大規模金融緩和と財政出動は、やがて来るインフレへの懸念を引き起こした。その中で法定通貨の価値毀損に対するヘッジとして、金(ゴールド)と共にビットコインが注目され、この呼称が広まったのがその起源である。

金とビットコインは、特定の国の信用に依存しない「無国籍資産」という点で共通している。しかし、両者の投資家の目的には決定的な違いがある。金の投資家は主に、既に十分な資産を持つ富裕層であり、保有資産の価値を「守る」ことを重視する。対照的に、ビットコインの投資家はこれから大きな資産を築きたい層が多く、ハイリターンを求めて積極的に「攻める」傾向が強い。
この投資家層の違いから、両資産の値動きは市場の状況によって異なる。平常時にはインフレヘッジとして連動する時期もあるが、戦争や金融危機などのリスクオフ局面では、高リスク資産であるビットコインが真っ先に売却され、安全資産である金に資金が逃避するため、両者は逆相関の関係となるのが典型的である。
Q. レイ・ダリオが指摘する基軸通貨の転換期にビットコインはどのような意味を持つのか?
著名ヘッジファンド創業者のレイ・ダリオが提唱する「ビッグサイクル論」では、現在の世界が、基軸通貨であるドルの覇権が揺らぐ「第6段階」という歴史的転換点にあると示唆する。この時期は通常、既存の秩序が崩れ、新たな経済・政治的構造が生まれる不安定な局面だ。ビットコインが資産の逃避先として注目される一因には、こうしたサイクル論との関連付けがある。
現代の主流経済学は、1929年の世界恐慌の反省から、「不況時には国が借金して財政出動する(ケインズ経済学)」ことや、「デフレ時には中央銀行がお金を大量に発行する量的緩和を行う(バーナンキ)」ことを是としてきた。しかし、これが現代の民主主義、特にポピュリズムと結びつくことで、国民に支持されやすい「財政ファイナンス(中央銀行が国債を買い取り政府の財政赤字を補填する)」から逃れられない構造を生み出した。
この結果、世界中で安易な貨幣発行が行われ、法定通貨の価値が構造的に毀損される状況が常態化している。レイ・ダリオが指摘するような基軸通貨の転換期には、国家の信用に左右される法定通貨の限界が露呈し、国籍を持たない資産への関心が高まるのである。
Q. ビットコインは将来的に世界の基軸通貨になり得るか?
現在のビットコインの技術的特性を考慮すると、世界中で使われる基軸通貨となる可能性は低い。例えば、その取引処理速度は毎秒7取引程度と極めて限定的であり、金融決済を広くカバーするには不十分だからだ。

歴史的に見て、基軸通貨の地位は特定の「覇権国家」と結びついてきたが、ビットコインには特定の国家が背後に存在しない。しかし、法定通貨への信頼が低下する中で、ビットコインのような「無国籍資産」は、基軸通貨のような支配的な役割ではなく、国家や中央銀行の影響を受けない「価値の保存手段」や「普遍的な尺度」としての需要を確立する可能性は大いにある。新たな金融システムの「アンカー(錨)」となる潜在性を秘めていると言える。
Q. 2026年にビットコイン市場でどのような変化が起こると期待されるのか?
2026年はビットコインが本格的な「普及期」に突入する年になると予測される。大きな要因の一つは、米国のステーブルコイン関連法案(ジーニアス法など)の整備である。これにより銀行などがドル建てステーブルコインを法的に発行可能となり、暗号資産市場全体の信頼性が向上し、伝統的な金融機関の参入障壁が大きく低下する見込みだ。
この普及を加速させる最大の鍵は、商品の取り扱い主体が変化することにある。モルガン・スタンレーやバンク・オブ・アメリカといった信頼性の高い伝統的な金融機関が、自社の富裕層顧客に対し、ポートフォリオの一部(0〜4%程度)としてビットコインの保有を推奨し、販売を開始している。欧州でも大手銀行が同様の動きを見せており、これが今後一般投資家への普及を促すと期待されている。
ETFを通じた資金流入も、短期的な投機ではなく、法定通貨の価値下落に対する長期的なヘッジや資産配分の一環として続く見通しだ。特に、米国における大手機関投資家のビットコインETF保有率が30%を超えるなど、イノベーション普及における「クリティカルマス(臨界点)」に達しつつある兆候が見られ、市場は本格的な普及期へと移行しつつある。