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アレルギーや花粉症はなぜ増え続けるのか?
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2026年3月12日

年々増える花粉症患者や大人のアレルギー。なぜアレルギー患者は増え続けるのか?近年増えている注意すべきアレルギーとは?アレルギー専門医の矢上晶子氏に聞いた。 <ゲスト> 矢上晶子|皮膚科医 藤田医科大学 ばんたね病院 総合アレルギーセンター センター長、先端アレルギー免疫共同研究講座 教授。専門分野...
【きれいすぎは良くない?】なぜアレルギーや花粉症は増え続けているのか
現代社会において、国民の半数近くがなんらかのアレルギー症状に悩んでいる。食物アレルギーから花粉症まで、その種類や症状は多様化し増加の一途を辿っている。最新の研究では、これまで常識とされたアレルギーの概念が大きく覆り、我々の日常生活の中に潜む知られざる原因と、未来に向けた新たな対策のヒントが提示された。アレルギー専門医が語る最前線の知識は、現代人がアレルギーと正しく向き合い、健やかな生活を送る上で不可欠となるだろう。

Q. なぜ現代社会ではアレルギー患者が増加しているのか?
アレルギー患者の増加には「衛生仮説」が深く関与している。人類の免疫は病原体や寄生虫との接触を通じてそのバランスを調整してきた。しかし、現代の極端に清潔な環境下では、免疫系が外部刺激に触れる機会が減少し、アレルゲンへの過剰反応が起こりやすくなる。

実際に、兄弟の多い家庭では子どもが多様な細菌に触れる機会が増えるため、アレルギー発症率が低いという調査結果がある。無菌状態を追求するより、適度な微生物への暴露が免疫システムの健全な発達を促すと考えられている。過度に清潔な住環境は、子どものアレルギーリスクを高める可能性があると言える。
Q. 花粉症が国民病と化している背景にある要因とは何か?
花粉症の爆発的な増加は、衛生仮説のみでは説明できない日本特有の複合的な要因が重なった結果である。戦後の大量植林により、スギ花粉の発生源が劇的に増加した。さらに、地球温暖化は花粉の生成量を増やし、アスファルト舗装の普及は地面に落ちた花粉の再飛散を促進した。
これに排気ガスなどの化学物質が結合することで、花粉のアレルゲン性が強化されることも指摘されている。花粉症は国民の生産性を低下させ、子どもの学習能力にも影響を与える深刻な社会問題だ。国も「花粉ゼロ」政策を進めるが、抜本的な改善には時間を要するため、個人での対策が当面重要となる。
Q. 食物アレルギーに関する「新常識」とはどのようなものか?
かつて食物アレルギーは、発症する原因食物を完全に避ける「除去食」が基本とされた。しかし、最新の知見はこれまでの常識を覆している。近年、アレルゲンに「食べて慣らす」免疫寛容の概念が注目されている。
イスラエルとイギリスの比較研究では、幼少期からピーナッツを食べる習慣のあるイスラエルの方が、アレルギー発症率が顕著に低いことが示された。また、日本でもクルミが卵・牛乳・小麦に次ぐアレルゲン第2位に急浮上している。アレルギーの早期発見と専門医の指導のもとでの少量摂取は、将来のアレルギー予防に繋がる新たな常識となりつつある。特定のナッツに対するアレルギーが、別の種類のナッツでも反応を引き起こす「交差反応」の存在も認識が必須だ。
Q. 美容目的の化粧品がアレルギーの原因となりうるのはなぜか?
アレルギーは口からだけでなく、皮膚からも侵入することが判明した。代表的な事例として、特定の小麦成分を含む石鹸を使用した女性たちが、後から小麦アレルギーを発症したケースが挙げられる。肌のバリア機能が低下した状態でアレルゲンに繰り返し触れると、抗体が作られ、後に口から摂取した際にアレルギー反応が起きる。

特に注意したいのが、多くのピンク系化粧品に含まれる色素「カルミン」(コチニール色素)だ。この成分は虫由来で、毎日の使用で皮膚から感作されると、同じ色素を含む食品(例:マカロン、ハム)で重篤なアレルギー反応を引き起こす恐れがある。安価な海外コスメの普及により、近年は10代の若年層にも広がるこの問題は、自覚なき危険性をはらむ。
Q. 動物アレルギーを抱えながらもペットと共生するにはどうすればよいか?
動物アレルギーを心配する人にとって、ペット選びは重要なテーマだ。一般的に、アレルギーを発症しにくいのは「犬」であると言われる。猫のアレルゲン(Fel d 1)は非常に微細で空気中に長時間漂うため、犬よりもリスクが高い。もし猫を飼う場合は、アレルゲン産生量が少ない「メス猫」の方が推奨される。

しかし、最も重要な対策はペットの性別や種類に関わらず、徹底した環境管理である。特に、寝室へのペットの立ち入りを厳禁とすることは、アレルゲンへの暴露量を大幅に削減し、発症リスクを低減する。空気清浄機の活用やこまめな清掃も有効だ。医師の視点では、ペットとの暮らしは人生を豊かにするものであるため、過度な心配から諦めるのではなく、正しい知識を持って共生を模索することを勧めている。
Q. アレルギー対策における最新の知見と治療の未来はどうか?
アレルギー対策は、「発症予防」と「発症後の適切な治療」の二本柱で進む。予防において最も肝要なのは、乳幼児期のスキンケアである。湿疹を放置せず、皮膚のバリア機能を健全に保つことで、アレルゲンが皮膚から侵入する「経皮感作」を防ぐことが可能となる。また、食物アレルギーの場合も完全な除去ではなく、医師の管理のもと、少量のアレルゲンを経口摂取し、免疫寛容を誘導する治療が主流となった。花粉症に対する舌下免疫療法も同様の原理に基づく、時間をかけた根治治療だ。
アレルギー研究は日進月歩であり、特にアトピー性皮膚炎においては近年、画期的な新薬が登場し治療風景を一変させた。アレルギーに悩む人々にとって、未来は明るい。