PIVOT TALK HEALTH
【1分で出来る】男性更年期のチェックリスト
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2026年2月26日

テストステロンの減少で起きる、男性の更年期障害。自分も男性更年期かも?と感じた時に出来るチェックリストや、男性ホルモンを整える生活習慣について、泌尿器科医の久末伸一氏に聞いた。 <ゲスト> 久末伸一|泌尿器科医 恵佑会札幌病院 泌尿器科部長。日本泌尿器科学会指導医・専門医。泌尿器ロボット支援手術プ...
20代・30代にも忍び寄る「男性更年期」:すぐ出来るチェックリストを紹介
最近、どうも気力がわかない、疲れやすい、イライラする…そんな症状に心当たりはないか。「男性更年期」と聞くと、まだ先の話だと思いがちだが、実は若い世代でも決して他人事ではない現実がある。ある調査によると、20代、30代でも軽度なものを含めると約3割が男性更年期の兆候を抱えているという。心身の不調だけでなく、生活の質や人間関係にも影響を及ぼす男性更年期のメカニズム、そして今日から実践できる効果的な予防策、さらには万が一の際の医療的アプローチについて解説する。

Q. 男性更年期は若い世代にも影響するのか?
男性更年期(LOH症候群)と呼ばれる状態は、テストステロンの低下が原因で心身に不調を来す症状の総称だ。多くは40代以降に顕著となるが、近年の調査ではその若年化が指摘されている。20代で約13%、30代で約11%が軽度以上の男性更年期に該当するというデータもあり、これらを合わせると3割近くの若者が潜在的な予備軍であることが明らかになった。これはゲームの普及により外遊びが減るなど、現代の生活様式の変化がテストステロン値に影響を与えている可能性も考えられる。
Q. 男性更年期には具体的にどのような症状が現れるのか?
男性更年期の症状は大きく3つの柱で現れる。

1つ目は精神的な「心の問題」で、うつ状態、気力の低下、イライラ、不安などが挙げられる。2つ目は「体の問題」で、メタボリック症候群の悪化、糖尿病の進行、ほてり、発汗、不眠、疲労感などが典型的だ。そして3つ目は「性の問題」で、性欲の減退、勃起機能の低下、朝立ちの減少など性機能全般に影響を及ぼす。これらの症状は単独でなく、複合的に絡み合いながら生活の質を著しく低下させる可能性がある。
Q. テストステロン値を高める効果的な生活習慣とは?
テストステロンの維持・向上には、日常生活での意識的な行動が重要となる。まず、「笑う」機会を増やすことは非常に有効だ。ある研究では、コメディ映画を15分鑑賞するだけで唾液中のテストステロン値が大幅に上昇したという報告もある。これは費用がかからず、誰でも気軽に始められる最も簡単な方法だろう。

実は「適度な飲酒」も、ビール1杯、ワイン1杯程度であればテストステロン値を上げる効果を期待できるが、飲み過ぎは逆効果で、数値が急降下する危険性がある。二日酔いはテストステロンに致命的な影響を与えるため、深酒は厳禁である。「運動習慣」も欠かせない。特に筋トレはテストステロン分泌を促す上で効果的だ。一方で、長時間のランニングなどの有酸素運動は注意が必要である。運動中は一時的にテストステロンが上昇するものの、運動後に急激に低下し枯渇状態を招く可能性がある。有酸素運動は30分以内に留めるのが賢明である。質の良い睡眠も必須であり、レム睡眠(夢を見る浅い眠り)がテストステロン生成には重要であるため、夕方以降のカフェイン摂取は控えたい。
Q. 徹夜がテストステロン値に与える深刻な影響とは?
生活習慣の中で、特に避けるべき行動が「徹夜」である。マウスを使った実験では、2日間徹夜の状態を続けた場合、テストステロン値はほぼゼロにまで減少したという。さらに驚くべきは、その後4日間、いくら快適なベッドで寝かせてもテストステロン値は全く回復しなかったことだ。これは30代以降の人にとって極めて危険であり、若いうちと同じ感覚で無理な徹夜を繰り返すと、一度落ちたテストステロンが回復しにくい状態に陥り、重度の男性更年期へと引き金を引く可能性がある。睡眠不足はうつ病や最悪の場合、自死のリスクにも繋がり得るため、質の高い睡眠の確保は健康維持の基本中の基本である。
Q. 負の連鎖「更年期スパイラル」からの脱出、その治療法は?
ストレスや不眠、テストステロンの低下が複合的に作用し、「夜眠れない→テストステロン低下→気力低下→運動不足で体重増加→さらに気分が落ち込む」といった悪循環に陥るのが「更年期スパイラル」である。この状態は一度陥ると自力で抜け出すことが非常に困難になる。これはMC自身の経験にも現れており、新卒時代の激務とストレスで体重が12~13kg増加し、不眠や無気力状態に陥った際、筋トレを通じてテストステロンが回復し、精神的な安定と前向きさを取り戻したと語る。
しかし、誰もが自力で回復できるわけではない。スパイラルから自力で脱出できない重症患者の場合、テストステロンを直接体内に補充する「注射治療」が有効な手段として存在する。これは泌尿器科などの専門医のもとで2~3週間に1回行われるもので、飲み薬が存在しないテストステロン補充の主な治療法である。この治療は、落ち込んだ活力を強制的に引き上げ、自力での生活改善へと繋げるきっかけとなり得る。
Q. うつ病と男性更年期の関係は?日本の治療は世界から遅れているのか?
男性更年期とうつ病は、症状が酷似しており明確な線引きはできないほど密接に関連している。うつ病の患者数自体は女性が男性の約2倍だが、うつ病が原因で自死に至る割合は男性が女性の2倍と高い点が特徴だ。
特に、テストステロンが低下し始める50代から60代で男性の自死率がピークを迎える傾向にあるため、テストステロンの維持はうつ病、さらには自死予防においても極めて重要であると考えられている。専門家は、心療内科による精神的なケアと、泌尿器科によるテストステロン補充治療が連携する「がっぷり四つ」のアプローチが最も理想的だとしている。
しかし、残念ながら日本は男性更年期治療において「後進国」だ。海外では皮膚から吸収させるクリーム剤など簡便な治療法が一般的だが、日本では保険適用される治療法が2~3週間に一度の「注射」に限定されている。これは性に関する問題をタブー視する国民性や、国の制度的サポートの不足が背景にある可能性も指摘されている。治療選択肢の少なさが、悩む人々を孤立させ、症状を悪化させる一因となっている側面もある。
Q. 男性更年期にどう向き合い、どう予防すればよいか?
男性更年期は誰にでも訪れる加齢の自然なプロセスであり、過度に恐れる必要はない。しかし、適切に対処しないと、生活の質を大きく損なう可能性もはらんでいる。予防には食生活も重要であり、テストステロン向上に役立つ「アリシン」と「亜鉛」の積極的な摂取が推奨される。ニンニクやニラに多く含まれるアリシン、牡蠣やレバーに豊富な亜鉛を意識して食事に取り入れたい。サプリメントで補うのも良い選択肢となる。

更年期には「明確な終わり」はないとされているが、治療の目標は「自らの意思で筋トレに行く」など、自発的で前向きな活動を再開できるようになることだ。そこまで回復すれば外部からの治療を終えることも可能だが、再発の可能性もあるため、改善された生活習慣を継続することが不可欠となる。
更年期対策は、単なる目の前の不調を改善するだけでなく、将来のフレイル(虚弱)を予防し、健康寿命を延ばすための長期的な自己投資だと捉えるべきだ。若いうちからの予防と、異変を感じた際の早期対応が、健康で豊かな人生を送るための鍵となる。