PIVOT TALK POLITICS
平和ボケの終焉と、高市ジャパンの生存戦略
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2026年2月11日

高市首相の大勝を当初から予測していたシンガポール大学公共政策大学院兼任教授の田村耕太郎氏。今回の大勝は何を意味するのか?高市政権が最優先すべきことは何か?トランプ大統領とどう交渉すべきか?高市ジャパンの生存戦略について聞いた。 <ゲスト> 田村耕太郎|シンガポール国立大学 リー・クアンユー公共政策...
高市政権の大勝が示す日本の転換点:国民が選んだ「歴史の常態」への回帰
高市政権の歴史的勝利は、単なる政権交代を超え、現代日本が迎えている重大な転換点を示す出来事であった。シンガポール大学の田村耕太郎氏はこの大勝の背景に、世界情勢の変化に対する国民の本能的な危機感と外交リテラシーの向上があったと分析する。日本の「平和ボケ」が終わろうとしているこの時期、新たなリーダーが果たすべき歴史的役割とは一体何か。

本稿では、高市政権がなぜこれほどの支持を得たのか、そして政権が目指す「戦後レジームからの脱却」とは具体的に何を意味するのかを深掘りする。さらに、変わりゆく世界情勢、特にモンロー主義化する米国との関係性や、自主防衛国家としての経済戦略についても解説する。
Q. 高市政権はなぜこれほどまでに大勝したのだろうか?その背景にある国民意識の変化とは何か?
高市政権の大勝は、国民の外交リテラシー向上と、国際情勢に対する本能的な危機感が要因である。周辺に位置する三つの核保有国、そして専制的な隣国に囲まれる日本の地政学的現実を、国民が肌で感じ取るようになったのだ。これは「もうバラバラでイライラしている場合ではない」「強いリーダーのもと結束すべきだ」といった声が国民の中から上がっていたことからも明らかだろう。
戦後80年間続いた「話せばわかる」「国際法が守ってくれる」といった平和な時代は、世界史から見ればむしろ特異な期間だったと田村氏は指摘する。これはある種「お花畑で夢を見ていた」状況であり、世界は本来「力による現状変更」が当たり前の時代に戻ったのだ。その現実に対し、多くの日本国民が目を覚まし、強いリーダーの登場を求めたのがこの選挙だった。

また、アメリカが「世界の警察官」としての役割を放棄し、自国の利益を最優先する姿勢を明確にしたことも大きい。現在のアメリカは「反撃してこない資源国」に武力行使する傾向があり、日本は資源国ではないが「殴り返してこないATM」として標的になるリスクがある。こうした変化に対し、国民が危機感を募らせ、国防強化を訴えるリーダーを求めたのは当然の流れだと言えよう。
Q. 高市総理大臣の政治家としての特性や思想の変遷は、今後の政権運営にどう影響するのだろうか?
高市氏は、「積極財政の右翼」という一般的なイメージとは異なり、非常にしたたかなリアリストであると田村氏は分析する。彼女の政治思想は、かつてサッチャーに倣った「小さな政府」から、安倍元首相の影響を受けて保守路線へ、そして近年は「積極財政」へと変遷している。これはイデオロギーに固執せず、時代や仕えるリーダーのニーズに合わせて柔軟に変化できる「百戦錬磨」の政治家としての素顔を示している。
彼女は、安倍元首相の第一次政権の失敗から多くの教訓を学んだ。「国政選挙では連戦連勝し続けることが重要だ」「本当にやりたいことは最後に持ってくる」という長期政権運営の極意を継承していると考えられる。したがって、圧勝したとはいえ、性急に「数の論理」を振りかざすような幼稚な政治を行うことはないだろう。まずは参議院選挙での勝利を確実にし、安定した政権基盤を確立することに注力するはずだ。
過去に衆参両院で3分の2の議席を確保しながらも、強行採決を連発した結果、支持率が急落した経験が自民党内には存在する。高市氏は、この「伝家の宝刀」を安易に使えば、かえって政権を不安定にしかねないことを熟知している。ゆえに、目指すところは参議院でも安定多数を確保し、スムーズな法案通過を可能にすること。これにより、維新など他党との連立関係も、当面は温存する形で運用していく戦略が見えてくる。
Q. 「戦後レジームからの脱却」という目標は、具体的にどのような政策で実現されるのだろうか?特に外交・防衛面では何が焦点となるか?
日本の自主防衛を真に確立するためには、米国製AI兵器への盲目的な依存から脱却することが不可欠だ。例えば米国のAI兵器であるパランティアのようなシステムは、日本の防衛情報を全て吸い上げ、アメリカ側の都合で機能を停止させることが可能である。これは日本の防衛に関する生殺与奪の権をアメリカに握られることを意味し、極めて危険な状況だと言えよう。
代わりに、インドのように自国の主権下で管理できる「ソブリンAI」の開発にこそ集中投資すべきだ。米国製の武器を導入する際にも、自国で制御可能な指揮系統を確保することが重要になる。また、独自のGPS衛星網の構築や、米国に依存しない独自のインテリジェンス(諜報)機関の創設も必須の課題である。これらはそれぞれ数兆円規模、20年もの歳月を要する国家事業となるが、長期安定政権だからこそ着手しうる。
日本には隠れた「交渉カード」がある。一つは「潜在的核保有国」としての能力だ。日本は原子力技術と核兵器への転用が可能なプルトニウムを大量に保有しており、半年から1年で核兵器化し、さらに1年で弾道ミサイルに搭載できると国際的には認識されている。この事実は、米中双方への強力な抑止力として機能する。
もう一つは、BtoB(企業間取引)領域における日本の卓越した技術力だ。中国の最先端製品のコア部品や素材、マザーマシンなどは、未だ日本が提供するものが多くを占めている。これらは設計図を盗んでも模倣不可能な「暗黙知の集合体」であり、常に進化を続けている。中国が最も恐れるのは、こうした基幹技術のサプライチェーンを日本が握っていることである。地味だが極めて強力な、日本の安全保障を支える屋台骨と言えよう。
高市政権は、これらの強みを背景に、安倍元首相が掲げた「戦後レジームからの脱却」と「普通の国」への転換を本格的に推進する歴史的使命を担っている。緊迫する国際情勢は、この国家的プロジェクトの追い風となる可能性が高い。
Q. 安全保障の強化が日本の経済にもたらす影響は?その際、どのような問題が懸念されるだろうか?
高市政権は、安全保障の強化を経済成長のエンジンと捉えている。「防衛テック」は、かつての建設業に代わる「令和の公共事業」だと言えるだろう。防衛費増額に伴い、防衛産業だけでなく、食料安全保障と位置付けられたハイテク農業などにも長期的に国費が投入されることで、新たな経済圏が創出される見込みだ。
例えば、アメリカから国防費をGDP比5%にするよう要求された場合、これは日本の社会保障費に匹敵する規模となり、消費税20%超という非現実的な財源が必要となる。そこで発想されるのが、介護や農業などの予算の一部を「防衛関連費」と再定義し、食料自給率向上を「国防」と位置付けて、農業生産の株式会社化やハイテク化を進めるような政策だ。

しかし、大規模な国費投入が伴う公共事業には、利権や癒着の問題がつきまとう。アメリカの防衛産業における巨大な癒着構造を見ればわかる通り、これは避けて通れない問題だ。ウクライナ戦争という現実の紛争下でさえ汚職が発覚するほどであり、安定政権下ではさらにタガが外れやすい。メディアや国民がその金の流れを厳しく監視する役割を果たすことが極めて重要となる。
Q. モンロー主義へと回帰しつつあるアメリカと、日本はどのように「良い関係」を築くべきなのだろうか?
今後のアメリカは、政党の区別なくモンロー主義、すなわち「自国第一主義」へと回帰していく可能性が高いと田村氏は見ている。中間選挙後の情勢を鑑みれば、次期大統領は誰であれ、強化された大統領権限を手放さず、より知性的で思想的な「トランプ主義者」となるかもしれない。このような米国に対し、日本は賢明な対米交渉戦略を練る必要がある。
そのカギとなるのは、「自立」をちらつかせることだ。単に武器を買い増すだけでなく、「自分たちのことは自分たちで守るため、独自のGPSやAI兵器、そして指揮系統を持たせてほしい」と交渉すべきである。日本の防衛能力の自立は、長期的には米国の負担軽減に繋がり、「日本を放っておけない」と思わせる効果も期待できる。
真の自主防衛体制の確立は、米国のGPSに依存せずミサイルを運用できる独自の衛星コンステレーションの構築や、スパイ養成を含むインテリジェンス機関の整備など、長期間にわたる国家的な投資が必要だ。これには膨大な時間と資金がかかるが、高市政権のような長期安定政権だからこそ、この「大変な作業」に着手できると言える。
高市政権は、歴史の転換点に「なるべくしてなった」政権だと言えるだろう。日本が迎えるこの歴史的なミッションを完遂するためには、強力なリーダーシップはもちろんのこと、国民の意識改革と、不断の監視が必要となるだろう。国の行方を決める重要な時期に、我々はどのように政治と向き合っていくべきか、問いが投げかけられている。