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【速報解説】SaaSの株価、なぜ急落?
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2026年2月8日

「SaaSの死」が囁かれて、SaaS株が急落している。「SaaSの死」は起きるのか?AI時代に生き残るSaaSと淘汰されるSaaSの違いは何か?米国在住ベンチャーキャピタリストの福山太郎氏に解説してもらった。 <ゲスト> Rice Capital 代表パートナー 福山太郎 <目次> 00:00 ...
「SaaSの死」が示唆するAI時代の変革:激動期を生き抜くSaaSと日本の勝機
近年、「SaaSの死」という過激な言葉が業界を駆け巡っている。これは単なる比喩ではなく、AIがもたらすビジネス環境の激変を象徴するものだ。ライスキャピタル代表パートナーの福山太郎氏は、自身でSaaSを起業・売却後、ベンチャーキャピタリストとして日米170社以上に投資、7社のユニコーン企業を輩出した経験を持つ。

起業家と投資家、両視点からSaaS市場の深部に精通する同氏に、AIが引き起こす地殻変動と、この激動期を生き抜くSaaS、そして日本企業の新たな勝機について聞いた。
Q. なぜ今、「SaaSの死」が囁かれているのか?
「SaaSの死」という言葉は、主に米国シリコンバレーで巻き起こった議論がきっかけである。去年のMicrosoft CEOサティア・ナデラ氏が「SaaSに終わりは近い」と示唆し、著名ポッドキャストで「SaaS is dead」という言葉が使われたこと。また直近では、Anthropicの新しい機能が既存SaaSの代替を容易にする脅威となり、既存SaaSの成長率鈍化とAIスタートアップの急成長が顕著になっている。この二つの側面が、「SaaSの死」というキャッチーな言葉が飛び交う背景にあるのだ。
Q. 「SaaSの死」の本当の意味は何であるか?
この言葉がSaaSが一切なくなることを意味するわけではない。顧客目線で見れば、ゼロからシステムを内製し、セキュリティやサポートまで自社で行うのは非常に難易度が高いからだ。しかし、AIという強力なツールが登場したことで、投資家がSaaSに抱いていた期待値、すなわち成長率に対する注目が大きく変化した。SaaSの成長率が鈍化する一方、AIネイティブなスタートアップへの注目が急速に高まり、投資マネーもそちらへ集中している。つまり「SaaSの死」とは、市場や投資家の注目がSaaSからAIへと移行する「注目の死」と解釈するのが適切であろう。
Q. AI時代に淘汰されるSaaSと生き残るSaaSは何が違うか?
AIの登場で開発コストが劇的に下がり、ユーザーの主体が人間からAIエージェントへと変わりつつある。この変化の波によって、SaaSは二極化が進む。まず、レポート作成やワークフロー管理といった表層的なSaaSは、AIによる自動化で容易に代替されるため淘汰の危機に瀕している。一方で、顧客データや人事データなど、企業の基盤をなす重要なデータを管理する「System of Record」と呼ばれる領域は生き残りやすい。エラーが許されず、高度なセキュリティと手厚いサポートが求められるこの分野は、内製化の難易度が高く、既存SaaSの強みが活きるからだ。

しかし、System of Recordも完全に安泰というわけではない。市場が成熟し、ほとんどの成長企業が主要なSaaSを導入済みであることに加え、企業のIT予算がAIネイティブなサービスへと優先的に配分され始めている。SalesforceのようなSystem of Record系の代表格ですら、株価が一時的に下落する状況は、成長率維持の難しさを示唆しているのだ。
Q. 既存のSaaSプレイヤーはAI時代をどのように生き抜くべきか?
既存SaaSプレイヤーが直面する課題は、「イノベーションのジレンマ」と「ビジネスモデル転換」という二つの大きな壁である。既存ビジネスが売上の大半を占める中、新しいAI領域へリソースを大きく転換することは容易ではない。さらに喫緊の課題が、課金モデルの変革である。これまでのSaaSは1ユーザーあたりの月額課金、いわゆるライセンス課金が主流であった。しかしAIエージェントが人間の代わりにサービスを利用するようになると、ユーザー数が減っても業務効率は上がるという現象が生じる。顧客の従業員が増えることで利益を享受してきたライセンス課金モデルは、この新しい時代には適応しづらいだろう。
これからは成果報酬型やアウトカム(結果)に基づく課金モデルが主流となる可能性が高い。つまり「どんなアクションに対し、いくら」といった課金体系へのシフトである。既存プレイヤーがこのようなモデルに急激に転換し、かつての成長率を維持することは極めて困難な挑戦となろう。
Q. 日本市場のSaaSは、米国と比較してどのような特殊性を持つのか?
米国でのSaaSからAIへのトレンドシフトは、経験則上1~2年のタイムラグで日本にも到来するだろう。しかし、必ずしも海外のAIサービスが日本市場を席巻するわけではないと考える。日本市場、特に大企業をターゲットとしたSaaSビジネスでは、依然として手厚い営業活動や導入・運用における人によるサポート、いわゆる「ハイタッチ」モデルの重要性が高い。開発者向けツールやSlack、Zoomのようにオンラインで完結する「プロダクトレッドグロース」型SaaSではグローバルプレイヤーが優位に立つ一方で、日本特有の商習慣や丁寧な顧客対応が求められる分野は、海外勢が攻め込みにくい領域である。
営業やサポートに人が介在し、5年10年の長期的な顧客関係を構築するようなプロダクトは、日本のSaaSプレイヤーが強みを発揮できる領域であり、グローバル展開を狙う上でも重要な視点となるだろう。
Q. 労働力不足が深刻化する日本でSaaSやAIはどのような役割を果たすか?
日本の少子高齢化に伴う深刻な労働力不足は、AIエージェントを基点としたSaaSにとって最大のチャンスと捉えられる。これまでのSaaSがExcelの代替としての「効率化ツール」であったならば、AIエージェントはまさに「労働力の代替」である。特に日本では、ホワイトカラーの業務効率化は進んだ一方、人手不足が深刻化するブルーカラー領域こそがAIの恩恵を大きく受けられる分野となるだろう。
例えば、福山氏が社外取締役を務めるSmartHRのような基幹システムは、今後も比較的影響を受けにくい。また、同じくナレッジワークのように、AIに全リソースを投入し、AIエージェント関連ツールを先行して開発する企業は、変化を乗りこなし、成長し続けることが期待される。労働力不足という社会課題に対し、AIを活用して解決策を提供するSaaS企業こそ、日本で急成長するテーマである。
Q. VCはAIネイティブな事業のどのような分野に注目しているか?
ベンチャーキャピタリストとして現在最も注目しているのは、労働力の代替を担うAIエージェントの分野だ。特に採用が困難な人材が求められる領域に、AIエージェントがイノベーションを起こすサービスには大きな将来性を見出す。

例えば、投資先の「Zen Intelligence」は、建設会社の現場監督採用難に対し、アルバイトがデバイスを持って歩くだけでAIが現場監督の役割を果たし、分析・指示を行うサービスを提供する。これにより、大手建設会社が人材不足を解消し、同時に業務効率化を実現している。今後、AIとロボティクス技術の融合が進めば、ホワイトカラーに続き、ブルーワーカーの生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めている。