2026超予測
半導体 下半期3大リスク
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2026年2月6日

今年には151兆円規模への成長が見込まれる半導体市場。しかしその背後ではさまざまな問題も噴出している。日本を取り巻く今年の三大半導体リスクとは?グロスバーグの大山聡氏に聞いた。 <収録日> 2026年1月30日 <ゲスト> 大山聡|グロスバーグ代表 慶應大院修了後、1985年東京エレクトロン入社...
AIが変革する半導体市場:DRAM高騰、中国の台頭、地政学リスクを読み解く2026年への展望
グローバルな半導体市場は今、AIブームという追い風を受ける一方で、DRAM価格の異常な高騰、中国の戦略的台頭、そして米中対立に端を発する地政学リスクといった複雑な課題に直面している。

これら多岐にわたる変動要因は市場の先行きの不透明さを増しており、企業戦略にも大きな影響を与えかねない。本稿では、こうした市場の構造的変化と未来の展望をグロスバーグの大山聡氏に聞き、2026年に向けた半導体業界の「今」と「これから」を読み解いていく。
Q. AIブームがDRAM価格の異常な高騰を引き起こした真の理由は何だろうか?
DRAM価格高騰の核心にはAIの台頭が存在する。

本来、AI向けのプロセッサGPUに結合する高速DRAM(HBM: High Bandwidth Memory)は汎用DRAMとは別製品だが、その供給能力には限界があった。
昨年後半から、NVIDIAはDRAMメーカーに対し、汎用DRAMをAIサーバー向けパッケージングで活用する提案を出している。
この提案に米Micronが乗り出し、通常のパソコンやスマートフォン向けのDRAMをデータセンター向けのAI用途で高値販売する戦略が始まったのだ。
結果として、スマートフォンなどに使われる中身が同一のDRAMが高く売れるAI市場へと大量に吸収され、汎用DRAM市場全体の供給が急激に不足。価格を異常なレベルまで押し上げている。
Q. DRAM価格高騰は、PCやスマートフォン市場にどのような影響を与えているか?
DRAMの価格高騰は、最終製品価格に転嫁しにくいPCやスマートフォンメーカーに深刻な影響を及ぼす。
なぜなら、PCやスマートフォンはすでに価格競争が激しく、DRAMの値上がり分を消費者に転嫁すれば販売台数に悪影響が出ると考えられているからである。
そのため、メーカー各社は製品のメモリ搭載容量を減らすか、他の部品のグレードを下げることでコストを吸収しようとしているのが実情だ。
例えば、スマートフォンのイメージセンサーなど、DRAMとは直接関係のない高機能部品のスペックが引き下げられるケースも確認されており、サプライチェーン全体に広範な悪影響が及んでいる。
さらに、DRAMの品薄への懸念から、企業が必要量以上の「仮需(投機的な需要)」を発注する動きが加速しており、市場の価格競争と品薄感をさらに増幅させる悪循環を生み出している点も問題である。
Q. 現在のDRAM需給の過熱は、いつまで続く見込みがあるか?
DRAMメーカー大手からは、「今年の生産分は全て完売し、2027年分の受注も既に入っている」との強気な発言が聞かれ、市場全体ではDRAM不足が2026年まで継続するという見方が主流だ。
世界のDRAM市場は、韓国の2社と米Micronの計3社で95%以上のシェアを占める寡占状態であることも、この見方を補強する要素となっている。
しかし、一部専門家は現在の「加熱ぶりは異常」だと指摘する。
過剰な注文は「実需」ではなく、競り負けを避けるための「仮需」であり、これが市場を水増ししている側面が強い。
DRAMメーカー各社も旺盛な需要に対応すべく設備投資を加速しており、供給能力は今後増加すると見込まれる。
そのため、こうした投機的な需要の剥落と増産効果により、筆者としては「2024年後半には需給の潮目が変わる可能性がある」という慎重な見方をしているが、これは現在、少数派の意見である。
Q. 中国の積極的なパワー半導体への投資は、今後市場にどのような影響を及ぼす可能性があるか?
中国政府はEV(電気自動車)産業の戦略的推進のため、キーデバイスとなるパワー半導体への巨額の補助金政策を投下している。

この動きは、かつてリチウムイオン電池(CATL)や太陽光パネル(中国勢の世界市場席巻)で実績を上げた国家戦略と同様であり、市場の「オセロゲーム」の引き金を引く可能性がある。
中国ではすでに半導体製造装置への投資が世界的シェアの4割を超える一方、中国製半導体の生産額は1割未満に留まるという異常な状況だ。
補助金によって、本来ならば存続が難しい企業も乱立しており、既に一部のパワー半導体製品で価格下落の兆候が見られる。
中国EV最大手のBYDが現在購入している日米欧のパワー半導体を国産品に切り替えるなど、一度「国産品への信頼」が確立されれば、市場は一気に中国製へとシフトし、既存のメーカーが中国市場から駆逐されるリスクが高い。
日本のパワー半導体メーカー各社(三菱電機、富士電機、ロームなど)は、安価な中国製との価格競争を回避し、付加価値の高いモジュール製品の開発や協調戦略を模索する必要があるだろう。
Q. Nexperia問題とは一体何か? 米中対立は半導体サプライチェーンにどのようなリスクをもたらしているか?
Nexperia問題は、米中対立が半導体サプライチェーンにもたらす深刻な地政学リスクを如実に示している事例である。

元オランダ企業のNexperiaは中国資本傘下に入った後、その親会社が米国の輸出規制リスト(エンティティリスト)に追加されたため、Nexperiaも米国の制裁対象となった。
これに対し、中国は報復措置としてNexperiaの中国工場で生産される製品の輸出停止を示唆した。
Nexperiaは、あらゆる電子機器に不可欠な汎用部品である「小信号トランジスタ」で世界シェア20%を誇るトップメーカーであり、その売上の3分の2が自動車向けであるため、その供給が滞ればホンダ、日産、フォルクスワーゲンといった世界の自動車メーカーの生産に壊滅的な影響を与えかねない状況だった。
結局、この問題は世界経済への甚大な影響を懸念し、米国が制裁を1年延期、中国も報復措置を1年見送るという一時的な「休戦」に留まっている。
つまり、根本的な解決はされておらず、2026年9月に再び同様の問題が再燃する可能性が高く、半導体業界にとって時限爆弾のようなリスクとして認識されている。
Q. 2026年に予測される半導体市場151兆円規模の成長は、現実的と言えるのだろうか?
世界半導体統計(WSTS)は、2026年の半導体市場が151兆円規模(26%成長)に達すると予測しており、アナリストの間でも意見が分かれる状況だ。
AIブームの恩恵を受けるという強気派の見方では、この予測をさらに上回る成長を期待する声が多い。
しかし、現在のDRAM市場に内在する「仮需」の過熱や、その後の調整局面に警戒感を抱く慎重派の専門家は、公式予測よりも成長率が鈍化する可能性を指摘する。
また、前述の中国におけるパワー半導体の供給過剰やNexperia問題に象徴される米中対立の行方など、マクロ経済や地政学的なリスクが市場予測に影響を及ぼす不確実性は非常に大きい。
したがって、この151兆円という数字がどこまで現実を反映しているかは現時点では断言できない。
各要素が複雑に絡み合う半導体市場において、予測の真偽は今後の需給バランスの変化と、外部要因のリスク顕在化にかかっていると言えるだろう。