PIVOT TALK ECONOMY
資本主義の限界と「脱成長」のシナリオ
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2026年1月25日

世界で様々な社会不安が巻き起こる中、資本主義の持続性が議論になっている。資本主義は社会システムとして限界を迎えているのか?資本主義に変わる「脱成長」社会は現実的なのか?経済学者の江原慶氏に聞いた。 ▼プロフィール 江原慶|経済学者 立命館大学経済学部准教授・東京科学大学特定准教授。大分大学経済学部...
資本主義はなぜ限界なのか?経済学者が説く「脱成長」の行方
経済成長が頭打ちの現代、資本主義の限界が顕在化し、インフレや生活苦が増す一方だ。「脱成長」の提言が注目される中で、私たちは成長なき世界でいかに安定と豊かさを維持すべきか?経済学者・江原慶氏が、その問いへの道筋を提示する。

Q. なぜ資本主義は限界を迎えているのか?
資本主義が前提とする経済成長は、地球規模の環境問題により不可能となった。日本だけでなく先進国全般で成長率が鈍化している。経済危機からの回復で成長を追求するものの、経済膨張自体が新たな危機を招く不安定なシステムであることが明らかになった。
Q. かつての「黄金時代」を支えた経済成長の三つの条件とは何だったのか?
1950~70年代の資本主義「黄金時代」は、三つの特殊条件に支えられた。

ブレトンウッズ体制下の固定相場制による「資本の安定」、強い労働組合による「賃金還元で生活が安定」した「労働者の保障」、そして途上国からの「安価で潤沢な資源」に依存した「環境の優位性」だ。これらは特異な時代背景による再現不可能な前提であったと判明した。
Q. 経済成長の条件を失った現代社会はどのように変化したのか?
1970年代の「ニクソン・ショック」と「オイルショック」により、「資本」と「環境」条件は崩壊した。日本は終身雇用で一時的な成功を収めたが、無理が祟りバブル崩壊を迎えた経緯がある。途上国の成長で安価な資源独占も終わり、20世紀型の成長モデルは現代に適さず終焉したのだ。
Q. 成長追求が続く先に待ち受ける未来とは?
パイが限られた世界で成長を追求すれば、それは他者の富を奪う「略奪による蓄積」となる。富裕層はシステムの崩壊を予期し「逃げ切り」を狙い、金融・不動産バブル頻発、富の偏在化が進む。国債不安からインフレ加速、税収減による増税が庶民の生活を苦しめる負の連鎖を生むだろう。
Q. 「脱成長」はどのような社会を目指す考え方なのか?
「脱成長」はGDP減ではなく、GDP増大そのものを社会目標としない社会を目指す考えだ。企業利益は容認するが、その使途を無限の規模拡大から「環境保全や社会インフラ維持」といった「維持活動」へ転換する。何をやめるべきか、廃棄物処理を含め総合的に判断する「脱成長市場経済」が現実的な移行段階だ。これはマクロ経済の話であり、個々の企業や個人の成長を否定するものではないと強調する。
Q. 脱成長社会でも通貨や財政の安定は可能か?
既存システムは成長を前提とし、脱成長すれば通貨暴落のリスクがある。国債価値も成長による税収での返済期待に依存するためだ。しかし、通貨安定に必要なのは元本返済よりも利払い継続だ。消費税8%増が非現実的な中、「富裕税」が有効な解決策と見込まれる。純資産1億円超の富裕層への課税で、脱成長下でも通貨安定は十分実現可能だ。

Q. 「脱成長」を推し進める世界において、私たち個人はどう生きるべきか?

脱成長は、環境負荷が大きい先進国全体の協調的な取り組みが理想的だ。日本単独での先行は短期的な不利益も生むが、「パイの奪い合い」は長期的には持続不可能である。個人は自身の仕事の社会必要性を問い直し、増税といった変化を受け入れる覚悟が必要だろう。グローバルな奪い合いが戦争に繋がる前に、平和と持続可能性のため「脱成長」の道を歩むべきだ。