「永遠に上がる」時代へ。2026年貴金属市場の動向と投資戦略
2025年、貴金属市場は未曾有の高騰を見せた。シルバーとプラチナは年初から130%も上昇し、ゴールドも70%近く値を上げ、S&P500やビットコインを凌駕するリターンを叩き出したのである。
この勢いは一時的なものなのか、それとも新時代の到来を告げる序章なのか。専門家である貴金属スペシャリストの池水雄一氏は、現在の貴金属市場は「永遠に上がり続ける」という驚くべき見解を示している。
2026年も続く貴金属市場の動向を、その背景から銘柄ごとの予測、さらにはポートフォリオ戦略まで、Q&A形式で深掘りする。

Q. 2025年の貴金属市場はなぜ歴史的な高騰を記録したのか?
2025年の貴金属市場はまさに「貴金属の年」であった。シルバーとプラチナが130%、パラジウムが95%上昇し、ゴールドでさえ約70%と驚異的なパフォーマンスを見せている。
これは同期間の日経平均株価の上昇率30%、S&P500の13~14%を大きく上回り、マイナス成長に陥ったビットコインとも比較にならない好成績である。

この急騰の背景には、ファンダメンタルズに加え「上がっているから買う」という「買いが買いを呼ぶ」モメンタム相場が形成された点が大きい。特に年後半は「持たざるリスク(FOMO:Fear of Missing Out)」を感じたファンドマネージャーや機関投資家からの資金流入が拍車をかけた。
Q. ゴールド価格の上昇を支える構造的要因には何があるか?
ゴールド価格を根底で支える構造的な要因として、最も大きいのは新興国中央銀行による「ドル離れ」の加速だ。
2022年のロシア・ウクライナ侵攻時に米国がロシアのドル資産を凍結した事例は、新興国、特に中国やBRICS諸国など米国と良好でない関係にある国々にとって、米国債やドルを持つことのリスクを浮き彫りにした。
そのため、これらの国々は過去4~5年にわたり米国債を売却し、代わりにゴールドを大量に購入し続けている。その買い付け量は年間1000トンを超え、世界の金鉱山生産量(年間約3700トン)の3割近くを中央銀行が吸い上げている状況だ。
この強力な構造的需要が続いている限り、ゴールド価格は容易には下落しない。
また、2025年のゴールド上昇は前半と後半で主体が異なった。年前半は中国の個人投資家が、年後半は欧米の機関投資家が「持たざるリスク」から買いを進めたという。
Q. 日本の個人投資家が金市場に与える影響とは何か?
日本も世界市場における重要なプレーヤーとなっている。インフレと深刻な円安という「ダブルパンチ」により、実質的な円の価値が目減りしている状況が続き、日本の個人投資家が資産保全の手段としてゴールドの現物買いを急増させているためだ。
あまりに需要が強すぎて、大手地金商では一時期100g以下の小型金地金が品切れになるほどの事態となった。この日本の個人の強烈な買いは世界市場からも注目されている。
海外のエコノミストの中には、自国通貨安と金価格上昇という共通点から、日本円をトルコリラと同列に語り始める向きも出ている。これは日本の経済、特に財政に対する信頼が低下している表れであり、自国通貨リスクをヘッジするためにもゴールドをポートフォリオに組み入れることの重要性が増しているといえる。
Q. 2026年、ゴールド価格はどのように推移し、どのような要因が影響するか?
2026年のゴールド価格は、中立シナリオで5000ドル、強気シナリオでは6000ドル、あるいはそれ以上を目指す展開が予測されている。弱気シナリオでも4000ドル程度と、下値は限定的であり、上昇余地の方が大きいのが特徴だ。

最大の追い風となるのは、米国金融政策の動向、特にトランプ政権が発足した場合に予想される「インフレ下での無理な利下げ」である。もし3%台のインフレが続く中でFRBが政策金利を1%程度まで引き下げれば、実質金利が大幅なマイナスとなり、コントロール不能なインフレを招く可能性がある。
このような状況は金利を生まないゴールドにとって、通貨価値の毀損に対する有効なヘッジ手段として、極めて強い上昇材料となるだろう。
さらに、新たな巨大な買い手として「暗号資産業界」が参入していることも注目される。ステーブルコイン発行大手のテザー社は、米ドルよりも信頼できるとの判断から、準備資産にゴールドを年間100トン規模で購入している。これは多くの中央銀行を上回る購入量であり、今後この動きが拡大すれば、需給をさらに引き締め価格を押し上げる新たな要因となる。
Q. シルバー、プラチナ、パラジウムの2026年の動向と、その特徴はどのようなものか?
2026年のシルバー価格は、強気シナリオで100ドルを目指す可能性がある。その最大の理由は、6年以上続く構造的な「供給不足」だ。
これまでの不足分を補ってきた地上在庫が2025年10月にロンドンでほぼ枯渇し、短期金利が一時300%にまで急騰するほどのパニックが発生。これが価格高騰を加速させた。
シルバーの供給の約7割は、銅や亜鉛などの採掘の「副産物」であるため、シルバー価格が上がっても意図的に増産が難しい構造的な問題も抱えている。一方で、ゴールドとは異なり、その需要の半分が太陽光パネルなどの「工業用」であり、現物需給の逼迫が価格に直結しやすい。
プラチナも2026年には強気シナリオで史上最高値となる3000ドルを目指す可能性がある。プラチナ価格急騰の背景には、中国による「爆買い」と「輸出禁止」がある。世界の年間生産量約170トンのうち、約6割に当たる100トン以上を中国が輸入し、国内市場から一切輸出されないため、世界的な供給不足を加速させている。中国の広州先物取引所へのプラチナとパラジウムの上場も、投機マネー流入を促す要因となっている。
EUがEV(電気自動車)化一辺倒の方針を緩和したことも、自動車触媒として不可欠なプラチナとパラジウムにとっては追い風となっている。
パラジウムは需要の8割をガソリン車に依存しており、EV化の動向に価格が大きく左右される。このため、EV化減速の動きはパラジウムに良い影響を与えるものの、長期的な見通しは不透明さも残る。一方、プラチナはハイブリッド車での採用が進むなど、より安定した需要が見込まれている。
Q. 2026年に向けた貴金属投資のポートフォリオ戦略と、おすすめの銘柄順位は何か?
貴金属のみでポートフォリオを組む場合、その特性に応じて適切な配分を行うことが推奨される。

例えば、資金100に対しては、中核となる安定資産としてゴールドに50%、高いレバレッジ効果と上昇率が期待できるシルバーに20%、同じく有望なプラチナに20%を配分し、不透明要素がやや残るパラジウムには10%とするのが良いだろう。
2026年の上昇率で見たおすすめ銘柄の順位は、
1位がシルバー
2位がゴールド
3位がプラチナ
4位がパラジウム
となる。シルバーは最も高いリターンを期待できるが、ボラティリティが高い点には注意が必要だ。ゴールドは確実性が高く、プラチナも中国の動向次第では大きな伸びが期待できる。
Q. 通貨の価値が希薄化する時代において、貴金属はどのような役割を果たすのか?
超長期的な視点で見ると、現代の消費経済システムにおいて、政府や中央銀行がお金を増やし続けることで、通貨の価値は必然的に希薄化していく(インフレ)宿命にある。この流れは今後も変わらないとされている。
対照的に、地球上に存在する量が限られている金、銀、プラチナといった貴金属は、通貨の価値が相対的に低下する中で、その価値が上がり続ける運命にあるのだ。
もはや貴金属は単なる安全資産としてだけでなく、積極的な資産運用の一つとして、そして現代における通貨価値の毀損から資産を守るための重要なポートフォリオの一部として、その役割の重要性はますます高まっていくものと考える。
