
ヒット総括&予測ランキング2025-2026/経済・社会・人物・エンタメ・フード・テクノロジー/次のトレンドは?
1.5万回視聴
2025年12月28日
気になるテーマのランキングを専門家と共に徹底分析し、世相を読み解く「ランキング超分析」。第16回は「2025-2026ヒット総括&予測」。前編では、2025年のヒットを6カテゴリー別に専門家が紹介する。 <出演> 澤原 昇 『日経トレンディ』編集長 https://x.com/trend19840...
2025年ヒット総括:テクノロジーと人間性が織りなす新時代
2025年は、多様なヒット商品や現象が生まれ、私たちの生活や社会を大きく変革させた一年であった。ビジネス界においてもこれらのトレンドを把握することは不可欠だ。今回は各界の専門家による分析を基に、PIVOT独自の視点で2025年の主要なヒットを総括し、未来の兆しを探る。
多様な商品やサービスから、その背後にある経済・社会・テクノロジーの動き、そして人間の心理にまで焦点を当て、今年の潮流を深く掘り下げていく。この総括を通じて、現代社会の複雑な変化を理解し、今後のビジネス戦略や個人消費に役立つ示唆を得られるだろう。


Q. 2025年のエンタメ業界で最も印象的だったヒットとは何か?
万博公式キャラクター「ミャクミャク」と映画「国宝」が大ヒットを記録した。ミャクミャクは赤と青の鮮やかな配色と特徴的な造形により、多様なキャラクターとのコラボレーションが容易であり、8000社以上の企業とのコラボ商品を生み出した。その「不気味で可愛い」デザインは、単なる可愛さでは物足りない現代の消費者の嗜好に合致し、SNSで話題を拡散させた。「国宝」のヒットは、観客が作品の体験価値を最大限に引き出すため、「予習・復習」を行う新しい消費行動を示唆する。
これらの現象の背景には、「取り残されたくない」というFOMO(Fear Of Missing Out)感情に基づく「界隈消費」がある。人々は特定の物語やコミュニティに参加することで共通の話題を形成し、それがSNSを通じてさらなるムーブメントを生み出すのだ。また、エンタメ業界においては、旧来のしがらみが解消され、STARTO社問題などによって異なる事務所のアーティストが共演するなど、「関係性の消費」が加速し、多様な表現が生まれる「エンタメの底上げ」が進行した。この変化は、タレント間の新たな物語を創造し、ファンに新鮮な魅力を提供している。

Q. 社会情勢が今年のヒットにどう影響したのか?
日本経済は30年間続いたデフレから脱却し、物価上昇と金利が上がる「利上げのある世界」に突入した。インフレと円安が常態化する中、企業はコスト増に対応するため新たな戦略を模索せざるを得ない。来年の焦点は、賃上げが物価高に追いつくかどうかにかかっている。
同時に、AIの急速な進化が「ソフトウェアから重いアセットへ」という価値観の転換を促した。AIによって代替されにくい職人や建設現場の作業員といった「ブルーカラー」の職種が、その希少性と重要性から高く評価されるようになった。特に人手不足が深刻化する中で、これまでの下請け業者が仕事を選べる立場へと逆転し、賃金上昇の傾向が見られる。この変化は、テクノロジー偏重だった社会から、製造業や現場仕事といった「重いアセット」を持つ産業への再投資を促す動きであり、長期的な経済構造の変化を示している。

Q. 飲食業界で特筆すべきヒットは何か?
フード業界では「マーラータン」が圧倒的な人気を博し、カスタマイズ可能な具材選びの体験が、特に女性を中心にヒットした。これは、一人でも気軽に外食を楽しめる場所が少ないという潜在的なニーズに応えたものである。同様に、「おうちドリンクバー」のような希釈飲料は、SNS上でオリジナルのアレンジレシピを共有し合う「アレンジ消費」の文化を生み出し、消費者が自己表現のツールとして活用した。
物価高の影響を逆手に取った「スープ激うま」カップ麺は、具材を削減しその分スープの品質向上に投資するという斬新な戦略で成功した。これは、「具よりもスープと麺の質」を重視する消費者の心理を捉えた結果である。また、韓国文化のファンが辛いものを苦手でも文化に浸りたいという「文化消費」の欲求から、「シンラーメン ザ・トゥンク」のような辛さを抑えた韓国風麺がヒットした。さらに、記録的な猛暑が続く中、企業による熱中症対策が義務化され、「ゼネコンが作った塩ゼリー」が法人需要を捉えて大ヒットしたことも、気候変動が直接的に消費トレンドを形成する現象だと言える。

Q. テクノロジー分野ではどのような進化やトレンドが見られたか?
SNSの普及や台頭による「繋がり疲れ」が顕著になる中で、新しいコミュニケーションアプリ「ジフシー」が台頭した。これは電話とLINEの良い点を融合し、非同期かつスピーディーなやり取りを可能にし、既読スルーのプレッシャーを軽減する。一方で、「癒やし」や「シンプルさ」を求めるトレンドから、ペットロボット「モフリン」がヒットした。モフリンは高性能化とは逆行し、少ない動きと鳴き声で愛嬌を表現するシンプルなデザインが特徴で、ユーザーが抱えて外出できる手軽さも魅力である。
AIボイスレコーダーの進化により、50時間連続録音可能な製品が登場し、AIが「第二の脳」として機能する時代が到来した。これにより、私たちは自分の思考や会話を外部に記録・分析させ、記憶の外部化が可能になる。さらに「常時接続」の概念が拡大しており、スマートグラスなどのウェアラブルデバイスを通じて、生活全体をデータ化・共有する未来が現実味を帯びている。これはメタバースなどの仮想空間だけでなく、物理世界でのデジタルアシスタンスも強化されることを意味する。AIの性能を支える半導体産業では、NVIDIA創業者のジェンスン・フアンが株式市場を牽引するなど、AIが産業全体に与える影響は計り知れない。

Q. 2025年の多様なヒットから、どのような社会の潮流が読み取れるか?
2025年を総括すると、「テクノロジーの深化」と「人間的な物語や体験への回帰」という二つの大きな潮流が鮮明に見えてくる。OpenAIのサム・アルトマンが牽引するAI技術は、産業の効率化とイノベーションを加速させ、社会の基盤そのものを変えつつある。しかしその一方で、人々はAIでは作り出せない独自の「物語」や「つながり」を強く求めたのだ。
万博のミャクミャクに見られるような、ブサカワキャラクターとのコラボによる感情的なつながりや、アレンジ消費を通じた自己表現、あるいは家族や友人との食卓を彩る「おうちドリンクバー」といったヒット商品は、人間ならではの交流や体験への欲求の表れと言える。PIVOT独自のヒットランキングは、1位サム・アルトマン、2位ミャクミャク、3位おうちドリンクバー、4位マーラータン、5位AIの産業応用拡大と決定した。このランキングは、社会の根幹を揺るがすAI技術と、人間らしい体験や共感を求める消費者心理という、一見すると対立するようだが相互に影響し合う2025年の社会構造を鮮やかに映し出している。AIが効率化を進めるほど、私たちはより人間的な価値を再発見し、物語や共有体験の重要性を感じるようになる。来年以降もこの二つの潮流はさらに強まり、私たちの社会と生活を形成していくだろう。

